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新たなる世界
山手線はなにがしかラッピング電車してるイメージ
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嫌がる茶長低無を伴い、わたしたち三人は山手線・総武線の方の黄泉葉原駅の改札を通る。
結構この黄泉の世界への滞在も長かったのに、そもそもこちら側を利用しなかったのも不思議な気がしたがよくよく考えたら本物の東京でも本物の電車でもない訳だから、当たり前といえば当たり前だった。
黄泉の世界だと言われている世界で、道案内のマイナ抜きで動くのは危険だろ…と思っていたからだが、
「確かに黄泉、って名乗ってるし死後の世界ではあるんでしょうけど、それ以上特に危険な面を見せるわけではないので。有り体に言えば連続して存在する異世界の一つって所でしょうね」
今更ながらこの辺の説明をざっくりマイナにしてもらう。
「まああなたの場合はこちら側の街が主目的では無かった訳ですし、地下墳墓さえ荒…調べられれば、良かった、ですもんね?」
「せやな」
現状のわたしにとってはそれ以上のものではない…無かった。
「で、なんでわたしまで…マイナさんが用があるのはキミだけでしょうに」
「その嫌がり方が気になったからつい」
「つい、で連れてくるなよな…」
「あ、来ましたね山手線」
ホームへ滑り込んでくるのは見間違いようのない山手線の車両である。
あ、側面ラッピングのやつじゃん。
BD発売がどうとかのアニメ広告ラッピング車両に乗り込む…
中はガラガラだった。時間帯にもよるだろうが、この黄泉の世界(?)的には昼過ぎくらいのはず…
「あ、良かったです座れますね。」
「ま、まあまだマシか…だから普通に山手線車両はおかしいんだってば…」
マイナと茶長低無がすかさず座る。
「どうした田舎から出てきたばっかみたいなリアクションとって」
わたしが茶長低無を弄ろうとすると、
マイナが笑った。
ヤバい系の笑顔だ。
黙って座ることにした。
「…何に気づいたのかは知らないけど正解よ…」
茶長低無は低い声でそう呟いた。
発車のチャイムが鳴り、扉が閉まる。
電車が動き出す…
加速される。
ガンガン加速される。
「…速くね?」
「そりゃあ最終的には秒速十六キロまで上げるからね…舌噛むわよ」
「え?第なんぼ宇宙速度とかそ…」
そこで舌を噛んだので以降わたしはしばらく発言できなくなった。
線路上を走っていたと思しき時はめちゃくちゃ揺れたが、ふっ…と収まった。あ、今これ飛んでるな。と感じた。
窓の外はとっくの昔に空しか見えてなかったが、段々夜のような暗さが増していく。
だが考えるまでもなくそれは夜ではなく、
「ふひふひはっははー…」
舌を噛んだためモゴモゴしていたが、
「…そうよ宇宙きちゃったかー、よ」
茶長低無がわたしの言を肯定した。
「そちらの方が喋っちゃったらあなた来てくれないと思ったんで口止めしちゃいました。えへへ」
悪魔がその横で天使の顔で笑っていた。
「マイナさんはどこへ向かっているんですか?」
「上野で降りますよ」
「ぅわ~そうですかー…模型屋で偏屈な常連がどうこう言ってたからまさかとは思いましたが…」
「結構色々知ってるんですね。ペイちゃ…ペイルガン教皇猊下にしては親切なこと」
マイナが意味ありげに笑う。
「あ、いえ…その辺の情報は猊下からではなくあの模型屋からですね。…そのひとが作ったディオラマとか飾ってるじゃないですかあの店」
「あ、なるほどです。確かにあのひともあの店のクラブ活動入ってましたね。まーあのひとの作風は寂寥感というか虚無主義寄せ過ぎというか、別の意味で趣味的過ぎますよねー友達いなさそう」
マイナは相変わらず余計な一言が辛辣だな…
舌が多少良くなってきたが、まだ舌足らずな感じもする程度には時間が経った。本物の秋葉原と上野間であれば途中の御徒町を挟もうとも五分掛からない筈だが、何しろ宇宙まで来てるからな…
「まはふははひほ?」
まだ着かないの、と言ったつもりだったがまだまだ思った以上に酷かった。
「…ええ、御徒町にさえ着いてないわ…離発着の度に憂鬱なのよね」
茶長低無は覚悟を決めたように諦観たっぷりに何度も頷きながら返事をした。
「仕方ないですよ…御徒町までは六時間ちょっと掛かりますし」
第三宇宙速度が約時速六万キロで六時間…
「へへ、ほへ月…」
「と言うわけで食堂車にでも行きましょうか。他にすることがあるわけでも無し」
山手線に食堂車…いやまあむしろこれ宇宙船…ならさらに食堂車て…
とはいえ異世界御都合主義ファンタジーに今更ケチを付けてもどうにもならないのでマイナたちについて食堂車へ向かった。
「…いや、食堂車は流石に初耳ですけど…」
茶長低無も驚いていた。驚いていいことやっとるんかい。
何両か移動していたら、急に立派な車両間の扉が出てきた。木製の重々しい扉だ。
扉を開くと中は、山手線とは一線を画した、四人向かい合わせのテーブルが居並ぶ、正にレストランであった。
「お好きな席へどうぞ」
給仕服のウェイトレスがにこやかな笑顔で席へ誘い、わたしたちは手近な席に着いた。
「生の人!」
「飲み会か!キミねぇ!着陸時後悔するぞ!」
そういえばここ宇宙だったわ…
結構この黄泉の世界への滞在も長かったのに、そもそもこちら側を利用しなかったのも不思議な気がしたがよくよく考えたら本物の東京でも本物の電車でもない訳だから、当たり前といえば当たり前だった。
黄泉の世界だと言われている世界で、道案内のマイナ抜きで動くのは危険だろ…と思っていたからだが、
「確かに黄泉、って名乗ってるし死後の世界ではあるんでしょうけど、それ以上特に危険な面を見せるわけではないので。有り体に言えば連続して存在する異世界の一つって所でしょうね」
今更ながらこの辺の説明をざっくりマイナにしてもらう。
「まああなたの場合はこちら側の街が主目的では無かった訳ですし、地下墳墓さえ荒…調べられれば、良かった、ですもんね?」
「せやな」
現状のわたしにとってはそれ以上のものではない…無かった。
「で、なんでわたしまで…マイナさんが用があるのはキミだけでしょうに」
「その嫌がり方が気になったからつい」
「つい、で連れてくるなよな…」
「あ、来ましたね山手線」
ホームへ滑り込んでくるのは見間違いようのない山手線の車両である。
あ、側面ラッピングのやつじゃん。
BD発売がどうとかのアニメ広告ラッピング車両に乗り込む…
中はガラガラだった。時間帯にもよるだろうが、この黄泉の世界(?)的には昼過ぎくらいのはず…
「あ、良かったです座れますね。」
「ま、まあまだマシか…だから普通に山手線車両はおかしいんだってば…」
マイナと茶長低無がすかさず座る。
「どうした田舎から出てきたばっかみたいなリアクションとって」
わたしが茶長低無を弄ろうとすると、
マイナが笑った。
ヤバい系の笑顔だ。
黙って座ることにした。
「…何に気づいたのかは知らないけど正解よ…」
茶長低無は低い声でそう呟いた。
発車のチャイムが鳴り、扉が閉まる。
電車が動き出す…
加速される。
ガンガン加速される。
「…速くね?」
「そりゃあ最終的には秒速十六キロまで上げるからね…舌噛むわよ」
「え?第なんぼ宇宙速度とかそ…」
そこで舌を噛んだので以降わたしはしばらく発言できなくなった。
線路上を走っていたと思しき時はめちゃくちゃ揺れたが、ふっ…と収まった。あ、今これ飛んでるな。と感じた。
窓の外はとっくの昔に空しか見えてなかったが、段々夜のような暗さが増していく。
だが考えるまでもなくそれは夜ではなく、
「ふひふひはっははー…」
舌を噛んだためモゴモゴしていたが、
「…そうよ宇宙きちゃったかー、よ」
茶長低無がわたしの言を肯定した。
「そちらの方が喋っちゃったらあなた来てくれないと思ったんで口止めしちゃいました。えへへ」
悪魔がその横で天使の顔で笑っていた。
「マイナさんはどこへ向かっているんですか?」
「上野で降りますよ」
「ぅわ~そうですかー…模型屋で偏屈な常連がどうこう言ってたからまさかとは思いましたが…」
「結構色々知ってるんですね。ペイちゃ…ペイルガン教皇猊下にしては親切なこと」
マイナが意味ありげに笑う。
「あ、いえ…その辺の情報は猊下からではなくあの模型屋からですね。…そのひとが作ったディオラマとか飾ってるじゃないですかあの店」
「あ、なるほどです。確かにあのひともあの店のクラブ活動入ってましたね。まーあのひとの作風は寂寥感というか虚無主義寄せ過ぎというか、別の意味で趣味的過ぎますよねー友達いなさそう」
マイナは相変わらず余計な一言が辛辣だな…
舌が多少良くなってきたが、まだ舌足らずな感じもする程度には時間が経った。本物の秋葉原と上野間であれば途中の御徒町を挟もうとも五分掛からない筈だが、何しろ宇宙まで来てるからな…
「まはふははひほ?」
まだ着かないの、と言ったつもりだったがまだまだ思った以上に酷かった。
「…ええ、御徒町にさえ着いてないわ…離発着の度に憂鬱なのよね」
茶長低無は覚悟を決めたように諦観たっぷりに何度も頷きながら返事をした。
「仕方ないですよ…御徒町までは六時間ちょっと掛かりますし」
第三宇宙速度が約時速六万キロで六時間…
「へへ、ほへ月…」
「と言うわけで食堂車にでも行きましょうか。他にすることがあるわけでも無し」
山手線に食堂車…いやまあむしろこれ宇宙船…ならさらに食堂車て…
とはいえ異世界御都合主義ファンタジーに今更ケチを付けてもどうにもならないのでマイナたちについて食堂車へ向かった。
「…いや、食堂車は流石に初耳ですけど…」
茶長低無も驚いていた。驚いていいことやっとるんかい。
何両か移動していたら、急に立派な車両間の扉が出てきた。木製の重々しい扉だ。
扉を開くと中は、山手線とは一線を画した、四人向かい合わせのテーブルが居並ぶ、正にレストランであった。
「お好きな席へどうぞ」
給仕服のウェイトレスがにこやかな笑顔で席へ誘い、わたしたちは手近な席に着いた。
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