ダンマス(異端者)

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第7話 クエストを選ぶ

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 戦闘訓練を終えて、満腹亭に戻ってきた。戦闘訓練とは言ったものの、今日は基本的には模擬戦を繰り返してアドバイスをしたりもらったりで終わったのだった。

 今日も今日とて宿の飯が美味い。塩コショウしかないはずなのに、なんでだろう? なぜか美味いのだ。機会があればその秘密を教えてもらいたいところである。

 しばらくの予定では戦闘訓練に通うことにしていたのだが、ミリーに対人戦闘は教えられることがないと言われ、後は経験して色々を学ぶしかないと言われた。

 早い段階で対人戦闘に慣れすぎると対モンスター戦闘に支障が出てしまうのでおすすめしないと言われてしまった。

 助言として低ランクの討伐クエをこなして実戦経験を積んでいくのがいいだろうとのこと。クエストをこなしていればランクもあげられるし、それに見合ったクエストも受けられるようになるので、訓練にもなると。

 街の外に出て討伐クエストか~。そういえば、この世界では魔物を倒すとドロップアイテムが出るらしい。有名なものでいえば、オークがオーク肉を落とすことだろう。

 地球の知識にあるオークの見た目を想像すると食べるというと正直ひくものがあるが、実際に食べるとうまいのだ。後は、雑食のゴブリンやコボルト、オーク等は、食べたもので体に残っている貴重品を一緒にドロップすることがあるらしい。

 貴重なアイテムをDPで呼び出して腹に突っ込んでからドロップ品にして売れば金を一気に稼げるだろうか? どのアイテムを選ぶかは検討が必要だろうということで、しばらくは見送りした。

 お金を稼ぐ手段が微妙だが、一応空き家の目途はつけた。どのくらいお金がかかるか分かっていないと、貯める目安もわからないと思い下調べをしていたのだ。

 空き家の値段は本当にピンキリだったが、よさそうなところでそこそこ庭のある3LDK程の家が大金貨四枚で販売されていた。

 DPだけでお金を出すなら4000DPあればいけるのだが、何もしてない状況でそんな大金が出てきたらいろいろ問題だからな。

 しばらくは、討伐クエ等を受けて経験値がどのくらい稼げるかとかも見ていくか。

 明日は何時頃にギルドへ行こうか悩んでいたが、自分で見繕ってもよくわからないので、ミリーに一緒に検討してもらえればアドバイスも聞けるかと考え、混んでいる時間帯は避けようと思い、暗くなった部屋で目をつぶり眠りについた。

 目が覚めた。いつもより日の位置が高かった。

「あれ? 寝すぎたか? 時間は8時30分ってとこか。飯まだ食べれるかな。急げ急げ!」

 あわてて部屋を出て食堂へ降りていく。

「おばちゃん、まだ飯って食べれる?」

「あら、シュウ君じゃないか。今日はお寝坊さんだったみたいね。まだ食材があるから食べれるわよ」

「よかった~、せっかくの美味しいご飯が食べれなかったらどうしようかと思って慌てました」

「よかったわ、うちのお食事が気に入っていただけて。今持ってくるから少し待ってな」

 おばちゃんがいい匂いのする朝食を運んできてくれた。

「今日もうまそうだ。そういえば、おばちゃん。塩コショウしか使ってない気がするのにお肉や炒め物が異様においしい気がするんだけど、隠し味とかあるんですか?」

「あら? 何か気付いてるみたいね。まぁ隠し事じゃないからいいんだけどね。うちでは、出汁をとって味をしっかりととのえてから使っているからね。そこら辺の食堂とはわけが違うさね。まぁ何からだしを取っているかは秘密だけどね」

「なるほど、出汁を使っているから塩コショウだけでもこんなに美味いのか」

 おばちゃんと会話をしながらモリモリと食べていく。その食べっぷりにおばちゃんが気をよくして、試作品で作っている料理の味見をして意見をくれと言われた。

「これも美味しいですね。個人的な意見を言うのであれば、夕食のメニューだと思うので味が崩れない程度にもう少し濃い味付けがいいかなって思います」

「もっと濃い方がいいのかい? これでも悪くないと思うんだけどね。理由教えてもらっていいかい?」

「いいですよ。しばらくここで生活して感じたのですが、夕食時は仕事帰りの人達が多いですよね? だから、汗をかいたりした人が多いと思うのでちょっと濃い方がいいかなと思いました」

「あ~なるほどね。最後の調理段階でその人にあった味付けにできれば客も喜ぶかね?いくつか味の濃さを作って番号でもつければ提供もできるかな」

「もしくは、決まった味付けを作って、希望に合わせてお客さまの前で塩コショウを振るのはどうですかね?」

「なるほどね、今度他の料理でやってみようかね。評判が良ければ違う料理でもやってみようかね。貴重な意見ありがとね」

「いえいえ、いつもおいしい料理ありがとうございます。そだ、宿泊5日追加でお願いします。大銀貨1枚と銀貨5枚でいいですよね」

「まいどあり。宿代は安くできないけど、今日のアドバイス料として3日間は一品追加で食事を持ってくるよ」

「楽しみにしています。じゃぁ準備してギルドに行ってきます」

「頑張ってらっしゃい」

 部屋に戻り準備を整えて、おばちゃんに見送られながらギルドを目指す。

 ギルドの中は、落ち着いている時間帯にさしかかり慌ただしさはなくなっているようだ。カウンターにミリーさんがいたのでちょうどいいと思い話しかける。

「どうもミリーさん。今日は、昨日アドバイスもらったように討伐クエに行ってみようと思うんですが、見繕ってもらっても大丈夫ですか? 自分ではわからないことが多いので」

「おはようございます。昨日の今日で討伐クエを受けるの? シュウ君の実力であればGランクのクエなんて大したことないだろうし残ってるクエで検討しましょうか」

 クエストボードに行って、いくつかのクエスト用紙をとってカウンター横にある座って話せるところへ移動する。

「Gランクのクエストをいくつか持ってきたけど、この位しかないわね。EからGランクの討伐クエは、基本的に常時張り出しになっているんだよね。ゴブリンにオークはほっとけば際限なく増えてくし特に、女性がさらわれると悲惨なことになるので見つけたら討伐してもらって後での報告になっても問題ないようにしてます」

「オークはEランクみたいですが、Gランクの俺がもし倒してしまった場合の扱いはどうなりますか?」

「そうね、基本的にはランクが違っても常に張られているクエストは違反などがあるわけではないですね。ランクは実力を段階的に分けただけなので、討伐に関しては特にペナルティはないです。

 ですが、上のランクを倒そうとするには実力が足りないこともあるので気を付けるようにはしてもらっています。死んでしまった場合は自己責任なわけですし」

「なるほど。上のランクのモンスターを見つけても無理に狩る必要はないってことですね」

「まぁシュウ君の実力があれば、オークに後れを取ることはないだろうけど上位種がいたり集団でいたりするので気を付けてくださいね」

「上位種ですか、ランクが一つ二つ変わるって話でしたね。とりあえず今日は、Gランクのゴブリンやビッグラットあたりを狙ってみます。森の付近にいるって話なので、見晴らしのいいところで探してみます」

「初めてのクエストなので気を張らずに行ってくださいね」
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