安全第一異世界生活

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イルグリット王国 魔道具編

142話 トーさんの拾い癖・カナメの琴線に触れる事

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ぴちょん、ぴちょん
暗い通路に水が滴る音がする。王城からの帰りに下水道に入った。

先日消しそ損ねた通路の術式の撤去作業に来たんだが、確か入り口は鉄格子で鍵がかかっていたし、警備も複数人いたはずなのに…

「うぇぇえええええん!!わぁぁああああああんん!!ドルマーーーン!!置いてかないでぇぇーーーー!!」

子供…カナメより大きいな。なんで子供がこんな所に…俺は大泣きしている子供を少し離れたところから見る。前回きたときに怪しいと思ったあの魔所の前で泣いているが…あの時にあった違和感が無くなっている。と言う事は、そこにあった術式が消されたと見える…俺にバレたのが分かったから消したんだろうな…
それよりもこの子供なんだが…見た目がな…見慣れない格好だし、質のいい生地の服。これはあれだ。高位貴族の可能性が高い。あまり関わりたくないが…わんわん大泣きする姿が哀れで、俺は溜め息を吐いて声を掛けた。

「坊主どうした?迷子か?」

鼻を水垂らして泣いていた子供は、俺の声に気付くと目を見開いてこっちを見る。大泣きをしていた目からは先程よりも一層涙が溢れ出て来て、

「人が居る!!!」

と叫んで抱き着いてきた。そして大泣きが続く……この坊主…危なっかしいな…
わんわんしがみ付いて泣く子供は、泣き過ぎたのか全身が汗で湿っている…いつからこの子は泣いていたのか…しょうがないのでマントで包み込み、抱え上げる。

「ちょいと仕事をしないといけないから、まだ泣くなら目を瞑っていろ。まぶしいからな。抱えたままでいてやるから安心していい。わかったな?」

子供は鼻水を啜りながらコクコクと頷いて俺にしがみ付いている。あぁ…確実に鼻水が付いてんだろ、俺のマント…帰ったらウハハに洗浄魔法を掛けてもらわねーと。坊主も居るし多少音が出ても良いか…もうここ以外は撤去済みだ。暴発もしないだろう。今までは外の奴らに聞こえないようにと静かに作業してきたが、もういい。さっさと終わらせて帰ろう。俺は闇沼から闇の霧を、この区画の通路全体に濃く行き渡たらせると、すぐに彼方此方でパチパチバチバチと焚火が爆ぜるような音が彼方此方から聞こえてくる。バン!!っと一際大きな音を立てたのは、子供が居たあの怪しい場所。そこから大きな火の手が上がっているが、この位の暴発なら大丈夫だな。火は闇沼の闇によってすぐに消火された。20か所近くあったか…。思ったより残ってたな。一度闇の霧を引っ込め、念のため再度霧を満たしたが今度は何も起こらない。一息ついて坊主の顔を覗き込むと、坊主はクウクウ寝息を立てている。泣き疲れて寝たのか…一体いつから泣いていたのか。俺は溜息を吐いて坊主を抱え直し、外に出た。

宿に坊主を連れて戻って、受付でまたもお姉さんに

「迷子を見つけたんだが、泣き疲れて寝てしまってな…落ち着いたらどこに連れて行けばいい?騎士団か?自警団?わからなくてな」

「お客様…猫の次は、女の子。その次は少年って…拾いすぎでしょう?」

「放っておけなくてな…」

俺が頭をぼりぼり搔きながら苦笑いをしていると、最初に門を挟んで宿泊の受付をしてくれた爺さんがひょいっと顔を出し、

「その兄さんのには、もう1ヶ月分の部屋代は貰っているんだ。部屋が一緒で良いなら構わないよ。飯代は別途その分、貰うがな。落ち着いたら王都騎士団に連れて行くと良い。今は祭り前で迷子が沢山おるじゃろうて。ホホホ」

「親方様がそれで構わないなら…」

受付の姉さんは呆れたように溜め息を吐きながら、俺の方を見遣ると人指し指を立て、

「あまり娘さんに迷惑かけてはダメですよ!!」

「気を付けるよ。ありがとな」

俺も「カナメに怒られるかな…」と苦笑いしながら許可を貰い、坊主を部屋に連れて行こうとしたら、受付の姉さんに再び声を掛けられた。

「そうそう、娘さんから『知り合いと話すために食事処の個室を借りたのでそちらに来てくれ』って伝言されたんでした。ご案内しますね」

知り合い?俺は怪訝に思いながらも、受付の姉さんに案内されるまま後をついて行くが、途中で思い出した事を受付の姉さんに伝える。

「メルフ商会の名前を出す人が来たら、俺の所に案内して欲しい。さっきの爺さんに商会名を伝えといてくれ。それで爺さんにはわかるって商会の代表に言われたから」

姉さんは「お客様ですね。わかりました。親方様にもそう伝えます」と請け負ってくれた。良かった。

***
【カナメ 視点】少し時間を遡る。

魔道具を爆買いしてしまった私。ほくほくしているけど、実は、祭りはまだ始まっていない。

「やばい。爆買いしてお小遣いが心許ない…」

「あんなに気持ちよく買ってたら、そうにゃるニャ」

「よし!!お祭り終わったらいっぱい働く!!」

「あたしはどうにゃるかにゃ…爺が無事なら…」

「シンさん…」

お耳がぺしょっと伏せてしまったシンさん。私はその手を取って、

「メイン通りの人混みが緩和されたんだから、そっちの方で美味しいもの食べに行こう!!」

そう言って進もうとしたら、先程、店の前で声を掛けてきたおじさんたちとは系統の違う、いかにも荒くれ者と言った風体の男が3人、私たちの目の前に立ちはだかった。

「お前、ガンゾウ工房の灰猫じゃねーかぁ!!何で黒猫になってんだゴルァ!!」

「変装とはいい度胸だな!糞猫!!」

シンさんと繋いだ手に思いっきり力が入る。振り返ると青い顔をして震えているシンさん。あぁ…こいつらがシンさんのお爺さんに無茶な事させてる奴ら?私は繋いだ手をポンポンと叩く。
私の方に目を向けるシンさんは目に涙を浮かべていた。

「大丈夫。カナメが付いているからね。怖かったら猫になっても良いよ?」

シンさんは震えながらも首を横に振る。私はシンさんに笑いかける。それが男達には気に入らなかったみたいで、思いっきり近くにあった木箱を蹴り飛ばし大きな音を立てる。その音でシンさんはビクッて身体を硬直して、いっそう震え始めた。

あぁそう。ふーん。そう来るんだ。カナメそう言う輩、大っ嫌いなんだよね。
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