安全第一異世界生活

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番外編・それぞれの日々

番外編 薬師ノンナとコーくんの思い出

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ぺんぺん、うちの土で汚れた膝を叩いて土を落としてくれた小さな小さな男の子。
黒い髪に奇麗な紫の瞳、ぷくぷくほっぺに、モミジみたいな小さな手。だけどその容姿とは裏腹に出てくる言葉は流暢で、実に雄々しい言葉使い。

「女よ、我はカナメの従魔、コクトという。好きに呼べ」

「え…えっと」

困惑したうちに、クロト師匠は『コー』と、カナメちゃんが『コーくん』と呼んでいると教えてくれたので、うちもコーくんと呼ばせてもらう事になった。
イヤイヤ!!そうじゃない!!一番困惑しているのは呼び名ではなく、従魔という紹介なんだけど!!そこはみんなスルーなの?うちは皆の顔を見て、皆優しそうな顔でニコニコしている…ニコニコニコニコ……
うちも皆さんに向き合ってにっこり笑み、一番の困惑発言は笑顔の下で、あえてスルーした。まあいいよね。コーくんは可愛いし、優しいし、私の癒し!!可愛いは正義!癒しは酸素!そうだよね!そう!そう言う事で良いよね。

クロト師匠の所でまずは私のポーションを使った水分補給ポーションの実用化を研究し始めて、その間に師匠は小さな商会を立ち上げ、後ろ盾に、錬金ギルドと冒険者ギルドを付け、王都近郊で大きな領地をもっている伯爵様の後ろ盾を得ていた。それを手助けしたのが、ニコニコ5歳児のカナメちゃん。彼女は書類をまとめ、提出用に処理をしていく。幼い彼女がどうしてそういう事が出来るのか困惑し通しだった。そうして気が付いた時には、実家の男爵家の経済状況が改善して、一番上の兄の婚約が決まった。
――――すべてにおいてうちの周りが目まぐるしく変わっていく。うちはその周りの変化に遅れないように必死にもがいていた―――ある日、

「ノンナよ、集中するのは判るが無理をする出ない」

うちの目の前の作業台の上に見たことも無い飾り付けられたおやつが2個置いてあった。目線を正面に向けるとそのうちの1個を前にスプーンをもってこちらを見ているコーくん…
え?いつの間に?

「ほら、一緒に特別なおやつを食おうではないか」

「特別?」

早く早くとコーくんにせっつかれ、うちが作業台からおやつ以外を片付けて椅子に座ると、「いただきます」とあいさつしたコーくんが、嬉しそうにスプーンをおやつに近づけてプルルンとしたものをすくった。黄色いプルンとしたものの上に焦げ茶色のソースが垂れていて、さらにその上をクリームとフルーツで飾り付けていた。華やかで可愛いそのおやつをコーくんは一口を口に含むと幸せそうに頬を紅潮させた。

「美味しい?」

その幸せそうな顔を見て、つい聞いてしまったうちに、ニッコリ笑って頷いてくれた。

「これはカナメ特製”プリンアラモード”というおやつでな、我がこの家の家族になるきっかけのおやつなのだ。ノンナも食べてみるがいい」

そう聞いてうちは、そわそわした面持ちでプルルンと揺れる黄色い層にスプーンを当ててすくった。柔らかであたたかい色合いのそれを口に入れた瞬間目を見開いた。口当たりの優しいそれは、口内に広がり口の中で溶ける様になくなった。残った甘さの余韻にもうっとりしてしまう。

「おいしい」

そう無意識に言葉を紡いだ私に、満面の笑顔でコーくんは「そうであろう。そうであろう」と嬉しそうにうなずいてくれた。その姿にコーくんの好物なんだと理解した。
一緒に笑顔で食べながら、コーくんはポツリ、ポツリと思い出すように語りだした。

「我はずっと一人で山と山に挟まれた湖のほとりに住んで居ったのだがな、たまに人が来ては我を邪魔者扱いしよった。その者よりずっと昔からそこに住んでいる我に出て行けと、我は半ば意地になってそこから動かなかったんだ。」

幼児の姿のコーくんの語りだした内容があまりにも、今の姿と同一とは思えず首をかしげながら続きを聞いていく。

「次第に我が住む湖のすぐそばまで砂漠が広がり、気が付けば国が出来、何度も攻撃を受けた。
…でもな、たまに面白い奴も来る事があったんじゃ。我と一緒に飯を食う輩も居ったし、親に捨てられた者も居った。そういう者達は我を邪険に扱わず、笑ってくれた。だから我は人間が嫌いになれなんだ」

幼い姿でそう語るコーくんが、やはり普通の人間ではないのだと、うちは改めて思った。
――けれど、なぜその湖を離れ、今ここにいるのか。どうしても聞きたくなってしまった。

「コーくんは…どうして、この家に居るの?」

言った瞬間、しまったと思った。失礼だったかもしれない、と口をつぐもうとしたところに、コーくんはあっさりと笑って答えた。

「――飯が美味かった」

「め、めし…?」

「そうじゃ。まったくの、クロトは肉の焼ける匂いで我を誘き寄せ、カナメの飯を振る舞ったのじゃ。クロトもカナメもウハハも皆、笑って受け入れてくれた。あの温かさに触れて、共に居たいと思った。我は従魔という形を選んだだけじゃ」

そしてこちらをまっすぐ見つめて言った。

「ノンナよ、ここに居る者は皆そういう者達だ。だから焦らずともよい。安心しておればいい」

その声は穏やかで、胸の奥に染みるようだった。
そして彼は幼い顔でにかっと笑い、両手を広げて続けた。

「不安なときは一緒におやつを食おうぞ。こうして顔を突き合わせ、共に味わう甘味は格別じゃろ?」

その幼児に見えない懐の広さに、うちの焦りや、不安を受け止めてもらえたみたいで心が温かくなった―――人間じゃなくても良い。うちにとっては、優しい優しい幼児のコーくんだもの。

「コーくん…ありがとう。おやつ一緒に食べようね」

うちの言葉に、コーくんは目を細め優しく、慈しむかのように微笑み

「よしよし、良い子だ」

そう言った彼は、まるで神様のような慈悲深い表情で笑っていた。
しかし感動した直後、うちの脳内で、いや!コーくんは神と言うより天使やろ!!天使万歳!!コーくんは我が推しなりと脳内で突っ込み入れたり、コーくんフィーバーに陥った事は墓場まで内緒にしておきたい秘密だ。

それから、仕事が立て込むと、コーくんがエプロン付けて、可愛らしい姿で甘いお菓子をもってお茶に誘ってくれるようになった。癒しタイム爆誕である。

逆にコーくんとお茶がしたくて仕事頑張るようになったっていう。ただ頑張りすぎると強制休暇を取らされるのでさじ加減が難し。コーくんという推しに毎日会えるように、仕事を頑張るのが、一番の難題になっている。
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