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二
星崎の父親の話
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「真一が世話になってるね」と彼のお父さんが口を開くと子供たちは畏まってこの大人に注目した。
「今日はどうもありがとう」と一言付け加えてから講話が始まった。
「君たちはこの世の中心はどこにあると思う?」
まずお父さんは、このような質問を子供に投げかけた。子供たちは顔を見合わせて困惑しながらもこの命題について考えを巡らせてみた。答えが中々出てこず、しばらく沈黙が続いた。
「難しいかな?」
「地球だと思います」と恐々藤浪は答えた。すると山崎という少年が「違うよ。太陽だよ」と藤浪の意見を否定した。
たぶん「中心はないと思うよ」と星崎が口にした。
「そうだね、みんな正解だ」
お父さんが柔かにそれぞれの意見を肯定すると子供たちは安心した表情を見せて大人の次の言葉を待った。
「いいかい、宇宙にはいくつもの星があって中心はないんだ。だけど、他の言い方をすれば中心はそれぞれが中心だとも言える」
藤浪は息を飲んでお父さんの話を聞いていた。それはまるでこの世界の秘密を覗き込んでいるかのような気持ちになった。
「君たちの中心は君たち自身なんだよ。そして君たちの目の前には大きな空があってその先には宇宙空間が広がっている。想像しごらん、その大きさを」
子供たちは黙って宇宙というものの広大さを想像した。藤浪は想像しながらその大きさを怖いと思った。
「さあ、君たちは今ここにいる。広大な宇宙の片隅にあるこの部屋に。君たちの目の前には誰がいる? 何がある?」
子供たちは口々に「友達がいます!」とか「絵があります」とか「本と本棚があります」とか言いあった。
「そう、今の目の前にあるものは全て君たちに関係しているね。君たちの中心は自分だ。だから自分を優先して考えてもいいんだ。ただ君たちの周りにはそれぞれ中心を持った物や人やその他の生き物が存在している。そのことを決して忘れてはいけないよ」
客観的な側面を小学三年生が有するにはまだ幼いが、それを頭で考えさせることはできる。もちろんそれは他人の立場に立って倫理を植え付けるという方法もあるが、星崎の父親は初めに倫理を植え付けるようなことはしなかった。宇宙空間を想像させてから視点を自分に戻し、更に他のものを子供たちに想像させた。
「君たちは自由なんだけど、自由というものがわかるかな?」
子供たちはまた沈黙した。やはり十歳かそこらの子供には少し難しい質問だったが、子供たちは一生懸命に考え想像して、意見を持とうとした。
その後沈黙が続いた。お父さんは子供たちが口を開くまで根気よく待っていた。そしてある一定の時間が経つと徐に口を開いた。
「自由ってのはね、君たちが思うことは全て起こりえることなんだ。どういうことかというとね、人を傷つけようとすれば人を傷つけられるし、人を喜ばせようとすれば人を喜ばせることもできる。君たちの想像したことってのは本当のことになるということなんだ」
はっきり言って、ここに至って子供たちは大人のいうことについてこれなくなってしまった。難しくてよくわからないのだ。
「難しいとは思うけど、もう少し言うよ。怖いこと恐ろしいことを想像したことがあるかい?」
子供たちは黙って考えていた。考えながら聞いていたので、声を出すことを子供たちは忘れていた。
「今朝の殺人事件のニュースを見たかい?」
昨日から子供の頭部を親のところへ送りつけてきたというニュースがテレビや新聞で取り上げられていた。それを子供たちは思い出した。
「見ました」と子供たちは口々に言った。
「それについていろいろな想像をした?」
「しました」と藤浪は言った。
「君が思ったことは全て現実に起こることなんだ」
藤浪は怖くなって震えた。
「君たちが想像しうることは現実に起こるかもしれないことなんだよ。それが自由であり、それが人間なんだ。いいかい? 君たちは宇宙空間を思い浮かべて、すべての物や生き物に中心があることを忘れてはいけないよ」
「今日はどうもありがとう」と一言付け加えてから講話が始まった。
「君たちはこの世の中心はどこにあると思う?」
まずお父さんは、このような質問を子供に投げかけた。子供たちは顔を見合わせて困惑しながらもこの命題について考えを巡らせてみた。答えが中々出てこず、しばらく沈黙が続いた。
「難しいかな?」
「地球だと思います」と恐々藤浪は答えた。すると山崎という少年が「違うよ。太陽だよ」と藤浪の意見を否定した。
たぶん「中心はないと思うよ」と星崎が口にした。
「そうだね、みんな正解だ」
お父さんが柔かにそれぞれの意見を肯定すると子供たちは安心した表情を見せて大人の次の言葉を待った。
「いいかい、宇宙にはいくつもの星があって中心はないんだ。だけど、他の言い方をすれば中心はそれぞれが中心だとも言える」
藤浪は息を飲んでお父さんの話を聞いていた。それはまるでこの世界の秘密を覗き込んでいるかのような気持ちになった。
「君たちの中心は君たち自身なんだよ。そして君たちの目の前には大きな空があってその先には宇宙空間が広がっている。想像しごらん、その大きさを」
子供たちは黙って宇宙というものの広大さを想像した。藤浪は想像しながらその大きさを怖いと思った。
「さあ、君たちは今ここにいる。広大な宇宙の片隅にあるこの部屋に。君たちの目の前には誰がいる? 何がある?」
子供たちは口々に「友達がいます!」とか「絵があります」とか「本と本棚があります」とか言いあった。
「そう、今の目の前にあるものは全て君たちに関係しているね。君たちの中心は自分だ。だから自分を優先して考えてもいいんだ。ただ君たちの周りにはそれぞれ中心を持った物や人やその他の生き物が存在している。そのことを決して忘れてはいけないよ」
客観的な側面を小学三年生が有するにはまだ幼いが、それを頭で考えさせることはできる。もちろんそれは他人の立場に立って倫理を植え付けるという方法もあるが、星崎の父親は初めに倫理を植え付けるようなことはしなかった。宇宙空間を想像させてから視点を自分に戻し、更に他のものを子供たちに想像させた。
「君たちは自由なんだけど、自由というものがわかるかな?」
子供たちはまた沈黙した。やはり十歳かそこらの子供には少し難しい質問だったが、子供たちは一生懸命に考え想像して、意見を持とうとした。
その後沈黙が続いた。お父さんは子供たちが口を開くまで根気よく待っていた。そしてある一定の時間が経つと徐に口を開いた。
「自由ってのはね、君たちが思うことは全て起こりえることなんだ。どういうことかというとね、人を傷つけようとすれば人を傷つけられるし、人を喜ばせようとすれば人を喜ばせることもできる。君たちの想像したことってのは本当のことになるということなんだ」
はっきり言って、ここに至って子供たちは大人のいうことについてこれなくなってしまった。難しくてよくわからないのだ。
「難しいとは思うけど、もう少し言うよ。怖いこと恐ろしいことを想像したことがあるかい?」
子供たちは黙って考えていた。考えながら聞いていたので、声を出すことを子供たちは忘れていた。
「今朝の殺人事件のニュースを見たかい?」
昨日から子供の頭部を親のところへ送りつけてきたというニュースがテレビや新聞で取り上げられていた。それを子供たちは思い出した。
「見ました」と子供たちは口々に言った。
「それについていろいろな想像をした?」
「しました」と藤浪は言った。
「君が思ったことは全て現実に起こることなんだ」
藤浪は怖くなって震えた。
「君たちが想像しうることは現実に起こるかもしれないことなんだよ。それが自由であり、それが人間なんだ。いいかい? 君たちは宇宙空間を思い浮かべて、すべての物や生き物に中心があることを忘れてはいけないよ」
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