ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
7 / 2,518

第7話 クエストを選ぶ

しおりを挟む
 戦闘訓練を終えて、満腹亭に戻ってきた。戦闘訓練とは言ったものの、今日は基本的には模擬戦を繰り返してアドバイスをしたりもらったりで終わったのだった。

 今日も今日とて宿の飯が美味い。塩コショウしかないはずなのに、なんでだろう? なぜか美味いのだ。機会があればその秘密を教えてもらいたいところである。

 しばらくの予定では戦闘訓練に通うことにしていたのだが、ミリーに対人戦闘は教えられることがないと言われ、後は経験して色々を学ぶしかないと言われた。

 早い段階で対人戦闘に慣れすぎると対モンスター戦闘に支障が出てしまうのでおすすめしないと言われてしまった。

 助言として低ランクの討伐クエをこなして実戦経験を積んでいくのがいいだろうとのこと。クエストをこなしていればランクもあげられるし、それに見合ったクエストも受けられるようになるので、訓練にもなると。

 街の外に出て討伐クエストか~。そういえば、この世界では魔物を倒すとドロップアイテムが出るらしい。有名なものでいえば、オークがオーク肉を落とすことだろう。

 地球の知識にあるオークの見た目を想像すると食べるというと正直ひくものがあるが、実際に食べるとうまいのだ。後は、雑食のゴブリンやコボルト、オーク等は、食べたもので体に残っている貴重品を一緒にドロップすることがあるらしい。

 貴重なアイテムをDPで呼び出して腹に突っ込んでからドロップ品にして売れば金を一気に稼げるだろうか? どのアイテムを選ぶかは検討が必要だろうということで、しばらくは見送りした。

 お金を稼ぐ手段が微妙だが、一応空き家の目途はつけた。どのくらいお金がかかるか分かっていないと、貯める目安もわからないと思い下調べをしていたのだ。

 空き家の値段は本当にピンキリだったが、よさそうなところでそこそこ庭のある3LDK程の家が大金貨四枚で販売されていた。

 DPだけでお金を出すなら4000DPあればいけるのだが、何もしてない状況でそんな大金が出てきたらいろいろ問題だからな。

 しばらくは、討伐クエ等を受けて経験値がどのくらい稼げるかとかも見ていくか。

 明日は何時頃にギルドへ行こうか悩んでいたが、自分で見繕ってもよくわからないので、ミリーに一緒に検討してもらえればアドバイスも聞けるかと考え、混んでいる時間帯は避けようと思い、暗くなった部屋で目をつぶり眠りについた。

 目が覚めた。いつもより日の位置が高かった。

「あれ? 寝すぎたか? 時間は8時30分ってとこか。飯まだ食べれるかな。急げ急げ!」

 あわてて部屋を出て食堂へ降りていく。

「おばちゃん、まだ飯って食べれる?」

「あら、シュウ君じゃないか。今日はお寝坊さんだったみたいね。まだ食材があるから食べれるわよ」

「よかった~、せっかくの美味しいご飯が食べれなかったらどうしようかと思って慌てました」

「よかったわ、うちのお食事が気に入っていただけて。今持ってくるから少し待ってな」

 おばちゃんがいい匂いのする朝食を運んできてくれた。

「今日もうまそうだ。そういえば、おばちゃん。塩コショウしか使ってない気がするのにお肉や炒め物が異様においしい気がするんだけど、隠し味とかあるんですか?」

「あら? 何か気付いてるみたいね。まぁ隠し事じゃないからいいんだけどね。うちでは、出汁をとって味をしっかりととのえてから使っているからね。そこら辺の食堂とはわけが違うさね。まぁ何からだしを取っているかは秘密だけどね」

「なるほど、出汁を使っているから塩コショウだけでもこんなに美味いのか」

 おばちゃんと会話をしながらモリモリと食べていく。その食べっぷりにおばちゃんが気をよくして、試作品で作っている料理の味見をして意見をくれと言われた。

「これも美味しいですね。個人的な意見を言うのであれば、夕食のメニューだと思うので味が崩れない程度にもう少し濃い味付けがいいかなって思います」

「もっと濃い方がいいのかい? これでも悪くないと思うんだけどね。理由教えてもらっていいかい?」

「いいですよ。しばらくここで生活して感じたのですが、夕食時は仕事帰りの人達が多いですよね? だから、汗をかいたりした人が多いと思うのでちょっと濃い方がいいかなと思いました」

「あ~なるほどね。最後の調理段階でその人にあった味付けにできれば客も喜ぶかね?いくつか味の濃さを作って番号でもつければ提供もできるかな」

「もしくは、決まった味付けを作って、希望に合わせてお客さまの前で塩コショウを振るのはどうですかね?」

「なるほどね、今度他の料理でやってみようかね。評判が良ければ違う料理でもやってみようかね。貴重な意見ありがとね」

「いえいえ、いつもおいしい料理ありがとうございます。そだ、宿泊5日追加でお願いします。大銀貨1枚と銀貨5枚でいいですよね」

「まいどあり。宿代は安くできないけど、今日のアドバイス料として3日間は一品追加で食事を持ってくるよ」

「楽しみにしています。じゃぁ準備してギルドに行ってきます」

「頑張ってらっしゃい」

 部屋に戻り準備を整えて、おばちゃんに見送られながらギルドを目指す。

 ギルドの中は、落ち着いている時間帯にさしかかり慌ただしさはなくなっているようだ。カウンターにミリーさんがいたのでちょうどいいと思い話しかける。

「どうもミリーさん。今日は、昨日アドバイスもらったように討伐クエに行ってみようと思うんですが、見繕ってもらっても大丈夫ですか? 自分ではわからないことが多いので」

「おはようございます。昨日の今日で討伐クエを受けるの? シュウ君の実力であればGランクのクエなんて大したことないだろうし残ってるクエで検討しましょうか」

 クエストボードに行って、いくつかのクエスト用紙をとってカウンター横にある座って話せるところへ移動する。

「Gランクのクエストをいくつか持ってきたけど、この位しかないわね。EからGランクの討伐クエは、基本的に常時張り出しになっているんだよね。ゴブリンにオークはほっとけば際限なく増えてくし特に、女性がさらわれると悲惨なことになるので見つけたら討伐してもらって後での報告になっても問題ないようにしてます」

「オークはEランクみたいですが、Gランクの俺がもし倒してしまった場合の扱いはどうなりますか?」

「そうね、基本的にはランクが違っても常に張られているクエストは違反などがあるわけではないですね。ランクは実力を段階的に分けただけなので、討伐に関しては特にペナルティはないです。

 ですが、上のランクを倒そうとするには実力が足りないこともあるので気を付けるようにはしてもらっています。死んでしまった場合は自己責任なわけですし」

「なるほど。上のランクのモンスターを見つけても無理に狩る必要はないってことですね」

「まぁシュウ君の実力があれば、オークに後れを取ることはないだろうけど上位種がいたり集団でいたりするので気を付けてくださいね」

「上位種ですか、ランクが一つ二つ変わるって話でしたね。とりあえず今日は、Gランクのゴブリンやビッグラットあたりを狙ってみます。森の付近にいるって話なので、見晴らしのいいところで探してみます」

「初めてのクエストなので気を張らずに行ってくださいね」
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...