ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第158話 技能集団首領リンド

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 家の近くで朝市をしていた八百屋のおばちゃんに、話を聞いて目的地を確認する。おばちゃんの所で売っていた野菜の品質が良かったので、朝市で余った野菜がでたら元鍛冶ギルドの建物にいる娘の誰かに「シュウにお願いされた」と、声をかけてほしいと言っておいた。

 いつも四割ほど残って、宿や食堂に売りに行くそうで助かるわと言われた。俺たちで消費するには量が多いが、保管してある食材が腐らない拡張倉庫を、キッチンから行ける地下に作ってあるので問題は無い。他にも熟成加速倉庫も準備してある。

 リブロフでもらった紹介状を持って、おばちゃんに教わった建物に向かっていく。今回のお供は、幼女三人組だ。というのも誰を連れていこうか悩んでいると、ピーチがネルちゃんに街の散歩をさせてあげては?と言われ、一緒にシェリルとイリアを連れてくことにしたのだ。

 両手にシェリルとイリア、ネルは肩車をして俺は幼女にまみれていた。変態紳士ロリコンに見つかったら殺されるかもしれないな。戦闘メイド服だが、ご都合主義的に上手い具合に肩車できるのだから不思議だ。

 目的の建物がある所に着いた。おばちゃんも言ってたけど、ギルドだよな? 元鍛冶ギルドの数倍はデカいが何のギルドなんだろう? そして、そこら辺のおばちゃんでも知ってる、リンドってどんな人なんだ? マップ先生は使っていない。どんな人かは見てから決めようと考えていたからだ。

 ネルを肩車から降ろしてギルドの中に入ると、カウンターが仕切られていくつかあった。鍛冶・土木・木工・革等の複数の看板がかかげられているカウンターだ。総合ギルドとでも呼べばいいのだろうか? 複数のギルドが同じ建物を共有している感じかな?

 これいいな、ディストピアでも同じようにしてみよっか? おっといけない、本題に戻らねば……誰に聞けばいいかわからなかったので、人がいなかった土木のカウンターへ行って聞いてみる事にした。

「すいません。ジャルジャンへ出向いている飛竜隊の人から、リンドさん宛の紹介状をもらったのですが、どちらにいらっしゃるかわかりますか?」

「リンド様ですか? 紹介状を見せていただいてよろしいですか? ふむふむ、ジャルジャンに出向しているリンド様の弟からの紹介状のようですね。例の物を持ってきていると書かれていますがありますか?」

 様か……結構地位の高い人なのだろうか? 例の物はおそらくお酒だろう。左手をあげて収納の腕輪を指さす。

「収納の腕輪ですね。あいつの世迷言ではなさそうですね。リンド様の所へ連れていきますので一緒に来てください」

 それにしても飛竜隊って結構すごい人たちの集まりじゃなかったっけ?それなのにあいつとか言っちゃってるよ受付の人。古典的なドワーフで男女の見分けがつかない女のドワーフだ。正直女性なのか全くわからない。

 声は若干細くて高く聞こえるけど、誤差の範囲と言ってしまえばそれまでだ。だけど、リンドさんの所に連れていく際に、男のドワーフから妬みの視線を向けられた。大丈夫だ、ロリババアならともかく見分けのつかないドワーフに、欲情は絶対にしない。だからその人を殺せるような視線は向けるな!

 おそらく最上階の五階、一番奥の部屋に通された。

「愚弟の紹介だって? 本来ならあのバカの紹介状で会う事はしないが、例の物を持ってきていると聞いちゃ黙ってられないな。どのくらい準備してきたんだい?」

 話の流れで、あの人の姉とわかってはいたが、筋骨隆々のドワーフの姉だから見分けのつかない方かと思ったが、ロリババアと言っていいのだろうか? 見た目は十五歳程の美少女が仁王立ちしていた。

 酒の事を言われている様子なので、収納の腕輪から樽を五個ほど出していく。酒精の強めな日本酒・ブランデー・ウィスキー・ウォッカ・ワインの樽を出していく。どのお酒かわからなくならない様に、この世界の言葉でお酒の名前を書いている。

 それとお酒の本に書かれていた通りの説明書きの紙をはりつけている。もちろんこのお酒はDPで召喚したものだ。シルキーたちが主導して作っているお酒は、まだ若いらしいので今回は召喚したものを持ってきたのだ。

「五樽か……まぁ交渉の場に立つには、及第点だろう。じゃあそれしまって裏の広場に行くぞ」

 二十リットルくらい入る樽で五樽なのに及第点ってどんだけだよ! よくわからないままリンドさんに連れられて広場? どう見ても訓練所に見えるが。このギルドに戦闘系のギルドは入ってなかったはず。何でこんなのがあるんだ? それにこのギャラリーは?

「もう分かってると思うけど、実力のない者に権利は与えられない。権利のためにその証を示せ!」

 待て待て! 分かってると思うけどって分からねえわ! それにしてもドワーフってのは戦闘民族なのか? 血の気は多そうだけど、その血が酒で出来てるはずなのに。なんてぼんやり考えていたら、幼女3人組が俺の前に出ていた。

「嬢ちゃんたちも強いだろうが、今は出番じゃないよ。今はその男の実力が知りたいのさ」

「「「ご主人様には、指一本触れさせない(の)!」」」

 美少女に喧嘩を売られて、美幼女たちに守られるこの図。なんといっていいのかコメントに困るな。

「嬢ちゃんたちが、代わりに戦うっていうのかい? お前はそれでいいのか?」

 見た目的にはやはりおかしいよな、幼女に守られる男。色んな意味でヤバい気がする。

「確かに良くは無いよな。よく分からんが戦って実力を示せば問題ないんだろ? じゃあ俺がやればいっか。「「「ご主人様!」」」三人の気持ちもわからなくもない、でもここは俺の出番だ。君たちがご主人様と呼ぶ俺はそこまで弱くはない。ネル、何かあった時のために、すぐに回復できるように集中しておいてくれ」

「ようやく準備ができたようだね、まったくそんな嬢ちゃんたちに身を守らせるなんてなんて男だ「「「ご主人様をバカにするな!」」」い……? もしかしてお主の奴隷なのか?」

 今にも飛び出していきそうな幼女三人を必死に抑える。

「リンドさん、あまりこの娘たちを挑発しないでくれ。それと、今お前には、俺とこの娘たちが奴隷とその主人に見えているのか? それならその目を取り替えないといけないな。この娘たちを奴隷と言っていい奴は、どこにもいない!」

 久々に奴隷扱いされてブチ切れた。奴隷と言って俺のことを蔑む目で見たリンドに対して、不快な気持ちしかない。怒った様子を察した幼女たちは、さっきまでの怒りを収めて俺に道をあけてくれた。三人の頭を撫でながらリンドの前に立つ。

 見た目が美少女であっても俺の優先順位は変わらない。家族同然の娘たちが俺の守るべき最優先なのだ。女の子には基本的に俺が手を上げるつもりは無いが、今回はしょうがないだろう。この娘たちに頼っていい場面でもないしな。

「マジか……あんた予想以上にできるようだね。少しまずい事になるかもしれないね。おい、お前たち! 今から城に行ってあのジジイ連れて来な。グダグダいうようなら、私の名前を出して引きずってでもいいから早く! 手加減できる相手じゃなさそうなんでな」

 俺は娘たちにも用意している、非殺傷グローブを付けながらリンドを見据える。

「安心しろ、何があってもあんたが死ぬような事は絶対ない。知らなかったとはいえ、逆鱗に触れてしまったことは後悔してもらう。俺にとってこれは知らなかったで済ませるわけにはいかないからな」

「まだ二十歳にもならない若造が、大口をたたくね。こちとら七〇〇年以上戦場を経験しているんだよ。全力でかかってきな、叩きのめしてやるよ」

「ばーさんがよく言う。全力で抵抗しろよ、じゃないと俺の実力は測れないぞ」

 後にリンドの気紛れと呼ばれる歴史の一ページに刻まれる事件がこの瞬間に始まる。
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