246 / 247
”乙女ゲーム”の崩壊した国
245話 蠢く悪意④ (フェリシア視点)
しおりを挟む
お姉さまが邸宅から居なくなった。
といっても、居場所は分かっている。
大公家が出資している療養所だそうだ。
昨日急に大公閣下が朝早く我が家に早馬を飛ばし、
お義姉様に会いに来たのだ。
私には、興味が全くないと言わんばかりに急いで
お姉さまの元に向かった大公様の背中を見て、
ギリリと奥歯を噛んだ。
暫くすると、シーツにくるまれたお義姉様は護衛に抱えられ出てきた。
お父様も抗議の声を上げたが、お姉さまの貧相な状態や体の傷を言われ、
両親ともに口ごもり、そのまま連れていかれた。
抱えられ連れていかれるお義姉様の姿を私は睨むように見つめていた。
大公様は声に威厳でも込めているかのように、静かだけど一節一節重々しい声を私たち一家に投げかける。
「アセット家の、愛し子にしていた事、精霊の泉の管理者、精霊王様はご存知だ」
お父様も、お母様も大公様の怒りに冷や汗をかいている。 それでもお父様は反論を口にする。
「我々の行いは、その精霊王様の為ではございませんか!」
精霊の愛し子は毎日の浄化の祈りをしないといけない。
それなのに、大公様は何を言っているの?
「お前のもう一人の娘は、頬もふっくらしていて健康そのものだ。
さぞかし良いものを食べているんだろうな―――公爵」
「!!」
私はとっさに声が出そうになったが、大公様の鋭い眼差しに射抜かれ口を閉じ、ドレスを皺ができるほど握りしめた。
そして大公様は、お父様をぎろりと睨み、静かな声でゆっくりと私たちに言った。
「私が言いたいこともお前は判らぬのか」
その言葉は、反論した時点でお前たちの立場は無くなる。
そう断言するものだと、私達家族はようやく悟った。
「神託通り彼女はアセット家から籍を抜き、国外に療養に出す。」
大公様の言葉にお父様は驚き、顔を上げた。
「これは、この国をまとめる者としての言葉だ。
アセット公爵、異論は許さぬ。よいな」
「か、しこまり…ました。」
お父様も何も言えず、了承するしかなかった。
お義姉様なんて、神の御許にでも、どこにでも、行けばいいのよ。
浄化が使えなくなったのでしょう?
じゃあ、あんな役立たずな女必要ない。
大公様だって、ディディー様が私の方が良いって言ってくれていることを知らないんだわ。
ディディー様も言いにくいわよね。
婚約者の妹が好きなんて…
でも大公様、諦めて。
貴方の息子は私にメロメロなの
そう、ヒロインは私なの
その時の私は、まだこれが国の存亡にかかわる大事だなどと考えてはいなかった。だから、ディディー様との逢瀬の時間にあんなことを考え付いたのだ。
10日ほどして城で大々的なパーティーが開かれる事になった。
表向きは豊穣の祝いの夜会。
実際は愛し子が国を出る事が、発表される夜会だという。
夜会が終わるとすぐに公爵家から籍を抜くお義姉様の為
お父様が大公様に娘に最後のドレスをと懇願し、お義姉様にドレスを送った。
深い緑の型遅れな古いドレス。
ドレスを見た時お姉さまは涙を流し、喜んだそうだ。
あまりにも古い型なため周りは止めていたらしいが、
それは生前お義姉様のお母さまが持っていたドレスと聞いて、周りは納得し夜会にそのドレスを纏う事が決定したという。
大公家の騎士にも良い顔をしておいて良かった。
騎士からその報告を聞いて笑った。
家族に報告するとお父様も、お母様も、愚かな義姉の行為を酒の肴にクスクスと笑い、楽しい時間になった。
夜会当日、お父様が今夜の為に奮発してくれたこの国の特産シルクを、柔らかいピンクと黄色のパステルカラーに染めたドレスが、私の動きに合わせふわり、ふわりと揺れる。
このきめ細かなドレスの生地は、肌触りもよく私のお気に入りの一品だ。
「こういう美しいものこそ、私にふさわしいのよね。
お義姉様は古ぼけた苔の様なドレスがお似合いだわ。ふふふふふ」
私は上機嫌に部屋から出て玄関ホールに居るお父様や、お母様に駆けよった。
「お父様、お母様、私このドレス似合ってますか?」
駆け寄りながらくるっと一回転して見せると、シルク地の薄い生地のドレスは
内側の布が透けて、薄いピンク色と黄色い色が二重に重なり、溶け合い、
まるで温かな春の花が咲き出したかのような可憐な姿。
お父様もお母様も私の姿を見て微笑んだ。
「あぁ…まるで本当の妖精みたいだよ。これは次の愛し子はお前が選ばれるのではないか?」
「それは素敵ね」
私たち家族三人、笑いながら仲良く馬車に乗って会場に向かった。
その先に待つものが、祝福ではないとも知らずに。
といっても、居場所は分かっている。
大公家が出資している療養所だそうだ。
昨日急に大公閣下が朝早く我が家に早馬を飛ばし、
お義姉様に会いに来たのだ。
私には、興味が全くないと言わんばかりに急いで
お姉さまの元に向かった大公様の背中を見て、
ギリリと奥歯を噛んだ。
暫くすると、シーツにくるまれたお義姉様は護衛に抱えられ出てきた。
お父様も抗議の声を上げたが、お姉さまの貧相な状態や体の傷を言われ、
両親ともに口ごもり、そのまま連れていかれた。
抱えられ連れていかれるお義姉様の姿を私は睨むように見つめていた。
大公様は声に威厳でも込めているかのように、静かだけど一節一節重々しい声を私たち一家に投げかける。
「アセット家の、愛し子にしていた事、精霊の泉の管理者、精霊王様はご存知だ」
お父様も、お母様も大公様の怒りに冷や汗をかいている。 それでもお父様は反論を口にする。
「我々の行いは、その精霊王様の為ではございませんか!」
精霊の愛し子は毎日の浄化の祈りをしないといけない。
それなのに、大公様は何を言っているの?
「お前のもう一人の娘は、頬もふっくらしていて健康そのものだ。
さぞかし良いものを食べているんだろうな―――公爵」
「!!」
私はとっさに声が出そうになったが、大公様の鋭い眼差しに射抜かれ口を閉じ、ドレスを皺ができるほど握りしめた。
そして大公様は、お父様をぎろりと睨み、静かな声でゆっくりと私たちに言った。
「私が言いたいこともお前は判らぬのか」
その言葉は、反論した時点でお前たちの立場は無くなる。
そう断言するものだと、私達家族はようやく悟った。
「神託通り彼女はアセット家から籍を抜き、国外に療養に出す。」
大公様の言葉にお父様は驚き、顔を上げた。
「これは、この国をまとめる者としての言葉だ。
アセット公爵、異論は許さぬ。よいな」
「か、しこまり…ました。」
お父様も何も言えず、了承するしかなかった。
お義姉様なんて、神の御許にでも、どこにでも、行けばいいのよ。
浄化が使えなくなったのでしょう?
じゃあ、あんな役立たずな女必要ない。
大公様だって、ディディー様が私の方が良いって言ってくれていることを知らないんだわ。
ディディー様も言いにくいわよね。
婚約者の妹が好きなんて…
でも大公様、諦めて。
貴方の息子は私にメロメロなの
そう、ヒロインは私なの
その時の私は、まだこれが国の存亡にかかわる大事だなどと考えてはいなかった。だから、ディディー様との逢瀬の時間にあんなことを考え付いたのだ。
10日ほどして城で大々的なパーティーが開かれる事になった。
表向きは豊穣の祝いの夜会。
実際は愛し子が国を出る事が、発表される夜会だという。
夜会が終わるとすぐに公爵家から籍を抜くお義姉様の為
お父様が大公様に娘に最後のドレスをと懇願し、お義姉様にドレスを送った。
深い緑の型遅れな古いドレス。
ドレスを見た時お姉さまは涙を流し、喜んだそうだ。
あまりにも古い型なため周りは止めていたらしいが、
それは生前お義姉様のお母さまが持っていたドレスと聞いて、周りは納得し夜会にそのドレスを纏う事が決定したという。
大公家の騎士にも良い顔をしておいて良かった。
騎士からその報告を聞いて笑った。
家族に報告するとお父様も、お母様も、愚かな義姉の行為を酒の肴にクスクスと笑い、楽しい時間になった。
夜会当日、お父様が今夜の為に奮発してくれたこの国の特産シルクを、柔らかいピンクと黄色のパステルカラーに染めたドレスが、私の動きに合わせふわり、ふわりと揺れる。
このきめ細かなドレスの生地は、肌触りもよく私のお気に入りの一品だ。
「こういう美しいものこそ、私にふさわしいのよね。
お義姉様は古ぼけた苔の様なドレスがお似合いだわ。ふふふふふ」
私は上機嫌に部屋から出て玄関ホールに居るお父様や、お母様に駆けよった。
「お父様、お母様、私このドレス似合ってますか?」
駆け寄りながらくるっと一回転して見せると、シルク地の薄い生地のドレスは
内側の布が透けて、薄いピンク色と黄色い色が二重に重なり、溶け合い、
まるで温かな春の花が咲き出したかのような可憐な姿。
お父様もお母様も私の姿を見て微笑んだ。
「あぁ…まるで本当の妖精みたいだよ。これは次の愛し子はお前が選ばれるのではないか?」
「それは素敵ね」
私たち家族三人、笑いながら仲良く馬車に乗って会場に向かった。
その先に待つものが、祝福ではないとも知らずに。
43
あなたにおすすめの小説
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅
うみの渚
ファンタジー
ある日、目が覚めたら異世界に転生していた主人公。
裏庭で偶然出会った黒猫に魔法を教わりながら鍛錬を重ねていく。
しかし、その平穏な時間はある日を境に一変する。
これは異世界に転生した十歳の少女と黒猫メイスの冒険譚である。
よくある異世界転生ものです。
*恋愛要素はかなり薄いです。
描写は抑えていますが戦闘シーンがありますので、Rー15にしてあります。
第一章・第二章・第三章完結しました。
お気に入り登録といいねとエールありがとうございます。
執筆の励みになります。
鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~
今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。
大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。
目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。
これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。
無双の魔王と挑む異世界開拓記~スライムの大行進~
鷲原ほの
ファンタジー
これは、小さな領域の統治者としてダンジョンを自分好みに増改築する、
オニキス・サクラが仲間のスライム達を巻き込み奔走する異世界冒険譚。
そして、優雅に快適な日常生活を楽しむ魔王が世界を魅惑していく物語。
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる