ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
202 / 2,518

第202話 和紙作り実践

しおりを挟む
 日が明けて再度集まったメンバー三十八人と九匹、ハクにスライムたちよ、今日もついてくるのか。今日は昨日リンドたちが回収してきた皮と、木をカンナで薄く削ったものを使う予定だ。まずは使えるの物なのか確認しないとな。

「みんな、この皮どう思う?」

「真っ白ですね。外皮でしたっけ? その固い部分もないですし、白皮だけっぽいですね。絵で見たやつより白く見えますね」

 やっぱりそうだよな、袋の中に入ってたから昨日は気付かなかったけど白いんだよな。使えるかは分からないけど、とりあえずやってみるか。一応はカンナで削った木も実験しないといけないからな。

「そっちの皮はもう乾燥してるっぽいからそこの流水に漬けておいて、俺たちはドワーフジジ様からもらってきたカンナを使ってまず削ろうか。薄過ぎるともろくなっちゃうけど、厚過ぎると削れないからって事でドワーフ爺様方が調整してくれたのがあるからこれを使って削ろうか」

 おっと? そこらへんで遊んでいた魚人の子供たちが興味を持って、ダンジョン中に入ってきてしまったようだ。大人の魚人たちに邪魔しないように言われて静かにこちらを見ている。

 削り始めると、削りカスが面白いようで自分たちもやりたいと騒ぎ出した。刃物を使いとても危ない事を念には念を入れて子供たちに言い聞かせる。そうすると、今までしたことがない事だったため意欲的に子供たちが削り始める。

 初めは上手く削れなかったが、うまく削れるようになると調子に乗り始めたので、大人たちに怒られてしょんぼりしてから他の子たちと交換していた。この様子なら子供たちの暇つぶしに仕事にできるかもしれないな。この紙が成功するならいいかもしれないな。

 子供たちが削り出した削りカスは、テレビで大工さんが削っている奴よりはかなり厚めではある。さわり心地はダンジョン産の皮より大分柔らかいが壊れるほどもろい感じはしない。思っている以上に白いし紙に適した繊維だったらいいな。とりあえずこれも、皮と同じように処理していこうか。

 基本となるコウゾもDPで召喚して一緒に処理していく。これで三種類の実験ができるな。同じ作り方してどういう違いがうまれるのだろう。

 全部の処理が終わり水さらしが開始された。

 次の日には流水でバシャバシャとゴミをはじき綺麗にしていく。ダンジョン産はあまり変わっていないようだ。削りカスの方は地面とかに落ちてゴミとかが付いていたので、見た目はかなり綺麗になっていて、予想以上に白く透き通っているように見える。コウゾはDVDで見た感じになっていた。

 水に漬けて天日にさらす工程だが、ダンジョン内なので天候は自由に変えれるためずっと晴天だぜ! しっかりアクが抜けますように!

 二日たったけどアクが抜けたかなんてわかるわけないよな。水で洗ってから天日で干していく。いやはや、最初と違いがわからん。水を吸ってふやけているくらいだけだろう。白く乾いたのでまた水に漬ける。

 アリスたちに準備をさせていた魔導鍋と、ドワーフたちに準備させた漉き船が完成したので持ち込み準備が整ったな。三種類を試すために大分無理をさせたけどいい品ができてよかった。今回、水を絞る道具と叩解の道具はDPで召喚している。

 とりあえず今回は全部重曹で煮込むことにした。召喚した本に書いてあった分量で試すことにしよう。弱火でどんどん煮込んでいこう。一時間三十分ほど煮込んでからゆっくりと冷ましていく。コウゾはDVDで見たように黒く濁っているように見えたが、他の二種類はそこまで濁っているようには見えなかった。

 次の日、変化は劇的だった。全部の鍋が濃さは違うが黒く変色していた。

 さてみんなでちりとりの作業だ。子供たちも大人から作業方法を聞いて丁寧な作業をしている、水に強いからなのかな? スライムたちもプルプル震えて自分たちもといった具合に手伝ってくれている。全部とかさないか心配だったが選別してとかすことができるようだった。お前ら本当に万能だな。

 二日ほどで問題なくちりとり作業が終わった。手間のかかった順で言うと、コウゾ⇒削りカス⇒ダンジョン産の皮の順だった。コウゾのちりとりにはスライム達が活躍したのだ。そのまま叩解の機械へ投入していく。この機械は一個しかないので一回やっては綺麗にして、また叩解を繰り返す。

 漉く準備を始める前にトロロアオイを召喚して根からノリの成分を抽出する。分量は書かれていなかったのでここらへんは適当だ。予想以上に頑固な粘りにビビった。子供たちは楽しそうにさわっている。こらこら触るな触るな!

 漉き船にきれいな水と叩解をした繊維をいれて棒でかき回す。思ったよりまとまったままだな。この時の繊維の濃度で紙の厚さが決まってくるらしいが、これもわかる訳ないのでDVDで見た感じの量を投入している。

 そういえばドワーフたちが馬鍬と呼ばれる攪拌をさせる道具の意味を分かっていなくて、俺もいまいちだったけどこういう風に使うんだな。攪拌が終わったところにノリを投入してさらに混ぜていく。

 さて紙漉きの本番だ。一応漉き船は九台用意している。準備するだけでも一苦労だな。三種類からとれた繊維は大体同じくらいの量になったので、三種類共三台で微妙に入れる量を変えてチャレンジしている。

 初めは難易度が高いので縦漉きで練習してから、横漉きをやっていこうという話になっている。ちなみに漉く道具の簀(す)はDPで召喚している。素材が無かったのとサイズが不明だったので、この簀に合わせて枠組みの桁(けた)を作りそれに合わせ漉き船が作られている。

 子供たちも漉きの作業をしたくて騒ぎ出すが、さすがにこの工程は大人の魚人の方たちに覚えてもらいたいので、子供たちにはちりとりの作業中に煮ていた別の皮たちの処理をスライムと一緒に頼むと喜んで作業場に向かっていった。

 スライムは魚人の子たちにも人気だった。一応水棲系の魔物なはずだから相性が良かったりするのか? ってかあの見た目なら人気になるか。

 漉く作業だが職人たちが軽くやっているように見えるがやはりというべきか、縦漉きだけでも紙の厚さを均等にするのが難しい。これが職人技か。一番うまかったのはドリアードだった。精霊っていうのはチートだな、数回チャレンジしただけで職人みたいに横漉きまでしてやがる。

 次にうまかったのは俺だった。横漉きはうまくいかないが縦漉きは何とか様になっているのではないだろうか? その次がシャルロットで、その次からはどんぐりの背比べだった。これで一つの事実が判明した。ドリアード・俺・シャルロットの共通点としてスキルに木工を持っていたことだ。

 紙を作るのが木工か、確かに木を素材にはしてるけどな。というか適応できるスキルがこれしかなかったとみるべきか? そうだとするならこの世界はアバウトだな。

 熟練度も少し増えていたので、ここにいるメンバーと子供たちにも木工スキルを覚えてもらってみよう。ちりとりの作業だって木工スキルの領分として認められるかもしれないしな。さくっと集めて宝珠を渡して覚えてもらう。

 しばらくやってればスキルLvも上がって品質が良くなるかもしれないしな。スキルが適用されるなら熟練の職人が量産できたりするのか?そこまで甘くない気がするが、ムラができないように漉けるようになるだけで、紙としては使えるはずだからそこまで行ってくれると嬉しいな。

 今日漉いて完成した中でムラが無かったのはドリアードの漉いたやつだけなので、三種類に分かれているそれを圧搾機にかけていく。じわじわ絞っていくみたいなので時間を決めて少しずつ絞っていこう。

 あいた時間は子供たちもあつめて、ゲームを広めてみることにした。大人たちも興味を持ったのでそれなりの数のP〇Pカスタムを召喚して、一狩り行こうのハンターゲームを召喚してみた。カスタムしても、二十DPで済んじゃうからね。ゴブリン二体分!

 一晩かけて絞られた紙は大分薄くなっていた。圧搾して水を絞ると同時に薄くしてるのかな? 不思議な感じだな。ここまで薄っぺらいのにくっ付かずに破れやすいとはいえ、一枚一枚はがせるんだからな。

 この繊細な作業は難しく慎重にやってても、半分ほどは破れてしまったり力を入れ過ぎて伸びてしまったりしていた。ドリアード一人で漉けた数を考えると数が少なくて練習もできなかったというべきだろうか? それでもそれなりの数の紙が板に張り付けられ乾燥にまわされた。

 一応ダンジョンの中は、日本の冬をイメージした気温や日照条件にしてある(雨は降らないが)。DVD見た時や本には冬みたいなことが書かれていたのでダンジョンで強制的に冬の環境を作ったのだ。

 魚人たちは冬の海も泳いでいるので、寒さには強いようだ。一番寒がってるのは多分俺だろう。娘たちもそこまで寒そうにはしていない。スライムは凍ったりしないかと思っていたが、すこぶる元気だ。魚人の子供たちと冷たい川の水に飛び込む遊びをしているくらいだ。

 紙が乾いた。見た感じは恐らくだが、コウゾ⇒ダンジョン産⇒削りカスの順で質がよさそうに見える。処理の手間を考えるとコウゾ⇒ダンジョン産⇒削りカスの順番で面倒くさかった。

 量産品として使うなら削りカスがいいかも知れないな。ダンジョン産は仕入れに波があるはずなので少し質のいい紙として売り出せるかな? コウゾは高級品として長期間保存用とかにできるかな?

 予想以上の結果に俺はホクホク顔になる。でも今の段階ではドリアード以外は商品にする以前にムラがありすぎるので、しばらくは特訓を積んでもらう事にしよう。

 ドリアードを魚人の村に派遣してしばらく監督してもらうことにした。DPで色々生み出す権利も与えているので足りないものがあったら召喚するように言っておく。判断に困るときは無線で連絡するように言い含める。

 量産の目途が立ったので胸を張ってピーチに報告ができるな。喜んでくれるだろうか?呑気にそんなことを考えながら家に戻ると、真剣な顔をしたカエデとリンドとダリアが俺を捕まえて応接室にしょっ引かれる。席に着いたところでリンドから、

「シュウ、大切な話があるんだ!」
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

処理中です...