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16 抑制剤を貰いに病院へ
しおりを挟む初めてのヒート後、フェロモンの安定した平日の午後、陽ちゃんと二人で、大学病院のバース科に来ています。
季節はすっかり夏です。
朝顔のアーチには、風鈴がたくさん風を受けてそよいでいる。涼しい音色だなぁ。
「一の瀬さん2番診察室にどうぞ」
案内をされて2人で診察室に入ったんだけど、やっぱり、僕だけ全部脱いで超短い診察服に着替えさせられた。
「やだぁ、僕、今日はお薬貰うだけって思ってたのにぃ」
「ごめんね、むーちゃん。オメガは検査があったんだね。」
そう言えば、陽ちゃんは身長と体重の自己申告だけで終わりだったなぁ。
良いなぁ。アルファって。
「こんにちは、麦穂くん。もう、番に会えたんだね?しかも、ファーストヒートも来たんだって?やっぱり、番に会うと早くから、ヒートが始まるね。ヒート中は、何か食べれたかな?」
「はい、ゼリー飲料と、ペースト状の食事を、五、六時間置きに摂取させる事が出来ました」
凄いな、なんて言いながら南條先生はカルテに何かを書き込み、ムキムキ看護師楓くんが、僕をオメガ診察台へ、乗せようとする。
「巣も作って、いっぱい寝ました。でも、診察台には乗りません~。イーヤーダー。」
僕は陽ちゃんにしがみ付き、精一杯抵抗をする。
看護師さんと陽ちゃんが困った顔をしているのは分かったけど、僕も譲れないもんね。
僕が、イヤイヤして、薬だけ薬だけと繰り返していると、南條先生が言う。
「薬は処方しますけど、万能では有りませんよ。楓くん、肛門検査キット持って来てくれる?」
「はい、キットですね。分かりました」
危機を感じた僕は陽ちゃんをよじ登る。
「嫌だぁ。持って来ないでぇ!」
「そうは行かないんだなぁ。えっと、陽一郎くんは、麦穂くんを押さえててくれる?細かく観察しておくと何かあった時に異変に直ぐ気付けるんだよ。ピッタリ体調に合う薬も出せるからね」
相変わらず、優しいお顔の南條先生は医療用グローブをはめながらこっちを見ている。
困った顔のままの陽ちゃんが、僕の体を先生のほうに向けて抱きしめて来た。
お尻は、陽ちゃんの体側だ。
少しホッとして力が抜けてしまった。
前回の様に銀のトレーに不穏な医療器具を載せて戻った看護師さんが陽ちゃんに隣の椅子を勧めていた。
大きな婦人科の椅子だよね。それ、女の子オメガ用だよ。
僕を後ろから抱きしめたまま、陽ちゃんは、椅子に座り、僕の足を開き腰の下に使い捨ての不織布が巻かれたクッションの様な物を入れ固定された。
「はーい。ご協力、ありがとうございます。」
看護師さんが、あっいう間に僕の足を左右にある婦人科診察台の柱に固定してしまった。
「きゃーぁぁ。イヤーァ僕、抑制剤だけ欲しいのぉぉぉ」
産婦人科診察台の、番の抱っこバージョンの完成でした。
コレじゃあ、明るい診察室で、僕の下半身は丸見えだよ。大人しく男の子のオメガ診察台に乗れば良かったぁぁ。
僕の小さくなってるボクと、後ろの穴、ダブルで丸見えだぁ。
しかも、今日に限ってボクは捜索願いを出したいほど、小さくなっていた。
え?そこまで小さくなれるのかぁ。
片手で隠せるけど、そこは両手で隠しておいた。見栄っ張りだったかなぁ。
「本当はもっと大きいからね」
コッソリと小声で陽ちゃんに、知らせておいた。
「そうなんだぁ。分かった。今度普通の大きさの時見せてね。」
と、小声で答えた陽ちゃんは、僕の両手を包むように、片手を添えてきた。
えぇ~と?どうしようかなぁ。
今日普通だよって言って、見せるの?恥ずかしいなぁそれ。
「それは、えっと、ご遠慮させて下さい。」
「はぁい、薬の前に、お尻の確認をするよ。見たところ、擦過傷は無いねぇ。大丈夫だね。」
「性行為も、自慰行為もしていません。」
「そうだよね。まだだよね。でも、ケガをしていない状態を確認して、今後のケガに備えたいので……」
先生の手には、長さを測る目盛の付いた機器を肛門に当て、僕のお尻の穴の写真をパシャリと撮った。
「ーーーもう下ろしてぇ」
「はーい、まだ、もう少しそのままで頑張ってねぇ。」
目盛の付いた機器の角度を変え、もう二枚パシャリ、パシャリと写真を撮っていた。
たまらず、モゾモゾ動く僕に、
「もう少し頑張ろうむーちゃん。」
と、耳元で囁かれた。
「そー。そのままね。偉いよぉ。」
続いて、看護師さんから受け取った、大きな綿棒の様な物を南條先生が、僕のお尻の穴に入れてクルクルうごかした。
クリクリ、クルクル。
「ひぃゔぅぅ。」
僕はその動きに合わせてぴくんぴくんと動いていた。
それから、スゥーッと大きな綿棒は僕の中でから、抜かれていった。
「ふぅっ、くぅぅ~」
「はい、粘液サンプル採取出来たからねぇ。えらい、えらい。もう少し、そのままね」
次に南條先生は、リトマス試験紙によく似た5センチ四方の紙を僕のお尻の穴にぺたりと貼り親指で押さえた。
僕のお尻とお腹はまたまた、ひくひくと動いてしまった。
「もう少しだよー。色が変わったらお終いだからねー。いやぁ、良かったですよ、番と一緒に来てくれて。一人より安心でしょ?」
うん。そうかもしれない。
看護師さんも、うんうんと頷いている。
「いつもは、嫌がる子は、看護師が抱いて椅子に座らせているんですけどね。暴れたりしたら、逆にケガをさせてしまいますからね。前に来た子は暴れすぎて、シーツでグルグル巻きにしての診察だったからねー」
ニッコリ優しいお顔で、南條先生が言った。
「そんな事になたら、嫌でしょ?ケガしたら本末転倒だからね」
と、笑いかけて来た。僕はいつの間にか変に入った力が抜けていた。
そして、グルグル巻きは嫌なので、大人しくする。
「いつ、どこでオメガの子が病院にかかっても問題の無いように、僕以外でも分かる様に、細かく体の情報をカルテに載せています。体調の変化にも、早く気付ける様にしていますよ。安心して頼ってくださいね」
「ありがとうございます、心強いです。感謝します」
陽ちゃんが、南條先生にお礼を言っていた。
駄々をこねた自分がとても恥ずかしく思えてきた。
「オメガ性の子達って、本当にかわいいんですよね。全力で守りたいって思います。」
「看護師さん南條先生、いつもありがとう。毎回暴れてごめんなさい」
「偉いね。麦穂くんは。キチンと、しかも自然にお礼とお詫びが言えるんだよね。お利口だね。かわいいなぁ。その、純粋さ愛されてる証拠だよ~。そのまま人を愛せる大人になって欲しいなぁ。ーーおっ、う~ん、もう少しかなぁ。」
「ヒートが終わった健康な時の体から出ている体液のo pHサンプルを測り終わったら、今日は終わりだからねー」
「はい」
「ーーーはーいお終い。体も大丈夫そうですねぇ。では、薬局で薬を貰って帰って下さい」
「ありがとうございました。」
頭を下げる陽ちゃん。
拘束を解かれ、茫然とする僕の着替えをテキパキと手伝う看護師さんと、陽ちゃん。
「あ、ありがとうございました」
遅れて感謝を言葉にした。
最後の方は、小さな声になってしまったのは、仕方ないよね。
南條先生は、僕の体液で変色した紙と、サンプルを見比べながら、カルテに色々と、書き加えて言った。
「はーい、次は何もなければお薬の処方だけかな。何でも、気になったら、その都度来てね」
毎度ながら、体力と気力の全てを使い果たした僕は、陽ちゃんにしがみ付き家に着くまで顔を上げる事は無かったのです。
気を使ってくれたらしい陽ちゃんに、90分制。取り放題、食べ放題の、ぶどう狩りカフェ「grape・grape」に行くか聞かれだけど……家に帰りたかったんだ。
きっと、体力がヒートで落ちていたんだね。
ぶどう飴と、ぶどうのケーキ、ぶどうパフェ、ぶどうのソフトクリームを乗せたクレープも良いなあ。
あと、あと、ぶどうのシェイクに、ゼリーにたっぷりぶどうを乗せて、食べたかったかもぉ。
店内で食べた人だけが買えるイメージマスコットの、ベリーちゃんも、欲しかったよぉ。
「ありがとう、元気になったら行きたいなぁ。でも、ごめんね今日は僕お家に帰りたい」
「いいよ。わかった。このまま帰ろうね」
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