僕の番は規格外の天才で、気づいたら世界を平和にしてしまいました

ニア。

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 この世界、ちょっと変なんだ。

 ここはね、普通の世界の時間軸から、ほんの少しだけ歪んでしまった地球なんだ。


 どうしてそうなったのかは、よく分からない。

 でも原因はたぶん、世界中のみんなの強い願いだと思う。

 例えば――

「休み明けに仕事や学校に行きたくないなぁ。」とか。

「いや、休み明けじゃなくても、毎日行きたくない。」とか。

「台風、今日なら直撃してもいいなぁ。」とか。

「こっち来い。」
「逸れるな。」
「絶対逸れるなぁぁぁ!」とか。

 それから、

「テスト潰れろぉ。」とか。

「先生が作ったテスト、全部強盗に盗まれないかなぁ。」とか。

「ダメなら、せめてこの学校の先生全員が記憶喪失にならないかなぁ。」とか。

 あと、

「電車止まれ。」
「五分遅れとか、生ぬるい。」
「三年くらい止まってろぉ!」とか。

 それに加えて、

 BとLを愛する人たちの、強すぎる愛の力も合わさったらしい。

 ……うん。
 たぶんそれが一番大きい。

 もしかしたら、未来から来たネコ型ロボットが、ある少年を助けるために道具を使いすぎて、時間軸がぐちゃぐちゃになった世界なのかもしれない。

 泉に落ちて綺麗になった誰かが暮らしている、もしもの世界なのかもしれないしね。

 まあ、詳しいことは分からない。

 でも安心して。

 怖い話じゃないよ。

 たぶんね。

 ⸻

 僕の名前は
 畑中 麦穂(はたなか むぎほ)。

 ほにゃらら歳。


 春からの新しい生活は楽しみだけど、ちょっと緊張する。

 どうか平和に過ごせますように。

 僕はたぶん、大昔――人類がまだ類人猿に近かった頃、藪とか洞穴に隠れて生き延びていた祖先の遺伝子を、色濃く受け継いでいる。

 つまり、

 すぐ巣穴に帰りたくなるタイプの小心者だ。

 残念ながら。


***


 僕の趣味は、動画を見ること。

 それからもう一つ。

 大昔に書かれた『腐る病にかかった乙女の日記』を解読すること。

 うん。
 自分でもちょっと変わってると思う。

 この日記、ドーナツ一個と同じ値段だったんだ。フリーマーケットで。

 ……でも店主は、

「国宝級だよ」

 って言ってた。

 うん。
 ちょっと怪しいよね……。


 僕のママンは秋穂(あきほ)さん。

 男の娘のオメガなんだよ。

 すごく可愛い。
 お姫様みたいな人だ。

 熱帯雨林の動植物を守る研究をしていて、その研究機関の理事でもある。

 ついでに学校の理事もしている。

 その学校はちょっと変わっていて、

 生まれたばかりの赤ちゃんから、お年寄りまで通える一貫校なんだ。

 理念はひとつ。

 人は、人を尊重しなければならない。理解できるまで話し合わなければならない。

 ……という、わりと真面目なもの。

 しかもこの学校、二十四時間開いている。

 夜になると、仕事帰りの大人たちがカルチャー講座を受けに来たりする。

 誰かが言っていた。

「ここは大人の学校だ」って。

 僕はまだよく分からないけど。

 たぶん、腐る病の乙女の日記にも少しだけ通じるものがあった気がする。

 乙女は結婚したあと、日記にこう書いていた。

『妥協して、妥協して結婚して、見ないふりをして、耐えている私が休日出勤しているのに。アイツは《癒しの保育園》で赤ちゃんプレイかぁぁ?

「またおっぱい飲みに来てね。ミサキ」って
 ミサキって誰だぁぁぁーーー』

 ……うん。

 詳しくは分からないけど、きっと大人の世界って複雑なんだと思う。

***


 僕のパパンは、騎士アーサー卿。

 ママンの側近の人型ロボットだ。

 販売キャラクター名は、「光の騎士」。

 見た目は王子様みたいにかっこいい。

 育児機能、護衛機能を搭載。教師、救急救命士、弁護士の資格まで持っている。

 ……ママンが課金しまくったらしい。

 今では人間と見分けがつかないくらいの見た目で、ちょお~高性能なんだ。

 特にオメガの人には、護衛ロボットはとても大事なんだって。

 オメガはフェロモンを出すから、誘拐のターゲットになりやすい。

 ちょっと怖いよね。

 もちろん、ロボットとは子どもはできない。

 だから僕は精子バンクの提供で生まれたって、聞いている。

 ママンのお腹で育って生まれたんだって。


 今の時代はね。昔の人がスマートフォンを持っていたみたいに、ロボットを持ち歩く人が多い。

 見た目は色々ある。

 人型だったり、ポケットサイズのタブレット型だったり。

 両方持っている人もいる。

 もちろん、同じモデルでも完全に同じ姿にはならない。

 瞳の色。
 髪型。
 髪の色。
 肌の色。
 筋肉のつき方。

 全部細かくカスタマイズされる。

 だから

 同じ「アーサー卿」を使っている人がいても、見た目は世界に一人だけなんだ。

 搭載機能もすごい。

 しかも暖かいし、
 落ち着く匂いもする。

 朝はちゃんと起こしてくれる。

 毎朝、六時三十分。

「朝だよ、起きなさい。」

 ってね。

***

 僕が小さい頃は、ママンを困らせると叱られた。

「悪い子」

 って。

 アーサーパパンは、その時だけちょっと怖い声になる。

 でも普段は優しい。

 いつも僕とママンを守ってくれる。

 だから僕は、アーサーパパンのことが大好きなんだ。


 ***


 その日はママンと病院へ行く予定だった。


 そしてその帰りに、


 僕は――運命の番に出会うことになる。
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