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第624話 聖国はどうなってるんだろうか?
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週末になりレイリーとの模擬戦が行われた。
模擬戦は、魔法系スキルの使用不可で、純粋にタンク、物理アタッカーとしての能力を見るものだった。確かに、常に魔法に頼れるわけじゃないから、地の実力を見ておく必要があるんだろう。
レイリーと対峙していつも思うが、これだけの技術を持っている人間が、どうしてレベル一〇〇にも届かない位置で、燻ぶっていたんだろうな? そう考えると怖いものがある。俺たちみたいな環境があれば、レイリーみたいなのが、ごろごろ生まれるかもしれないって事だ。
今打ち合っているレイリーだって、ステータスだけで見れば俺の方が上なのに全く互角。いや、レイリーの方が若干優勢に戦っているのだ。スキルで知識や体の動かし方を覚えた所で、武器をふるうのに適切な動きができるだけだ。
例えるなら、優秀なソフトやアプリが入っているパソコンだけど、スペックが足りてなくて十全に、力をひきだせていない感じだろうか?
処理する自分の頭や体を、鍛えるしかないんだよな。それは訓練等でも培えるが、やはり経験という壁は大きいのだろう。魔法系のスキルを使わないと、レイリーに攻撃が届きもしない。すべて剣か盾で防がれるか避けられてしまう。
ただ、レイリーの攻撃を俺もしっかりと防げている。レイリー程完ぺきではないが、自分の身体にダメージが、残るほどの失敗はしていない。
「シュウ様、魔法を使わなくても強くなられましたな。このレイリー、嬉しく思います。ですが、これで最後にしましょう。私が昔、まだ一兵卒だった頃にあった事のある、ダブルの冒険者から教わった技術です。最近まで使えなかったのですが、やっと使えるようになりました。
それで、あの人の言葉の真意がわかりました。それを私がシュウ様に伝えさせていただこうと思います。『守りたいと思うんじゃない、守るという意志を貫くんだ』……一〇〇歳近くになって、やっとこの言葉の意味が分かるとは、本当に未熟でした。では行きます!」
今、レイリーがいった事は確かに同じようで全く違う。守りたいと思うだけなら誰でもできる。でも守るという意志を貫くためには、色々なものが必要になる。その位ならレイリーが、何十年も悩むわけないよな。
レイリーから得体のしれない、威圧みたいなものが届いてくる。スキルは使っていない、なのに今までとは明らかに違う。だが、今までのレイリーと変わったところはない。ステータスにも変動は見られていないと思うが、明らかに何かが変わった。これが意志を貫くという事なのだろうか?
レイリーが前に踏み出してくる。それは大きな壁が押し迫ってきているような印象を受ける。下がるにしても、きりがなくなってしまう。それに後ろには、離れてはいるが妻たちがいるので、その場にとどまり受けて立つ。
「シュウ様、まだまだ意志が足りないですぞ。そんなもので儂の孫を、他の妻たちを守れるのか? このままでは、シュウ様を倒して後ろにいるみんなに、手が届いてしまうぞ?」
そういう事か。意志を貫く、守りたいものを守る意志、俺は弱かった。そのままでいいわけがない! 俺はみんなを守りたい! 全身全霊で守る、そういう事なんだよな? そして、俺は最近これに近い感覚になってたな。トリプルの冒険者にやられた時だな。
俺はそのまま前に出る。
「いい覚悟です。ですがまだまだですね。最後と行きましょうか」
俺たちは必中の距離で対峙する。どちらも動くことなく一分程睨み合った後、俺たちは急に動き出す。右手に持っている剣を叩きつけ、攻撃のために迫ってくる剣を盾ではじく、何合打ち合ったのか分からないが、次第に押され始める。
レイリーの剣をはじけなくなり、俺の剣はキレイに受け流される。体にダメージがたまってきて動きが鈍るのが分かる。一手遅れたのが分かり、次の瞬間に首に剣を突き付けられていた。
「シュウ様。私の勝ちですね。いいところまでは行っていたと思いますが、私が相手という事で、本気で倒そうとしてませんでしたね? それがシュウ様の弱点です。
時には仲間でも切り捨てないといけない時があるのです。その時は、間違えないでください。タンクとしては合格点は超えていますので、問題ないと思います」
レイリーに合格をもらったが、やはりレイリーには勝てなかったな。それにしても最後の意志を貫くっていうのは、全然感じる空気が違ったな。それに、本気になれなかったところまで、見抜かれてしまったな。歴戦の兵士ってこんな感じのが、沢山いるのだろうか?
合格点をもらえたみたいだから、来週からは違うメンバーを連れていけるな。
そこからは、何もなく一ヶ月が過ぎた。聖国からは調査をしたが、やはりトリプルの冒険者をけしかけた奴はいなかった。止めようとしたが、移動が速すぎてどうにもならなかった。ミューズにおける被害に関しては弁償をするが、特級戦力の喪失をディストピアにも補償してほしいとの事だった。
今はグリエルの執務室だ。
「グリエル、ガリア、これって完全になめられてる?」
二人は肯定のため首を縦に振る。
「樹海における遭遇戦で、放置していたらディストピアの人間が、不幸になるのに放っておけるわけないよな? それに向こうから攻撃を仕掛けてきたんだから……なんて建前はいらんな。これは教皇の意見だと思うか?」
「スカルズの皆さんにデモンストレーションをしてもらいましたので、あの臆病な教皇がこんな事を言うとは思いませんね」
「って事は、途中で誰かが妨害工作のようなことを、しているってことか? 教皇を中心にまとまっているのに、こういう事がよく起きるもんだ」
「そうでもないですよ。いくら宗教でまとまっていたとしても、人の欲望は際限がないですからね。我々の力を知らない強欲な人間が、私たちからお金を巻き上げようとしているんだと思います」
「トリプルの冒険者を倒せるだけの戦力があるのに、向こうはどうしてこんなに強く出てこれるんだ?」
「樹海を抜ける時に怪我をして、そこを不意打ちして倒した……とか思われてるのではないでしょうか?」
「そんなもんか? ガリアには悪いが、もっかい教皇の所に行ってきてもらっていいか? ダマとスライムたち半分つけるから頼む」
「了解いたしました。この文書を持って問いただしてくればいいんですね?」
「そういう事、もしそれが教皇の意向ならその場で制裁を与えてきてくれ。それに一切金を払う気はない事を伝えてきてくれ。念のため聖都までつながっている地下通路の入り口を、聖都の近くに作るわ。隠し通路みたいにしておくから、マップ先生で確認して何かあった時はそこに逃げ込んでくれ」
「了解いたしました。月曜日になったら出発します」
「面倒ごと押し付けてすまんな。これが終わったらゆっくりしてくれ」
模擬戦は、魔法系スキルの使用不可で、純粋にタンク、物理アタッカーとしての能力を見るものだった。確かに、常に魔法に頼れるわけじゃないから、地の実力を見ておく必要があるんだろう。
レイリーと対峙していつも思うが、これだけの技術を持っている人間が、どうしてレベル一〇〇にも届かない位置で、燻ぶっていたんだろうな? そう考えると怖いものがある。俺たちみたいな環境があれば、レイリーみたいなのが、ごろごろ生まれるかもしれないって事だ。
今打ち合っているレイリーだって、ステータスだけで見れば俺の方が上なのに全く互角。いや、レイリーの方が若干優勢に戦っているのだ。スキルで知識や体の動かし方を覚えた所で、武器をふるうのに適切な動きができるだけだ。
例えるなら、優秀なソフトやアプリが入っているパソコンだけど、スペックが足りてなくて十全に、力をひきだせていない感じだろうか?
処理する自分の頭や体を、鍛えるしかないんだよな。それは訓練等でも培えるが、やはり経験という壁は大きいのだろう。魔法系のスキルを使わないと、レイリーに攻撃が届きもしない。すべて剣か盾で防がれるか避けられてしまう。
ただ、レイリーの攻撃を俺もしっかりと防げている。レイリー程完ぺきではないが、自分の身体にダメージが、残るほどの失敗はしていない。
「シュウ様、魔法を使わなくても強くなられましたな。このレイリー、嬉しく思います。ですが、これで最後にしましょう。私が昔、まだ一兵卒だった頃にあった事のある、ダブルの冒険者から教わった技術です。最近まで使えなかったのですが、やっと使えるようになりました。
それで、あの人の言葉の真意がわかりました。それを私がシュウ様に伝えさせていただこうと思います。『守りたいと思うんじゃない、守るという意志を貫くんだ』……一〇〇歳近くになって、やっとこの言葉の意味が分かるとは、本当に未熟でした。では行きます!」
今、レイリーがいった事は確かに同じようで全く違う。守りたいと思うだけなら誰でもできる。でも守るという意志を貫くためには、色々なものが必要になる。その位ならレイリーが、何十年も悩むわけないよな。
レイリーから得体のしれない、威圧みたいなものが届いてくる。スキルは使っていない、なのに今までとは明らかに違う。だが、今までのレイリーと変わったところはない。ステータスにも変動は見られていないと思うが、明らかに何かが変わった。これが意志を貫くという事なのだろうか?
レイリーが前に踏み出してくる。それは大きな壁が押し迫ってきているような印象を受ける。下がるにしても、きりがなくなってしまう。それに後ろには、離れてはいるが妻たちがいるので、その場にとどまり受けて立つ。
「シュウ様、まだまだ意志が足りないですぞ。そんなもので儂の孫を、他の妻たちを守れるのか? このままでは、シュウ様を倒して後ろにいるみんなに、手が届いてしまうぞ?」
そういう事か。意志を貫く、守りたいものを守る意志、俺は弱かった。そのままでいいわけがない! 俺はみんなを守りたい! 全身全霊で守る、そういう事なんだよな? そして、俺は最近これに近い感覚になってたな。トリプルの冒険者にやられた時だな。
俺はそのまま前に出る。
「いい覚悟です。ですがまだまだですね。最後と行きましょうか」
俺たちは必中の距離で対峙する。どちらも動くことなく一分程睨み合った後、俺たちは急に動き出す。右手に持っている剣を叩きつけ、攻撃のために迫ってくる剣を盾ではじく、何合打ち合ったのか分からないが、次第に押され始める。
レイリーの剣をはじけなくなり、俺の剣はキレイに受け流される。体にダメージがたまってきて動きが鈍るのが分かる。一手遅れたのが分かり、次の瞬間に首に剣を突き付けられていた。
「シュウ様。私の勝ちですね。いいところまでは行っていたと思いますが、私が相手という事で、本気で倒そうとしてませんでしたね? それがシュウ様の弱点です。
時には仲間でも切り捨てないといけない時があるのです。その時は、間違えないでください。タンクとしては合格点は超えていますので、問題ないと思います」
レイリーに合格をもらったが、やはりレイリーには勝てなかったな。それにしても最後の意志を貫くっていうのは、全然感じる空気が違ったな。それに、本気になれなかったところまで、見抜かれてしまったな。歴戦の兵士ってこんな感じのが、沢山いるのだろうか?
合格点をもらえたみたいだから、来週からは違うメンバーを連れていけるな。
そこからは、何もなく一ヶ月が過ぎた。聖国からは調査をしたが、やはりトリプルの冒険者をけしかけた奴はいなかった。止めようとしたが、移動が速すぎてどうにもならなかった。ミューズにおける被害に関しては弁償をするが、特級戦力の喪失をディストピアにも補償してほしいとの事だった。
今はグリエルの執務室だ。
「グリエル、ガリア、これって完全になめられてる?」
二人は肯定のため首を縦に振る。
「樹海における遭遇戦で、放置していたらディストピアの人間が、不幸になるのに放っておけるわけないよな? それに向こうから攻撃を仕掛けてきたんだから……なんて建前はいらんな。これは教皇の意見だと思うか?」
「スカルズの皆さんにデモンストレーションをしてもらいましたので、あの臆病な教皇がこんな事を言うとは思いませんね」
「って事は、途中で誰かが妨害工作のようなことを、しているってことか? 教皇を中心にまとまっているのに、こういう事がよく起きるもんだ」
「そうでもないですよ。いくら宗教でまとまっていたとしても、人の欲望は際限がないですからね。我々の力を知らない強欲な人間が、私たちからお金を巻き上げようとしているんだと思います」
「トリプルの冒険者を倒せるだけの戦力があるのに、向こうはどうしてこんなに強く出てこれるんだ?」
「樹海を抜ける時に怪我をして、そこを不意打ちして倒した……とか思われてるのではないでしょうか?」
「そんなもんか? ガリアには悪いが、もっかい教皇の所に行ってきてもらっていいか? ダマとスライムたち半分つけるから頼む」
「了解いたしました。この文書を持って問いただしてくればいいんですね?」
「そういう事、もしそれが教皇の意向ならその場で制裁を与えてきてくれ。それに一切金を払う気はない事を伝えてきてくれ。念のため聖都までつながっている地下通路の入り口を、聖都の近くに作るわ。隠し通路みたいにしておくから、マップ先生で確認して何かあった時はそこに逃げ込んでくれ」
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