秘密のルームシェア-君の素顔を教えて-

藍沢ルイ

文字の大きさ
2 / 7

第二話 気になる彼は

しおりを挟む
次の日の朝、俺は洗濯をしようと洗濯物を持って、洗面所にある洗濯機の方へ向かった。
初めて見る顔の男とすれ違った。
(もしかして、もう一人のルームメイトの人なのかな……)

「おはようございます」
「……」

彼は少し振り向いたが、寝ぼけていたのか何も言葉を交わすこともなく、自分の部屋に向かっていった。
俺は寝ぼけていたのだろうと思い、気にせず洗濯をしようと服を入れてスイッチを押した。不意に視界に入ってきたのは、洗濯機の横に黒い服のようなものが落ちていた。

「なにこれ?」
掴んでみると、黒のフレアのついた女性用のミニスカートだった。
もしかして、さっきの男の人の彼女のものかもしれない、そう思った俺は彼の部屋の扉をノックする。

「はい」
「あの、さっき洗濯物忘れませんでしたか?」
「え……?」

少し会話を交わした後、扉が開かれた。
やっぱりさっきの男の人が出てきた。

「間違ってたらすみません。これ、忘れてませんでしたか?」
俺は洗濯機の横に落ちていた、そのスカートを手渡した。
「……すみません」
彼は、困ったような恥ずかしがっているような表情をしていた。
「いえ、それと俺は隣に引っ越してきた、北次叶太です。よろしくお願いします」
「ああ……俺は波岡充です。お願いします。じゃぁ、ありがとうございました」

そう言うと、すぐに扉が閉められた。一言文句を言ってやろうと思ったのに、言う前に扉が閉められてしまった。でも、その波岡充というルームメイトは、なぜか既視感があった。
黒髪の少し癖っ毛のような髪にメガネ、一瞬だったけど、特に目の下のほくろに見覚えがあったからだ。
あと、昨日隣から聞こえた声に少し似ていたような……。
でも、似たような人はいくらでもいるだろうし、そんなことはないと思った。

洗濯を待つ間に、昨日買った惣菜パンを温め、目玉焼きを作った。それとインスタントのコーヒー。
リビングにあるテレビを見ながら、食事を済ませていく。
その時ガチャっと扉が開かれた。

「おはよ~」
「晃さん、おはようございます」
「おいしそうなもの食べてるね~」
「ああ、この惣菜パン初めて買ったんですけど、美味しいです」
「い~な~、俺何食べようかな」
「良かったらもう一個あるんで良かったら食べますか?」
「嬉しい~、朝ごはん買いに行こうかなって思ってたんだよね、助かる~」
「トースターで焼くので、待っててください。あと、インスタントで良かったらコーヒー飲みますか?」
「うん、ありがと~」

リビングには大きめのテーブルと4席分の椅子が置いてあり、晃さんは、俺の向かいの席に座った。
このテーブルとイスは晃さんの知り合いの人がインテリア会社に勤めていて、サンプルとしてもらったらしい。薄いベージュの木目が綺麗な木造りで落ち着きのあるテーブルとイス。

「お待たせしました」
「ありがと~。いただきます」
「口に合いますか?って自分が作ったわけじゃないんですけど笑」
「おいしいよ~!いやいや、叶太君のトースターの焼き方が上手なのもあるよ!」
「晃さんって褒めるの上手いっすね笑」
「そうかな~、本当に思ったこと言っただけなんだけどな~笑」
「そういえば晃さんって、どんな仕事してるんですか?」
「フリーの不動産業かな。でも、そんな大層なものじゃなくて、前に不動産会社に勤めてたツテで、その時の知り合いの人達から、何軒か依頼されて管理してるぐらいだけどね」
「そうなんですね」
「叶太君は、フリーのサウンドクリエーターだっけ?」
「そうです、曲も作ったりもしますけど、例えばCMのBGMとか作ってますね」
「そうなんだ~、すごいね!音楽関係の仕事するようになったきっかけとかってあるの?」
「大した理由はないんですけど、学生の時から音楽が好きで、あとインドアなんで一人で家でできる仕事がいいなって」
「僕もインドアだからわかる~!笑」
「そうなんですね笑」
「うん。あと朝早いのとかも苦手だから笑」
「わかります、一緒っすね」

不意にテレビで、昨日見たネットニュースが流れてきた。

「晃さんって、この華蜜って人知ってますか?」
「え……?あんまり知らないかな~。SNSとか疎くて」
「そうなんですね~」
(今、変な間があったよな……?気になるけど、知らないって言ってるし、気のせいか)
「叶太君は知ってる?」
「いや、詳しくは知らないんですけど、何となくルームメイトの波岡さんに似てません?」
「叶太君、充君に会ったんだね。でも、充君がその人と似てる、かな……?わかんないや」
(やっぱりなんか引っかかる言い方が気になるけど、聞いていいのかがわからない)
「変なこと言ってすみません。俺、洗濯してたの思い出したんで、干してきます。ゆっくり食べててくださいね」
「うん、ありがとう~」

俺は、食器を洗って片付けた後、洗濯物を取り入れて部屋に戻った。
さっきのことは、聞かない方が良かったのか……でも、まあ人のプライベートなことを他の人に聞くのは良くなかったのか……。そんなことを考えながら洗濯物を干していく。洗濯物を干し終えた後、パソコンを開き仕事を始めた。

「晃さん、おはようございます」
「充君、おはよ~」
食器を洗って片付けていると、さっきまで話してた彼がリビングに入ってきた。
僕は充君の秘密を知っているけど、口外しないでほしいと彼から頼まれていて、どうしても叶太君にはそのことを話せなかった。でもおそらく気づき始めていると思う。

「今日は仕事休みなの?」
「はい、久しぶりに日曜休みな気がします」
「そうなんだ、いつもお疲れさまだね~」
「ありがとうございます。土日は休みなはずなんですけど、トラブルがあれば駆り出されるし、休みなんてあってないような気がします……」
「大変だね……でもたしかにシステムって動かなくなったら、お店回らなくなっちゃうからね。重要な仕事なんだろうなと思うよ」
「ですかね~……」

そう言って、充は冷蔵庫からヨーグルトを取り出し、食べ始めた。

「じゃぁ、僕部屋戻るね~。今日はせっかくの休みだし、ゆっくり休みなよ~」
「はい、ありがとうございます」

俺達はそれぞれの一日を過ごして、その日は顔を合わせることはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

これは恋でないので

鈴川真白
BL
そばにいたい ――この気持ちは、恋であったらダメだ アイドルオタクな後輩 × マスクで素顔を隠す先輩

闇に咲く花~王を愛した少年~

めぐみ
BL
―暗闇に咲き誇る花となり、その美しき毒で若き王を  虜にするのだ-   国を揺るがす恐ろしき陰謀の幕が今、あがろうとしている。 都漢陽の色町には大見世、小見世、様々な遊廓がひしめいている。 その中で中規模どころの見世翠月楼は客筋もよく美女揃いで知られて いるが、実は彼女たちは、どこまでも女にしか見えない男である。  しかし、翠月楼が男娼を置いているというのはあくまでも噂にすぎず、男色趣味のある貴族や豪商が衆道を隠すためには良い隠れ蓑であり恰好の遊び場所となっている。  翠月楼の女将秘蔵っ子翠玉もまた美少女にしか見えない美少年だ。  ある夜、翠月楼の二階の奥まった室で、翠玉は初めて客を迎えた。  翠月を水揚げするために訪れたとばかり思いきや、彼は翠玉に恐ろしい企みを持ちかける-。  はるかな朝鮮王朝時代の韓国を舞台にくりひげられる少年の純愛物語。

愛を知らずに愛を乞う

藤沢ひろみ
BL
「いつものように、小鳥みたいに囀ってみよ―――」  男遊郭で、攻トップとして人気を誇ってきた那岐。 ついに身請けされ連れて行かれた先で待っていたのは――― 少し意地の悪い王子様の愛人として、抱かれる日々でした。  現代用語も気にせず使う、和洋ごちゃ混ぜファンタジー。女性の愛人も登場します(絡みなし) (この作品は、個人サイト【 zerycook 】に掲載済の作品です)

拾った犬は、魔神様でした。

墨尽(ぼくじん)
BL
※ あらすじの後の注意書きを、ご一読いただけると幸いです。 □あらすじ□ 魔獣を狩り素材を売って生活をしているエリトは、森で傷ついた黒い犬を拾う 愛情たっぷりに看護するが、何となくその犬は人間味に溢れている 実はその犬は、魔神が擬態した姿だった 溺愛系甘々魔神様と、天然不憫なエリトとの恋のお話 =========== 注意書き ※このお話は「冷酷非道な魔神様は、捌き屋に全てを捧げる」(完結済み)の前日譚です。   「冷酷非道な~」の時代より、数百年前のお話です。 〇 このお話単体で読んでも、楽しめる仕様となっております(悲恋ですが…) 〇 「冷酷非道~」を読んでいる途中の方が当作品を読んでも、本編のネタバレにはなりません 〇  先にこの作品を読んで、後から本編を読んでも、支障はありません   (この場合、「冷酷非道」が続編といった形になります) 本編に入れる筈だった前日譚ですが、少し長くなりそうなので別のお話として分けました 単体でも読めるように改稿しましたので、本編を読んでいない方も楽しめると思います ※昔クラーリオが愛したエリトとのお話です  本編のエリトとの関係性や違いを考えながら読むのも、楽しいかもしれません ※本編(冷酷非道~)はハッピーエンドですが、当作品は悲恋です ※一応長編に設定していますが、そんなに長くはならない予定です 本編も並行して更新します→完結しました!

野良は拾っちゃいけません~溺愛王子とヤンキー子羊~

トモモト ヨシユキ
BL
拾ったヤングホームレスに餌付けしたら溺愛されてます。 エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

治癒術師エルネスト・ユルフェの800の嘘

ばつ森⚡️8/22新刊
BL
【登場人物全員嘘つき⁉︎】 王都の片隅で小さな治療院を営むエルネストには――秘密がある。 とある男への復讐のため、平民の身分を隠し貴族のふりをして夜会へと出かけているのだ。 しかし、ルキシア大公国からの賓客である騎士ソアンに正体がバレて、なぜか興味を持たれてしまって……? 【執着攻め×強気受け】 ♡スカッと爽快ハピエン保証♡

塔の上のカミーユ~幽囚の王子は亜人の国で愛される~【本編完結】

蕾白
BL
国境近くにあるその白い石の塔には一人の美しい姫君が幽閉されている。 けれど、幽閉されていたのはある事情から王女として育てられたカミーユ王子だった。彼は父王の罪によって十三年間を塔の中で過ごしてきた。 そんな彼の前に一人の男、冒険者のアレクが現れる。 自分の世界を変えてくれるアレクにカミーユは心惹かれていくけれど、彼の不安定な立場を危うくする事態が近づいてきていた……というお話になります。 2024/4/22 完結しました。ありがとうございました。 

この愛を選びたい

すずかけあおい
BL
ブラック企業から逃げたい大夢は、問題を起こせば強制的に退職になるのでは、と考えてSNSで見つけた怪盗アシスタントの募集に応募する。怪盗シマエナガこと長登に世話になる中で常和と出会い、話を聞くうちに懐かれる。 〔攻め〕日賀野 常和(ひがの ときわ)25歳 〔受け〕渡利 大夢(わたり ひろむ)27歳

処理中です...