安全第一異世界生活

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番外編・それぞれの日々

210話 番外編 異世界で山田夫妻は新婚旅行に行きたい!(聖女視点)

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「え?新婚旅行に、カナちゃんに会いに行きたいの?」

ビックリする私の声は書類が散乱する室内に響いた。
私の言葉に真剣な顔をして山田君とミホは頷いた。
仕事終わりに大切な話があると言われ、ミホだけじゃなく山田君も一緒に来たから何事かと思えば…そうか、この二人は先週結婚の届けを出して夫婦になったのよね。
どうやら新婚旅行に行くのなら同じ転生者に会いに行きたいと言う事みたい。

「そうね、カナメちゃん親子ね、この前の旅行から辺境に帰ったら、お仕事いっぱい溜まっていたらしくて、次に王都に来るのは、新王の戴冠式で来ると言う事らしいのよね。まだ半年くらい先だからいい機会かもしれないわね~」

私がそう言うと、二人はとても嬉しそうな顔をした。しかし次に私の口から出た言葉に二人は笑顔のまま固まった。

「せっかくだから聖女修行の成果も発揮していくつか町や村の問題解決に、回ってきて欲しいわ」

そう、私はニッコリと満面の笑顔で二人に言ったのだった。

後日二人は、宰相に呼び出され任命書を渡される。宰相執務室にはなぜか宰相と私だけではなく、ルクレチア殿下と、護衛のシールド、側近のニコライも揃って、計5人が応接ソファに腰掛けて二人にニコニコ指示書を渡す。

『宰相執務室付き文官 バートン・ヤマダ(山田 力輝/ヤマダ・リキ)
聖女見習い ミホ・ヤマダ(曽根 ミホ/ソネ・ミホ)
上記二名を、ルクレチア殿下の使者として任命する。
両名は、春の新王戴冠式において、A級冒険者クロトおよびその娘カナメの参列を希望し、これを要請する任を負うものとする。』

任命書を読んだ二人は困った顔をしながら、

「仕事ですか―――アタシら普通に旅行のつもりだったのに――」

ミホのその言葉に室内に居る皆が苦笑する。私もクスクス笑いながら二人に伝える。

「ここは日本とは違うのよ」

「知ってますけど――」

ミホは納得がいかないと頬を膨らませる。その姿に呆れながらこの世界の常識を伝えていく。

「ただの旅行とか一般人はまずしないわ。
そうね、する時は護衛を雇って街から街へ移動したり、小隊を組んだり大変なのよ。この世界には平気でモンスターも盗賊も出るの。」

「盗賊…」

ヤマダ君は盗賊と聞いて考え込んでミホの方を見た。

「モンスターはしょうがないにしろ、国からの使者を表す紋章の入った馬車を出すから、それを襲う盗賊は居ないわよ。これで一つの脅威は防げるでしょ。」

「紋章付きの馬車…」

「新婚旅行なら二人きりが良いかなって配慮なんだけど?いやなら護衛を付ける?」

私の言葉に二人は即座に返事をした。

「いえ。その任命ありがたく頂戴いたします」
「護衛要らない。いつでもどこでもラブラブ出来ないの嫌―――」

二人の返事に部屋に居る皆はまたも苦笑を漏らす。

「クロト氏にカナメ嬢には失礼のないようにお願いする。彼らは私たちの恩人なんだよ」

ルクレチア殿下の穏やかな声音に山田君は腰を折り

「拝命いたします」

と答えた。山田君の突然の変化に「え――」と不満げなミホに言う。

「あら、そんなに任命されるのが嫌なら教会から使節団でも組織しようかしら?彼らは聖女には厳しいわよ?」

「いえ!任命ありがたく受けます!受けさせていただきます!!」

やけくその様にミホの叫び声が上がった。その声は部屋に響き、先ほどまで笑いをこらえていた皆はとうとう堪え切れず声を出して笑った。

いつも静かな宰相の執務室はこの日部屋の外にまで聞こえる笑い声で溢れかえっていた。その笑い声を聞いた城の皆の噂の的になっていたという。のちに宰相が笑いながら教えてくれた。フフフこんな事が噂になるなんてと笑いながら、ずいぶん平和になった城内に安堵の息が漏れた。

***

数日後、使者としての任務を受けた山田夫妻は、クロト親子への皆からのお土産を、収納カバン数個分も預かり、馬車に乗り込んだ。

けれど――その旅立ちが、ただの新婚旅行で終わらないことを、
その時の二人はまだ知らなかった。
行く先々で出会う人々、巻き込まれる騒動、そして彼らと同じ“異世界からの渡り人”たち。
それらはまるで糸のように絡み合い、やがてひとつの大きな結び目を形作っていく。
そんな未来に待つ出来事など知る由もなく、
浮かれる二人は笑顔で王都を後にしたのだった。
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