ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
674 / 2,518

第674話 馬鹿の相手は疲れる

しおりを挟む
 俺は勇者のいる宿に向かって歩いている。衛兵も泊まっている場所は知っているようで、迷いなく進んでいっている。

 しばらく歩くと目的の宿に到着する。衛兵が宿の主人に話を通していると、食堂にいた野次馬の騒ぎを聞きつけたのか、勇者が部屋から降りてきた。それを見つけた店主が、あの人たちが勇者一行だと告げた。

「勇者御一行様。あなたのパーティーメンバーが、色街で問題を起こしました。力に任せて女性を抱こうとしており、駆けつけて捕えようとした衛兵に向かって、武器を抜きました。

 この街では両方とも重罪であることは、街に入る際に伝えてありましたが、守ってもらえませんでしたので、今は捕えて牢屋に入っています。それをお伝えしに来ました」

 勇者パーティーは、慣れているのか苦笑いをしているだけだった。その中で勇者二人は、苦い顔になっていた。

「すまないが、ジェニスと話す事は出来ないだろうか?」

「正規の手続きを踏んでいただけるのであれば、面会は可能です」

 衛兵が答えをかえすと、パーティーメンバーの男が出てきて、

「俺たちは、王国に召喚された勇者様のパーティーメンバーですよ」

「それは知っていますが、それと今回の件と何か関係がありますか?」

「勇者様が頼んでるのに、すぐ会えないのはおかしくないですか?」

 あくまで勇者からの話なんだからと、上から目線で衛兵を諭そうとしている。あまり衛兵頼りにしていると良くないか。

「この街では、勇者も貴族も王族も一般市民も関係はない。よって自分たちが特別であると言う主張は、聞き入れられない。正規の手続きを踏んで面会するように」

「君……まだ若いのに、そんなことを言っていいのかね? 君の上司が困ったことになるよ?」

 勇者は、なんで止めないのだろうか? まともな人間の方だと思ってたのにな……

「みんな、少し静かにしてくれないか? どう考えても、ジェニスが悪いのは明白だ。それなのに勇者の名を使って、圧力をかけるのはやめないか。それにこの街では、勇者の名前は通用しない。入る前に聞いただろ? それなのにルールを守らないんだ、痛い目にあってもしょうがないだろ?

 みんなも考え直した方がいい。今までは何も言っていなかったが、さすがにこれ以上は俺たちも、君たちを庇う気はないよ。何も知らない俺たちを育ててくれた恩はあるけど、すでに返し終わっている。君たちも十分に、いい思いをしただろ? それもここまでだ」

 何となくこいつらの関係性が見えてきた。でも、そうなると勇者のパーティーが、十人同じ所に重なっていたのは、どういう事なんだろうか? 予想では、勇者二人がボコボコにしたと思っていたが、恩があるならそこまではしないか? 謎が増えた。

「そういう関係だったわけか」

「あれ? よく見たら君は、ジャルジャンの街にいたよね?」

「そうだね。こんなに早く再会するとは、思ってもいなかったよ。ちなみに俺がここにいる理由は、この街が俺が作ったからで、勇者のパーティーが相手だから呼ばれたんだよ」

「って事は、君が噂のシュウってことか……あの時に気付けなかったとはね」

「そこらへんはどうでもいいだろ。君たち二人は、今回の件を納得しているようだけど、後ろのパーティーの方々は、納得していないようだね。すぐに納得しろと言われても無理だよな……

 でもな、脅しをしているつもりが無くても、そこの男は俺や衛兵を脅しているわけで、それもこの街では犯罪なわけ。牢屋まではいかないが、詰め所で話を聞かせてもらわないといけない、レベルではあるんだよな。入る前にきいたろ?」

 俺のセリフに、俺を諭そうとした男が若干キレかけていた。連れていこうとした衛兵の手を振り払い、武器を抜こうとして、勇者に蹴飛ばされる。

「これ以上罪を重ねるな。ここで実力行使に出たら、それこそ取り返しがつかなくなる」

 蹴飛ばされた男は、訳の分からない事を言いながら立ち上がり、勇者に止められた抜剣をしてしまう。それにつれられて、他のメンバーも武器を抜いてこちらに向けてきた。

「店主、すまんが退避してくれ。後でゼニスをここに寄越すから、その時に賠償の話をしてほしい。野次馬してるやつらも、これ以上は危険だから逃げた方がいいぞ。ここから先は怪我をしても保証はないぞ!」

 そういうと全員が宿から出て行った。

「……もう止まれないのか?」

「そうだな。お前がもっと早くこいつらを止めてたら、変わってたかもな。恩義があったとはいえ、こんな傲慢な考え方をした奴らを、のさばらせてたんだ。その罪の一端は、お前たちにもあると俺は思う」

「…………」

 どんな心境なんだろうな?

「そろそろシュリが来る。一回外に引きずり出すぞ。【チェインバースト】」

 パーティーメンバー九人に鎖を繋げて、強引に外に放り投げていく。追いかけて俺たちも外に出る。シュリはよく状況が分かっていないが、飛んできた勇者のパーティーの何人かを、殴り飛ばしていた。ちょっと過激すぎやしませんか?

 シュリの攻撃をくらって、四人が戦線離脱。後ろから出てきた二人の勇者の顔が引きつっていた。

「シュリ、こいつらは街の中で武器を抜いた。そこで寝ている奴等みたいに、無力化したい。協力してくれ」

 俺がシュリに声をかけている間に、魔術師の女が立ち上がっており、杖を構えて魔法を唱えていた。街中で魔法とか馬鹿なのだろうか?

 次の瞬間には動きの速いアリスが、魔導師の女の傍にいてお腹を殴りつけていた。後衛の人間が、超攻撃的なアリスの攻撃をくらって、無事でいられるわけはないわな。

「この距離で、のんびりと魔法を唱えられると思っているの? よくそれでAランクの冒険者になれたわね? それともシングルとAランクには、私が思っている以上に差があるのかしら? 壁があるのは理解していましたが、ここまで能力や技術に差があるのかしら?」

 可愛く首をかしげているが、やった事はえげつない。そんな呟きをしていたアリスに向かって、近くにいた二刀流の前衛と弓使いが、攻撃を仕掛けようとしている。弓なのに距離が近すぎる……アリスは流れるような動きで、弓使いに迫り鞘から抜いていない大剣の腹で叩き、十メートル程吹き飛ばす。

 後ろから迫っていた二刀流は、アリスに攻撃する寸前に、横からシュリのシールドチャージを受けて、十五メートル程とばされていた。

 残る二人はヒーラーと……何だろうな? 楽器を持ってるから、吟遊詩人的なバッファーか? と言っても見逃すわけにはいかないので、ピーチがあまり得意ではない土魔法で、土の塊を高速でぶつけて事態は収拾した。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...