ラストスパート

ひゅん

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公務員住宅

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 それから数日後の日曜日に、藤浪は星崎の自宅に行くことになった。この頃になるとすっかりクラスメイトとも打ち解けて、たくさんの友達ができた。
 星崎の家には藤浪の他、クラスメイト三人と共に訪れた。星崎の家は藤浪の自宅から二キロほど離れた駅北の公務員専用の住宅だった。
 公務員住宅は広い敷地のなかにあって、敷地の真ん中には大きな公園があり、それを取り囲む形でいくつもの大きなマンションが連なっていた。
 星崎の自宅は二〇号塔という建物の七階であり、そこまで歩くのに入って来たところから五分程歩いた。公務員住宅の敷地には至る所に木が植わっていて、栗の木やドングリの実などが落ちているどこかエキゾチックな趣きのある林を抜けていった。幼い藤浪はそれを見て森がある、と口にした。
 空は限りなく果てしなかった。
 子供たちは口々に見たもの発見したものを報告しあった「あ、ザリガニだ」「椎の実が落ちている」「すげーでかいトカゲがいる」などと言い合いながらこの敷地にある自然をさも珍しそうに見ながら歩いた。いつもと違う風景に子供たちは気分を高揚させていた。ぜ」と佐野という少年が言うと、少年たちは口々に星崎を褒め称えた。少年にとって大きな集合住宅の一棟は摩天楼が如く立派に聳え立つ建物のように映ったのだろう。藤波も単純に感動した。
 官舎の入り口はオートロックになっており、厳重なセキュリティーがされていた。マンションの七階に降り立った少年たちは相変わらず意気揚々としていたが、星崎は平然としていた。それを藤波が見て星崎の存在は、大きな岩のように自然にあるのだと思った。
 星崎の暮らすマンションの七〇七号室の前に立って星崎が鍵を開けると中からその家独特の匂いがした。玄関に入って藤波は、あんなにも広大なマンション群のたった一室がこのようになっているのかとただ感心した。
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