黒蛇男

zubro909

文字の大きさ
21 / 95
3. 龍太を殺す

3. 龍太を殺す (2)

しおりを挟む
「あいつ、馬鹿だな」

剛は、幼馴染で親密な気持ちがある葵がヤクザと付き合っていることにホトホト呆れた。

元々葵が柄が悪い男が好きなのはわかっていたが、筋が通った喧嘩好きと、お金で殺人や暴力を行う人間との違いもわからないのか。

剛は冷淡に「馬鹿同士で勝手に死ねばいい」と思った。

だが、剛は、ヤクザだろうが何だろうが、女に手を上げる男は許せなかった。

正義を通したいという感覚ではなかった。実際は「弱者を虐める強者を殺してやりたい」という殺戮の欲望だった。その欲望のためには、一人で自分の身をリスクに晒す事に迷いや恐怖はなかった。むしろ殺戮の欲望に駆られ、興奮を止められなくなってしまうのだった。

この点が、凡庸な剛の不思議とユニークな点だった。

剛は毅に聴いた。毅は昔からサッカーや勉強に忙しかったが、なぜか情報通だったからだ。

「何ていう奴なの?そいつ」

「龍太。185cm位あっていかつくて、俺らの4個上らしいよ。中学でレスリングで全国優勝していて、地下格闘技のチャンピオンらしいよ。和彫入れてて、いっつも吾郎とかいう手下を連れているらしい」

「お前、よく知ってんね」
「この街で、赤川組と東日連合と揉めたら、終わりだぞ。下手に揉めたくないから、俺は情報を集めてるんだ」

剛が住む藤川市は、東京都と横浜市の中間だ。両都市は大規模過ぎて、定期的に大規模な暴力団排除活動が入った。藤川市はその隠れ蓑として長く機能して来た歴史があり、覚醒剤と売春の大きな利権があった。

藤川市の住民は昔から「清濁飲み込む」という言葉に逃げ込んでいた。だが、ただ単純に怯え、憧れ、服従して過ごしていた。剛は昔から、この藤川氏の住民の小賢しい敗者のスタイルに辟易していた。

「ふーん。俺は、本当に強い奴が女子供に手を上げるとは思わんけどな」

幼馴染の葵がヤクザに暴力を振るわれている。

剛はそれに対して「はい、そうですか」「相手がヤクザならしょうがないですね」という性格ではなかった。

(どこかのタイミングで必ず龍太を殺してやる)

(一個人としての強さも、バックの強さも久しぶりに刺激がある奴が出て来たな)

剛は洋介以来のターゲットを定めた。

中学2年になった剛は、自分が小学6年の頃にヤクザである洋介と対決し、脳に損傷を加えて植物人間にし、空手道場に晒した。

その後もずっと格闘技や殺人術の鍛錬は続け、大人も含め、多様な強者と喧嘩をして来た。プロの格闘家に暗闇で襲撃され、半殺しにされた事もあった。

だが、洋介を植物人間した殺戮の時に感じた興奮。脳の奥からドーパミンが噴出し、湧きだした液体が黒蛇になって自分の脳を嘗め回し、蠢く感覚は感じられなかった。

この日から剛はずっと、洋介を残虐に殺す事ばかり考えるようになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

世界の終わりにキミと

フロイライン
エッセイ・ノンフィクション
毎日を惰性で生きる桐野渚は、高級クラブの黒服を生業としていた。 そんなある日、驚くほどの美女ヒカルが入店してくる。 しかし、ヒカルは影のある女性で、彼女の見た目と内面のギャップに、いつしか桐野は惹かれていくが…

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...