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2、俺は語尾の赤いハートマーク(♥️)が読み取れる
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俺は、人の言葉――セリフ――の語尾に付く赤いハートマーク(♥️)を察することができる。
〈例〉
母「おはよ」
俺「おはよ」
父「おはよ♥️」
母「おはよ♥️」
俺「おはよ」
父「おはよ」
……このように。
恋愛関係にある者同士が会話するときの語尾のハートマークがわかる――感じられる――のだ。
幼い頃は
「ねぇ、お父さんとお母さんは僕と喋るとき何で僕には『♥️』付けてくれないの?」
と言って両親を困らせた。
明らかにオカシイ発言をする子どもである。
両親が呑気で、俺を病院へ連れて行かなくて良かった。
その後成長すると『♥️』を認識するなど『自分の頭がオカシイ』と言う可能性も考えるようになった。
しかしただ単に頭がオカシイとも言い切れなかった。
当たっているのである。
例えば学校の先生。
『担任と副担任、語尾に「♥️」を付け合っているな』
と思っていたら一年後に結婚したり。
近所のおじさんと近所のおばさん。
『夫婦でもないのに「♥️」を付け合っているな』
と思っていたらその後不倫が発覚したり。
合っているのである。
俺の認識する『♥️』は確かに恋愛感情があるもの同士が話すときに語尾に付けてしまう、感情みたいなもののようだ。知らんけど。
※※※
と言うわけで。
俺は多分頭はオカシイとは思うけど、そこまでおかしくもない――一応『根拠』があるようだから。
……と結論づけて、そんなに気にせずに生きることにした。
ちょっとした特殊能力で、あんまり威張れない種類のものだと思った。
将来占い師になれないかなーと思ったりして。
なれないだろうなあ。
『人の恋愛感情が誰に向いているか、その人が恋愛対象と話しているところを見るとわかる』
占い師になれるとは思えない。
状況が限られる。
役にも立たない、ただ『耳年増』みたいにどうしてもなってしまうだけの能力。
両親以外には誰にも打ち明けずに、これまで生きてきた。
誰かが誰かに対して語尾に『♥️』を一方的に付けていても。
先生と生徒が『♥️』を付け合って話していても。
男がその親友(男)に対して『♥️』を付けつつ女の話題を振っていても(切ない)。
女の子同士が胸をふざけあって揉みながら『大きい♥️』、『あんたのが大きいじゃん♥️』とはしゃいでいても(萌える)。
全部スルーだ!
大いなる力には大いなる責任が伴う。
○パイダーマンで習った。
どこが大いなる力だ、と思うけど。
しかし俺も普通に人の幸せを祈れる人間なので、友達に好きな女の子がいて。
その女の子も友達が好きなようだったら――友達と話すときに語尾に『♥️』を付けていたら。
告白するように勧めたりはする。
「絶対おまえのことあっちも好きだから!」
とか言って。
そしてキューピッドになるんだ。
悪くない。
※※※
しかし『♥️』が消える瞬間を目撃することもある。
この間まで先生と生徒が『♥️』を付け合っていたのに、生徒の方から消えたり――2人が付き合っていたか、胸に秘めていた恋心――『両片思い』――だったのかは知らないが。
今でも傍目にはラブラブカップルなのに実際は男の方が『♥️』を別の女に向けていたり。
傍目にはラブラブなのに両方とも相手と話すときに『♥️』が見えない場合もある。
と言っても、それもまた――『♥️』が消えたと思うのもまた――俺の勘違い、妄想の可能性もあるのだが。
実際はまだラブラブなのかもしれないが。
それに恋愛感情だけが『恋人』になる全てではないだろうが。
しかし『♥️』が消えたカップルを観察していると、その後皆、別れていった。
※※※
他人が会話しているとき、語尾の『♥️』がわかること。
結局それはある意味、どうでもいいことだった。
人より知りたくもないことが多く知れる。
その程度の能力だと思った。
別に要らない、と思っていたが。
ますますそう思う出来事に、俺はとうとう遭遇した。
クラス替え後、前の席になった女の子。
振り返って俺に話しかけてきたとき、ドキッとした。
可愛いと思った。
「次、理科室移動だよね?」
と彼女は俺に聞いた。
「ああ、うん。
そうだよ♥️」
そう答えた俺は思わず自分の口を抑えた。
女の子は不思議そうに俺を見た。
「どうかした?」
「いや、何でもない……♥️」
くそ……、と思った。
自分の口から出るセリフにまで『♥️』を感じるとは。
気になって、照れてしまって、マトモに話せない。
「おはよう」
と彼女が挨拶してくれても
「……おはよ♥️」
『♥️』が気になってしまって――まさか俺以外に語尾の『♥️』を認識する人間などいないだろうが――、自意識過剰になってしまい言葉が冷たく、素っ気なくなってしまう。
ツンデレ? 状態になってしまう。
いやクーデレ?
いや、デレの部分見せてないじゃないか……
ただのクー。ツン。
このままでは嫌われてしまう。
そのうち話しかけてもらえなくなる。
照れた態度をちゃんと改めようと心に決めた。
次話しかけてきてくれたときは、自分の口から漏れる『♥️』を気にせずににこやかに話すんだ!
……と考えていたそのとき。
前の席の彼女が後ろを振り返った。
俺に話しかけるためのようだ。
よし、絶対、気さくに話す!
「ねえ?♥️」
彼女は言った。
「次の予習、してきた?♥️」
「ん♥️」
俺は答えた。
「してきてない♥️」
「そっか♥️」
彼女は曖昧に微笑むと前を向いた。
……
あああ!
お、俺……またやっちゃった!
またクー、ツン、しちゃった!
だって……
嘘ぉ……
顔がニヤけるので、手で口元を覆った。
彼女が俺に向かって『♥️』を向けてくれるなんて!
俺のことを好きになってくれた!?
こんなツン、クーな俺を!?
ああ……
女の子に『♥️』を向けられるなんて初めてだ!
ヒトに向けられる『♥️』は嫌と言うほど見ているのに俺に向かう『♥️』を見たことがなかったなんて、今思えばかわいそうな俺。
今はかわいそうじゃない。
何たって好きな子に『♥️』を向けられているのだから……
初めて好きになった子に、初めて『♥️』を向けられているのだから。
※※※
その後。
彼女「昨日、あのドラマ見た?♥️」
俺「……見た♥️」
彼女「おもしろかったよね♥️」
俺「うん♥️」
彼女「宿題できた?♥️」
俺「あと少し♥️」
彼女「今日当てられそう♥️ この問題、わかる?♥️」
俺「あ、うん♥️」
……文字で起こすとラブラブに見えるが。
やっぱり俺の『塩対応』はどうしても続いてしまった。
どうしてだろう?
もっと丁寧に接しようと思うのに。
何故か『クール』になってしまう。
彼女がその時点では彼女に『塩対応』しか見せていなかった俺に『♥️』を付けてくれるようになったからだろうか?
彼女は『塩対応』の俺を好きになってくれたと思ったのか。
いや、違う。
やっぱり、ただ単に照れてしまうからだ。
好きな女の子に語尾に『♥️』を付けられると……
〈例〉
『宿題できた?♥️』
→『宿題できた? 大好き♡』
と言われているようで。
照れてしまってダメだ。
もちろん本当はもっと仲良くなりたいのに……
現状を打破するためには……
俺は決意した。
告白しよう!
『お互い好き』とお互い認識すれば、こんなに照れないはずだ!
……と思ってタイミングを見計らっていた頃、彼女と教室で二人きりになる機会が来た。
告白、するぞ!
と思って話しかけようとしたとき、彼女の方から、
「あの……♥️」
声をかけてきた。
「ん……?♥️」
またクールな返事をしてしまった。
彼女は俺と目を合わせ「えへ……♥️」と愛想笑いをすると目を逸らす。
その顔はもう笑って居らず、何だかモジモジしている。
何か気まずい、緊張した雰囲気……?
いつものニコニコした彼女と違う。
まさか、コレ……
彼女は再び俺に視線を戻すと、
「あの……♥️
前から、言おうと思っていたんだけど……♥️」
「ん……?♥️」
またクールな返答をしてしまった。
仕方ない、ドキドキして、頭が回らないのだ。
「えっと……♥️」
彼女が潤んだ瞳で俺を見つめる。
これ、やっぱり……
ドキドキドキドキ……
彼女がまた目を逸らした。
少し顔を俯けると、曖昧な微笑みを口元に浮かべながら言う。
「私って、迷惑かな……?♥️」
「えっ……?♥️」思いも寄らない彼女の言葉に、聞き返す。
「いつも、あなたにしつこく話しかけちゃってるでしょ?♥️
もしかして迷惑なのかなあ、って……♥️」
「いや♥️」俺は慌てて言った。
「迷惑だなんて、思ったことないよ♥️」
彼女はパッと顔を上げ俺を見て、嬉しそうに微笑んだ。
「良かった……♥️」
胸がチクリと痛んだ。
俺は反省した。
やっぱり俺の『塩対応』は彼女を傷付けていたのだ。
俺は拳を握り、決心して言った。
「迷惑どころか、嬉しかった♥️」
「えっ……?♥️」
俺を潤んだ瞳で見つめる彼女を見つめながら……
「俺……初めて会ったときから君のことが……♥️」
※※※
初めて彼女ができた日の翌日。
朝食の食卓に付くと
「おはよ♥️」
「おはよ♥」
挨拶を交わす両親をぼんやり見つめた。
俺はいくつもの『♥️』がなくなる現場を見送りながら生きてきたが、両親のものはいまだになくならない。
スマホで『おはよ(^▽^)』と言う、俺にとっては口から出る言葉よりクールに見える彼女からのメッセージを見つつ思う。
俺たちはいつまでお互いに『♥️』を付けていられるのだろうか?
『お互い好き』と確認した直後からそんなことを考えてしまうのも、この能力(?)ゆえか。
しかし。
『お互い好き』と確認したばかりだからか。
いつまでも『♥️』を付け合う両親を見てきたからだろうか。
実はあんまり、心配していなかった。
学校へ行き、教室へ入る。
「おはよ♥️」
今日も俺にだけわかる言外のメッセージを彼女は俺にくれる。
「おはよ♥️」
俺も、言外のメッセージを語尾に付けて、彼女に応えるのだ。
〈終〉
〈例〉
母「おはよ」
俺「おはよ」
父「おはよ♥️」
母「おはよ♥️」
俺「おはよ」
父「おはよ」
……このように。
恋愛関係にある者同士が会話するときの語尾のハートマークがわかる――感じられる――のだ。
幼い頃は
「ねぇ、お父さんとお母さんは僕と喋るとき何で僕には『♥️』付けてくれないの?」
と言って両親を困らせた。
明らかにオカシイ発言をする子どもである。
両親が呑気で、俺を病院へ連れて行かなくて良かった。
その後成長すると『♥️』を認識するなど『自分の頭がオカシイ』と言う可能性も考えるようになった。
しかしただ単に頭がオカシイとも言い切れなかった。
当たっているのである。
例えば学校の先生。
『担任と副担任、語尾に「♥️」を付け合っているな』
と思っていたら一年後に結婚したり。
近所のおじさんと近所のおばさん。
『夫婦でもないのに「♥️」を付け合っているな』
と思っていたらその後不倫が発覚したり。
合っているのである。
俺の認識する『♥️』は確かに恋愛感情があるもの同士が話すときに語尾に付けてしまう、感情みたいなもののようだ。知らんけど。
※※※
と言うわけで。
俺は多分頭はオカシイとは思うけど、そこまでおかしくもない――一応『根拠』があるようだから。
……と結論づけて、そんなに気にせずに生きることにした。
ちょっとした特殊能力で、あんまり威張れない種類のものだと思った。
将来占い師になれないかなーと思ったりして。
なれないだろうなあ。
『人の恋愛感情が誰に向いているか、その人が恋愛対象と話しているところを見るとわかる』
占い師になれるとは思えない。
状況が限られる。
役にも立たない、ただ『耳年増』みたいにどうしてもなってしまうだけの能力。
両親以外には誰にも打ち明けずに、これまで生きてきた。
誰かが誰かに対して語尾に『♥️』を一方的に付けていても。
先生と生徒が『♥️』を付け合って話していても。
男がその親友(男)に対して『♥️』を付けつつ女の話題を振っていても(切ない)。
女の子同士が胸をふざけあって揉みながら『大きい♥️』、『あんたのが大きいじゃん♥️』とはしゃいでいても(萌える)。
全部スルーだ!
大いなる力には大いなる責任が伴う。
○パイダーマンで習った。
どこが大いなる力だ、と思うけど。
しかし俺も普通に人の幸せを祈れる人間なので、友達に好きな女の子がいて。
その女の子も友達が好きなようだったら――友達と話すときに語尾に『♥️』を付けていたら。
告白するように勧めたりはする。
「絶対おまえのことあっちも好きだから!」
とか言って。
そしてキューピッドになるんだ。
悪くない。
※※※
しかし『♥️』が消える瞬間を目撃することもある。
この間まで先生と生徒が『♥️』を付け合っていたのに、生徒の方から消えたり――2人が付き合っていたか、胸に秘めていた恋心――『両片思い』――だったのかは知らないが。
今でも傍目にはラブラブカップルなのに実際は男の方が『♥️』を別の女に向けていたり。
傍目にはラブラブなのに両方とも相手と話すときに『♥️』が見えない場合もある。
と言っても、それもまた――『♥️』が消えたと思うのもまた――俺の勘違い、妄想の可能性もあるのだが。
実際はまだラブラブなのかもしれないが。
それに恋愛感情だけが『恋人』になる全てではないだろうが。
しかし『♥️』が消えたカップルを観察していると、その後皆、別れていった。
※※※
他人が会話しているとき、語尾の『♥️』がわかること。
結局それはある意味、どうでもいいことだった。
人より知りたくもないことが多く知れる。
その程度の能力だと思った。
別に要らない、と思っていたが。
ますますそう思う出来事に、俺はとうとう遭遇した。
クラス替え後、前の席になった女の子。
振り返って俺に話しかけてきたとき、ドキッとした。
可愛いと思った。
「次、理科室移動だよね?」
と彼女は俺に聞いた。
「ああ、うん。
そうだよ♥️」
そう答えた俺は思わず自分の口を抑えた。
女の子は不思議そうに俺を見た。
「どうかした?」
「いや、何でもない……♥️」
くそ……、と思った。
自分の口から出るセリフにまで『♥️』を感じるとは。
気になって、照れてしまって、マトモに話せない。
「おはよう」
と彼女が挨拶してくれても
「……おはよ♥️」
『♥️』が気になってしまって――まさか俺以外に語尾の『♥️』を認識する人間などいないだろうが――、自意識過剰になってしまい言葉が冷たく、素っ気なくなってしまう。
ツンデレ? 状態になってしまう。
いやクーデレ?
いや、デレの部分見せてないじゃないか……
ただのクー。ツン。
このままでは嫌われてしまう。
そのうち話しかけてもらえなくなる。
照れた態度をちゃんと改めようと心に決めた。
次話しかけてきてくれたときは、自分の口から漏れる『♥️』を気にせずににこやかに話すんだ!
……と考えていたそのとき。
前の席の彼女が後ろを振り返った。
俺に話しかけるためのようだ。
よし、絶対、気さくに話す!
「ねえ?♥️」
彼女は言った。
「次の予習、してきた?♥️」
「ん♥️」
俺は答えた。
「してきてない♥️」
「そっか♥️」
彼女は曖昧に微笑むと前を向いた。
……
あああ!
お、俺……またやっちゃった!
またクー、ツン、しちゃった!
だって……
嘘ぉ……
顔がニヤけるので、手で口元を覆った。
彼女が俺に向かって『♥️』を向けてくれるなんて!
俺のことを好きになってくれた!?
こんなツン、クーな俺を!?
ああ……
女の子に『♥️』を向けられるなんて初めてだ!
ヒトに向けられる『♥️』は嫌と言うほど見ているのに俺に向かう『♥️』を見たことがなかったなんて、今思えばかわいそうな俺。
今はかわいそうじゃない。
何たって好きな子に『♥️』を向けられているのだから……
初めて好きになった子に、初めて『♥️』を向けられているのだから。
※※※
その後。
彼女「昨日、あのドラマ見た?♥️」
俺「……見た♥️」
彼女「おもしろかったよね♥️」
俺「うん♥️」
彼女「宿題できた?♥️」
俺「あと少し♥️」
彼女「今日当てられそう♥️ この問題、わかる?♥️」
俺「あ、うん♥️」
……文字で起こすとラブラブに見えるが。
やっぱり俺の『塩対応』はどうしても続いてしまった。
どうしてだろう?
もっと丁寧に接しようと思うのに。
何故か『クール』になってしまう。
彼女がその時点では彼女に『塩対応』しか見せていなかった俺に『♥️』を付けてくれるようになったからだろうか?
彼女は『塩対応』の俺を好きになってくれたと思ったのか。
いや、違う。
やっぱり、ただ単に照れてしまうからだ。
好きな女の子に語尾に『♥️』を付けられると……
〈例〉
『宿題できた?♥️』
→『宿題できた? 大好き♡』
と言われているようで。
照れてしまってダメだ。
もちろん本当はもっと仲良くなりたいのに……
現状を打破するためには……
俺は決意した。
告白しよう!
『お互い好き』とお互い認識すれば、こんなに照れないはずだ!
……と思ってタイミングを見計らっていた頃、彼女と教室で二人きりになる機会が来た。
告白、するぞ!
と思って話しかけようとしたとき、彼女の方から、
「あの……♥️」
声をかけてきた。
「ん……?♥️」
またクールな返事をしてしまった。
彼女は俺と目を合わせ「えへ……♥️」と愛想笑いをすると目を逸らす。
その顔はもう笑って居らず、何だかモジモジしている。
何か気まずい、緊張した雰囲気……?
いつものニコニコした彼女と違う。
まさか、コレ……
彼女は再び俺に視線を戻すと、
「あの……♥️
前から、言おうと思っていたんだけど……♥️」
「ん……?♥️」
またクールな返答をしてしまった。
仕方ない、ドキドキして、頭が回らないのだ。
「えっと……♥️」
彼女が潤んだ瞳で俺を見つめる。
これ、やっぱり……
ドキドキドキドキ……
彼女がまた目を逸らした。
少し顔を俯けると、曖昧な微笑みを口元に浮かべながら言う。
「私って、迷惑かな……?♥️」
「えっ……?♥️」思いも寄らない彼女の言葉に、聞き返す。
「いつも、あなたにしつこく話しかけちゃってるでしょ?♥️
もしかして迷惑なのかなあ、って……♥️」
「いや♥️」俺は慌てて言った。
「迷惑だなんて、思ったことないよ♥️」
彼女はパッと顔を上げ俺を見て、嬉しそうに微笑んだ。
「良かった……♥️」
胸がチクリと痛んだ。
俺は反省した。
やっぱり俺の『塩対応』は彼女を傷付けていたのだ。
俺は拳を握り、決心して言った。
「迷惑どころか、嬉しかった♥️」
「えっ……?♥️」
俺を潤んだ瞳で見つめる彼女を見つめながら……
「俺……初めて会ったときから君のことが……♥️」
※※※
初めて彼女ができた日の翌日。
朝食の食卓に付くと
「おはよ♥️」
「おはよ♥」
挨拶を交わす両親をぼんやり見つめた。
俺はいくつもの『♥️』がなくなる現場を見送りながら生きてきたが、両親のものはいまだになくならない。
スマホで『おはよ(^▽^)』と言う、俺にとっては口から出る言葉よりクールに見える彼女からのメッセージを見つつ思う。
俺たちはいつまでお互いに『♥️』を付けていられるのだろうか?
『お互い好き』と確認した直後からそんなことを考えてしまうのも、この能力(?)ゆえか。
しかし。
『お互い好き』と確認したばかりだからか。
いつまでも『♥️』を付け合う両親を見てきたからだろうか。
実はあんまり、心配していなかった。
学校へ行き、教室へ入る。
「おはよ♥️」
今日も俺にだけわかる言外のメッセージを彼女は俺にくれる。
「おはよ♥️」
俺も、言外のメッセージを語尾に付けて、彼女に応えるのだ。
〈終〉
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