ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
212 / 2,518

第212話 衝撃の事実

しおりを挟む
 辟易する気分を抑えながらBOSS部屋の敵を眺めながらそうつぶやく。

 スライムたちは自分たちにも活躍の場ができたようで、張り切って全力でプルプル震えている。慣性力っぽい物で体ちぎれたりしないか? 大分歪んでいる気がするけど。

 タンクの六人とスライム八匹抜いたとしても、ドール一匹に三人(従魔含む)以上で当たれるよな。ピーチはタンクの補佐をさせれば、間違いなく向こうは何とかなるだろう。

「ピーチはタンクとスライムたちの補助を! 他のみんなは一体に三人で当たること! さて暇してたお前たちにも働いてもらうぞ! ハク・ギン・クロ・コウ・ソウ、全力でドールたちを倒すこと!」

 ニコを除いた、ミリーの従魔を含む九匹が元気よく吠える。ミリーには俺と同種の鉄棍を渡してあるので、カエデよりレベルが低くてもDPS(1秒間に与えられるダメージ)は上だろう。

 ずっと強化を続けている【迷刀 霞】をもってしても切断できないオリハルコンドールは、カエデにとって最悪の敵だろう。問題はその刀でも嬉々として切り付けている。勇ましいな。

 俺は気付かないうちに、ピーチの指揮を奪って指示を出していた。特に何も言われなかったので、自分が戦闘に口を出している意識すらなかった。

 娘たちの攻撃は安定しており、一人が注意をひいて二人が同時攻撃を仕掛けている。安定しているので特に注目する点が無かったが、従魔たちの戦闘は興味深かった。ハク・ギン・クロの3匹は噛みついていた。

 さすがにオリハルコンは砕けないが、噛みついて引きずり回したり股割きをしてみたりしている。これって関節技、柔道の決め技がきいたりするんじゃねえか?

 一通りの戦闘系スキルはとっているので、もちろん柔術もサンボも覚えている。知識がある状態なだけだけどな! 自分の武器はシェリルに貸し出していたので、新しく取り出していた双鉄鞭を収納にしまって、ドールに近付いていく。

「すまん、ドール一匹もらうね。試してみたいことができたからごめんよ」

 そういって一匹のオリハルコンドールに近付いていく。ドール、人形が動くためには関節が必要だ。人でも関節は他の部位よりどうしてももろくなる。肘などは外側は固くても内側はもろい。

 膝にはもろさを補強するためにさらが入っている。そして関節には可動域があって人型や動物型の魔物には必ず限界がある。という事は、関節破壊は楽にできるのではないだろうか? 骨が固くても繋ぎ目は脆いものだ。

 武器を振りかぶってきたドールの手首をとり、そのまま体勢を崩させ地面に倒す。肩の関節をキメてから、さらに力を加える。ゴキッ、折れる音? といっていいのだろうか、それと同時にドールの腕がもげた。

 これで関節技がきくことは証明された。まさか本当にきくとはね。今まで鈍器などで苦労して撲殺してきた人たちが哀れに思えるな。

 予想以上に簡単に腕をもぎ取ることに成功した俺は、そのまま首に腕を回し締め上げる。って! 生物じゃないんだから、締め上げても呼吸してないからきくわけないだろ! 俺のばか!

 締め上げている状態から体ごと捻り、人間でいう向いてはいけない方向へ強引にネジ回す。ゴキッと腕をもぎ取った時よりさらに大きい音がして首がもげた。そうするとドールはドロップに変わる。

「えっと……みんな、打撃や斬撃より、関節を折ったり首をもいだ方が楽だぞ」

 俺の報告を聞くと、ドールを相手にしていた注意をひいていない娘たちが、一斉に武器を捨ててドールに組み付いてサクッと首をもぎ取っていた。まさか打撃より効く攻撃があるとはな。ゴーレムも子供の作った粘土人形みたいでゴッツイ人型で首のない感じなのだが、腕と足は恐らく関節に近い何かがあるはずだ。

 このダンジョンに入ってからずっと見ているが、人間に近い動きをしていて攻撃されても人間では、ありえないような関節の動きをしたことを見たことがない。AI的な何かによるもののためにできないのではなく、人間に近い動きをさせるために人間に近い構造を模した物ではないかと思っている。

 個体によって多少ばらつきがあるが大きくても二メートルは超えないサイズなので、問題なく組むことができるだろう。この世界のゴーレムって、このサイズがデフォルトなのだろうか?亜人の森にいたゴーレムもそこまででかくなかったしな。

 小説やゲームのゴーレムっていうと、大きいイメージが強いんだよな。それこそ五十階のBOSSのビックアイアンゴーレムみたいな感じだろうか? 何でこの世界のゴーレムは人間サイズなんだろうな?

 ゴーレムにも関節技がきくことが判明して、次々と組み伏せられていく。首をもぐことはできないが腕や足が簡単にもげてしまうので、そのまま押し切り全滅させる。

「八十階の倍はいたのに、同じくらいの時間で終わっちゃったね。まさかこんな簡単に倒せる敵だったとはね。柔道なんて対人戦でしか使う機会ないと思ってたし、その柔道も投げが中心で終わると思ってたよ。スキルの補正で効果が上がってたとはいえ、ここまで簡単に倒せるなんてな」

「シュウ君、この情報どうする? ギルドで働いていた人間としては、色々教えておきたいところですが」

「ん~あんまり広めて、関節技がきめれたらドールやゴーレムが弱い敵だと認識されて、増長するアホが出て来ても困るんだよな。特に0のつく階層は最大で一〇〇匹は出てくるから、シュリみたいに全員を引き寄せられるならともかく、階層にもよるけど二十匹も相手どれないだろ?

 大規模のパーティーなら話は別だけど、十人やそこらのパーティーなら、関節技を決めている間に違うゴーレムやドールに攻撃されて致命傷になりかねんぞ? それなら広めないで今のスタイルの方がいいんじゃないか?」

「それもそうですね、数字の若い階はまだいいかもしれないですけど、調子に乗って自分の身の丈にあわない場所に行けばすぐに死んでしまいますね」

 のんびりそんなことを話しながら九十一階層へ向かう。休憩をとるのにいい場所を求めて……

 九十一階の初めての部屋について愕然とした。銀色に光るゴーレムとドールたちがいたのだ。しかも、見る限り三十匹程いる気がする。

「これって、シルバーゴーレムより明らかに綺麗な色だよな? しかも七十階のBOSSと同じ色に俺は見える。ってことは、この階からはミスリル系が中心なのか!?」
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...