秘密のルームシェア-君の素顔を教えて-

雨季

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第一話 ルームメイト

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「はい、いらっしゃ~い」

そう言って出迎えてくれたのは、引越し先の賃貸マンションの大家さん。仁藤晃(にふじあきら)。柔らかそうな雰囲気で、明るめの茶髪パーマに流行りの丸いメガネをかけている。

俺は、この春から念願の上京をすることにした。
北次叶太(きたつぐかなた)25歳。フリーランスの作曲家をしている。色んなバイトを掛け持ちをして、フリーランスのサウンドクリエーターとして、やっと生計を立てられるようになったからだ。
俺が住む場所は、都心から2駅離れた場所で、閑静な住宅街にあるマンション。
家賃節約のために、ルームシェアを選んだ。俺は、他人に興味がないため、家賃が安ければ何でも良かった。

「お世話になります」
「こちらこそよろしくね~」
「ルームシェアって聞きましたけど、仁藤さんと俺の2人だけですか?」
「ううん、あともう一人いるけど、今は外出してるみたいだね。それと僕のことは晃でいいよ~」
「わかりました。晃さん、ちなみにもう一人ってどんな人なんですか?」
「君と同い年ぐらいかな?男の子で波岡充君(なみおかみつる)も、もう1人のルームメイトだよ」
「そうなんですね」
「うん、人見知りでシャイだけど、悪い子じゃないから仲良くしてあげてね」
「はい」
「ちなみに、お風呂と洗濯機、キッチンとトイレは共同で、掃除は僕がするから大丈夫だよ~。それと、キッチンの調味料と調理器具は自由に使っていいからね~」
「わかりました、ありがとうございます」

説明を聞いた後、それぞれの部屋を案内してもらった。真ん中が俺の部屋で、右が晃さんの部屋、左がもう一人のルームメイトの部屋らしい。それと共同のリビングキッチンがある。俺の部屋は、白を基調としたこじんまりとしたワンルームの部屋に、電子レンジや冷蔵庫にテレビやシンプルなベッド、テーブルが置かれていた。

「家具とかも備え付けのものは自由に使ってもらって良いからね。でも、一つ注意事項で壁が少し薄くて音が聞こえやすいことがあるから、掃除機とか洗濯とかは気をつけてね」
「わかりました」
「じゃぁ何かわからないこととかあったら、呼んでもらうか、この意見箱に書いてくれたら対応するから~」
「はい、色々とありがとうございます」
「うん、じゃぁそろそろ部屋に戻るね~。それと些細なものだけど、入居祝いにどうぞ~」
「ありがとうございます」
晃さんからは、地元の北海道土産を受け取った。
部屋に着いて、荷解きをしてそれぞれの場所に置き、部屋の掃除をして、ネットで足りない家具や調理器具などを注文していく。
その時、とあるネットニュースの通知が入ってきた。

《SNSで話題!女装男子にインタビュー!》という記事だった。
通知を削除しようとしたら、間違えて開けてしまってたらしい。
見てみると、"華蜜"という名前で活動している、肌も白く華奢でメイクをして着飾った、綺麗な女性のような写真が掲載されていた。
これが男……?
そう思うほどに信じられなかった。
目の下にあるほくろがとても印象的で、思わず目を奪われてしまう。
普段ネットニュースなんか見ないのに、その記事だけは、なぜか全部読み終えてしまっていた。

スマホの時計を見るといつの間にか、夕方の4時を示していた。
俺は夕飯の買い出しに行くことにした。近くのスーパーに行き、いくつかの食材を買って帰った。
スーパーを出て帰ろうとすると、深く帽子を被りメガネをかけた綺麗な女性とすれ違った。
(もしかして、さっきネットニュースで見た、"華蜜"……?)
そう思ったのは、変装はしていたけど雰囲気がネット記事の写真とそっくりだったからだ。
でも、プライベートを邪魔してはいけないと思い、声をかけることはできなかった。
けど、なぜか帰り道が一緒だった。
いや、つけてるわけじゃないし、家もこっちだからと自分に言い聞かせて、少し距離を空けながら歩くことにした。
そうすると、俺が住んでいる同じマンションに入っていった。
しかも、エレベーターが俺が住んでいる階に上がって行った。
(え……?もしかして、住んでるところ同じってことはないよな?)
俺も続いてエレベーターに乗ると、"華蜜"らしい人は見えなくなっていた。
やっぱり、見間違いか。同じルームメイトかもしれないと少し期待をしていた自分と、安心した自分がいて、なぜか複雑な感情だった。
ドアを開けて、荷物を置き、買ってきた食材を冷蔵庫に入れて、シャワーを浴びた。自分の部屋のパソコンでNetflixを見ながら、買ってきた冷凍食品をレンジで温めて食べることにした。
数分で食べ終わり、俺はスマホでXやインスタを眺め、俺は頭に引っかかっていたことを調べることにした。検索欄に"華蜜"と入れてみる。そうすると、本人のアカウントが見つかった。Xでは、数万人ほどのフォロワーがいた。女性らしい綺麗な格好だけでなく、コスプレや大人向けの写真も中にはあった。女性人気だけでなく、そういった面から男性からも人気があるようだった。
俺は今まで、他人のことはどうでも良かったのに、でもなぜか惹かれてしまう。こんなに他人に興味を持つのは初めてかもしれない、そう思った。
いくつか、肌が見えている写真や、胸元が見えていたり、ミニスカートなど足が見えるような服装の写真もあった。
(これ、やばいかも……全然ありかもしれないと思った。ただの女装をした男なのに……)
最近、仕事が忙しいのもあって、一人でしていないことを思い出した。
スウェットの中に手を入れようとした。

「んんっ……はぁはぁ……」
その時、どこからか声がした。俺でもないし、テレビからでもない。
(もしかして、隣から……?でも、晃さんじゃない気がする……)
その声は、吐息が混じった上ずった声で、変に色気があった。俺はその声を聞いて、抑えられない気持ちに拍車がかかる。
その声に合わせるように、俺はいつものように自分の気持ちいいところを上下に擦った。
さっきのSNSの写真が頭を掠める。俺は、あの"華蜜"で抜いてるのか……。
(あれは女の格好をしている男なのに、なんで俺こんなことしてるんだよ……隣のやつのせいだからな……会ったら文句言ってやる……)
そう思いながら、動かす手が止められない。

「んんっ……い、きそう……」
(これ、やばい……)

久しぶりで思ったよりも、手が汚れてしまった。
近くにあるティッシュを掴み、手を洗い着替えた。
(俺はなにやってるんだよ……)
そう思いながら、いつの間にか眠っていたらしい。
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