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第二十ニ話 慄くキャトルズ・バーウィッチ
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「ウッマアアアイ!!いやー久々に食べるお肉はおいしいっす!!」
酒屋のカウンターテーブルでキャトはそう声を上げながら肉汁を垂らす羊肉を頬張っていた。
うまいうまいと何度も言いながら食事をする幸せそうな彼女は横から見てて微笑ましく思えてくる。
これが用事の途中でなければ。
「エーナさんも食べればよかったのに、いいっすよ別に私のおごりでも?
最近ちょっとした臨時収入があったっすからお金なら気にしなくて大丈夫っす!」
「いや、美味しそうなのはわかるんだけどなんというかその……食べる気分になれないというか」
「応接間で待ってろっていう話っすか?
大丈夫っすよ、アルバート先輩の用事はいつも長いんすよ。それに今日はちょうどあそこによる日っすから、どうせ待ちぼうけ食らうだけなんでそんな心配しなくてもいいっすよ」
気にしないっす!と彼女は言うがそうはいってもやはり気になるもの気になってしまう。
それともこれが都会人の時間の考え方なのだろうか……。
「嬢ちゃん、キャトリッジにこれ以上何いっても無駄だよ。こいついくら言っても毎回こうだから」
カウンターの向こうから酒屋の店主がそう声をかけてきた。
「いつも用事の途中や修行の最中に抜け出してはここらの店を訪れてるんだよこいつ。まあ別に俺らは金さえもらえれば文句はないが、毎回こっぴどく叱られてるっていう話じゃねえか」
「叱られてる!?やっぱり怒られてるじゃないキャト!」
「失礼な!?怒られてたのは最初の頃だけっす!!
途中からはちゃんと合間を縫って休憩時間という事で来てるだけでさぼりとかそういうのじゃないっすよ?きちんとした息抜きっす!」
それはちゃんと許可を貰った休憩なのだろうか……。
「とにかく何度も言いますが考えすぎっす!エーナさんもほら、一品くらい何か頼むっすよ。ここのごはんは王都でもかなり美味しいってことで有名なんすよ!……ちなみにごはんを作ってるのはおかみさんの方で店主のおっちゃんじゃないっす」
「余計な説明をつけるんじゃない!まあ飯がうまいって言ってくれる分にはうれしいけどよ。お嬢ちゃんもただ待ってるだけっていうのもつまらないだろうし、ほれこれでも食べな」
そう言って店主は私の目の前に小さな器に入ったスープと数切れの羊肉の入った皿を差し出す。
「え、私注文してないですよ?」
「代金はいらねよ、初回ご来店サービスってやつだ。食事が来るまでの間の話を聞いていたが王都に来るの初めてなんだろう?こういう日は思い出に残りやすいからな、まあ美味しいものを食べたってことで覚えといてくれや。村に帰ってからほかの人に宣伝してくれてもいいぞ、うまい店があったってな」
「あの、お気遣いいただいてありがとうございます」
私は軽く頭を下げ一礼してから、言葉に甘えて出された品を口にする。
「礼儀正しくていい子だなぁ。
年もそんなに変わらなさそうだし、少しは見習えよキャトリッジ?」
「何言ってるんすか、私も礼儀正しくいい子っすよ!
ちなみに私は16才っす!エーナさんはいくつっすか?」
「私も16だけど……」
「ほら同い年じゃねぇか」
食事中に一々つかかってこないでほしいっす!と店主に文句いいながらキャトは食事を続けてた。
---------------------------------
「いやー、美味しかったっす!ところでさっき聞きそびれたんすけど、エーナさんが会いたいっていってたタリアヴィルの魔法使いの方って誰なんすか?」
談笑を続けながらお互い出された皿がほとんど空になった頃、キャトからそう問いかけられた。
「ああ、言ってなかったね。えっと、この手紙をくれた人で『アピロ・ウンエントリヒ』っていうの」
私はポケットしまっていた手紙をキャトに差し出しながらそう答えた。
「一応態々村まで来てくれて挨拶もしてくれた人なんだけど………あれどうしたの?」
そこには手紙を受け取ったまま書かれた名前を見つめたまま動かなくなっているキャトの姿があった。
「あのー、キャト?」
そういって顔色を窺うと、キャトの顔は驚愕を受けたような顔でひきつったたまま固まっている。
「え、あのキャト、どうかした?」
「エーナさん、これまじっすか?」
「まじって、何が?」
「エーナさんのお母さんのお友達の魔法使い、なんすよね?」
「そうだと言ってたけど?」
「やややばいっすよエーナさん、なんて人とお知り合いなんすか!!」
「ちょっとキャトさっきからどうしたのよ?なんか変だよ」
「この人、アピロ・ウンエントリヒっていう人は魔法使い界隈、いやこの魔法世界においては超有名人なんす」
「そんな凄い人だったんだ……」
「いやまあ凄いのはそれは確かにそうなんすけど、この人はどっちかっていうと悪い方向で有名なんすよ!魔法史でもおそらく類を見ないほどの超天才、そしてそれと同じくらいの類を見ない超問題児、黒いうわさが絶えない魔女、通称『災厄の魔女 アピロ』っすよ!!」
酒屋のカウンターテーブルでキャトはそう声を上げながら肉汁を垂らす羊肉を頬張っていた。
うまいうまいと何度も言いながら食事をする幸せそうな彼女は横から見てて微笑ましく思えてくる。
これが用事の途中でなければ。
「エーナさんも食べればよかったのに、いいっすよ別に私のおごりでも?
最近ちょっとした臨時収入があったっすからお金なら気にしなくて大丈夫っす!」
「いや、美味しそうなのはわかるんだけどなんというかその……食べる気分になれないというか」
「応接間で待ってろっていう話っすか?
大丈夫っすよ、アルバート先輩の用事はいつも長いんすよ。それに今日はちょうどあそこによる日っすから、どうせ待ちぼうけ食らうだけなんでそんな心配しなくてもいいっすよ」
気にしないっす!と彼女は言うがそうはいってもやはり気になるもの気になってしまう。
それともこれが都会人の時間の考え方なのだろうか……。
「嬢ちゃん、キャトリッジにこれ以上何いっても無駄だよ。こいついくら言っても毎回こうだから」
カウンターの向こうから酒屋の店主がそう声をかけてきた。
「いつも用事の途中や修行の最中に抜け出してはここらの店を訪れてるんだよこいつ。まあ別に俺らは金さえもらえれば文句はないが、毎回こっぴどく叱られてるっていう話じゃねえか」
「叱られてる!?やっぱり怒られてるじゃないキャト!」
「失礼な!?怒られてたのは最初の頃だけっす!!
途中からはちゃんと合間を縫って休憩時間という事で来てるだけでさぼりとかそういうのじゃないっすよ?きちんとした息抜きっす!」
それはちゃんと許可を貰った休憩なのだろうか……。
「とにかく何度も言いますが考えすぎっす!エーナさんもほら、一品くらい何か頼むっすよ。ここのごはんは王都でもかなり美味しいってことで有名なんすよ!……ちなみにごはんを作ってるのはおかみさんの方で店主のおっちゃんじゃないっす」
「余計な説明をつけるんじゃない!まあ飯がうまいって言ってくれる分にはうれしいけどよ。お嬢ちゃんもただ待ってるだけっていうのもつまらないだろうし、ほれこれでも食べな」
そう言って店主は私の目の前に小さな器に入ったスープと数切れの羊肉の入った皿を差し出す。
「え、私注文してないですよ?」
「代金はいらねよ、初回ご来店サービスってやつだ。食事が来るまでの間の話を聞いていたが王都に来るの初めてなんだろう?こういう日は思い出に残りやすいからな、まあ美味しいものを食べたってことで覚えといてくれや。村に帰ってからほかの人に宣伝してくれてもいいぞ、うまい店があったってな」
「あの、お気遣いいただいてありがとうございます」
私は軽く頭を下げ一礼してから、言葉に甘えて出された品を口にする。
「礼儀正しくていい子だなぁ。
年もそんなに変わらなさそうだし、少しは見習えよキャトリッジ?」
「何言ってるんすか、私も礼儀正しくいい子っすよ!
ちなみに私は16才っす!エーナさんはいくつっすか?」
「私も16だけど……」
「ほら同い年じゃねぇか」
食事中に一々つかかってこないでほしいっす!と店主に文句いいながらキャトは食事を続けてた。
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「いやー、美味しかったっす!ところでさっき聞きそびれたんすけど、エーナさんが会いたいっていってたタリアヴィルの魔法使いの方って誰なんすか?」
談笑を続けながらお互い出された皿がほとんど空になった頃、キャトからそう問いかけられた。
「ああ、言ってなかったね。えっと、この手紙をくれた人で『アピロ・ウンエントリヒ』っていうの」
私はポケットしまっていた手紙をキャトに差し出しながらそう答えた。
「一応態々村まで来てくれて挨拶もしてくれた人なんだけど………あれどうしたの?」
そこには手紙を受け取ったまま書かれた名前を見つめたまま動かなくなっているキャトの姿があった。
「あのー、キャト?」
そういって顔色を窺うと、キャトの顔は驚愕を受けたような顔でひきつったたまま固まっている。
「え、あのキャト、どうかした?」
「エーナさん、これまじっすか?」
「まじって、何が?」
「エーナさんのお母さんのお友達の魔法使い、なんすよね?」
「そうだと言ってたけど?」
「やややばいっすよエーナさん、なんて人とお知り合いなんすか!!」
「ちょっとキャトさっきからどうしたのよ?なんか変だよ」
「この人、アピロ・ウンエントリヒっていう人は魔法使い界隈、いやこの魔法世界においては超有名人なんす」
「そんな凄い人だったんだ……」
「いやまあ凄いのはそれは確かにそうなんすけど、この人はどっちかっていうと悪い方向で有名なんすよ!魔法史でもおそらく類を見ないほどの超天才、そしてそれと同じくらいの類を見ない超問題児、黒いうわさが絶えない魔女、通称『災厄の魔女 アピロ』っすよ!!」
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