ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
675 / 2,518

第675話 勇者のパーティーの最後

しおりを挟む
 馬鹿どもの対処は終わったけど、これから勇者はどうするんだろうな? そうすると確か……シンゴと名乗っていた勇者が、俺の方に近付いてきた。

「うちのパーティーメンバーが迷惑をかけた。本当に申し訳ない。これからこいつらは、どうなるんだろうか?」

「俺は街を作って、法律の原案を出しただけだからな……司法を担当している人間にもよるだろうが、この街で武器を抜き、領主である俺や衛兵を攻撃しようとしたのだから、最悪極刑もありえる。

 他の街なら、領主に武器を向ければ、問答無用で極刑だろうけどな。良くて犯罪奴隷で、能力が高いのならヴローツマインで、奴隷戦闘鉱員として衣食住に困る事は無いかもな」

「奴隷の首輪を使うのか?」

「そういう事になるだろうな。何か問題でも?」

「問題と言えば問題はあるのだが……奴隷の首輪は、欠陥品だと知ってるか?」

「特定の魔力を流すと外れてしまう、っていう仕掛けのことか?」

「っ! それを知っているって事は、外せない奴隷の首輪もあるって事かな?」

「そういう事だな。魔道具の解析に長けた奴が教えてくれて、改良したのが中立都市に出回っているよ。それにしても、今まで誰も気付かなかった事に、気付けたのは……

 召喚された時に付与された、スキルのおかげかな? 迷惑かけられた勇者たちにも、厄介なスキル持ちがいたからな……勇者の特殊なスキルは、面倒だと判断したんだよな」

「そこまで知っているんですか……」

「いや、召喚された勇者は、神に称号と特殊なスキルを授かるって伝わってるぞ。俺のじーちゃんが勇者だったしな。他にも、それと対となるダンジョンマスターは、ダンジョンを作る能力を与えられて、自分の作ったダンジョンに、こもっていることが多いって話もあるな」

 適当に話をでっちあげてそれっぽく話してみる。

「やっぱり、親族に勇者がいたんだね。日本っぽい名前だと思ってたからね。君の想像した通り、召喚された時にもらったスキルが、解析系のスキルだったからね」

「おぃおぃ、自分のスキルを自分から明かすな。危機感が足りないんじゃないのか?」

「そんなことないよ。解析系のスキルは分かっていても、対処は無理だからね。それに鑑定が出来るわけじゃないから、知られたところで何もないさ。勇者の称号のおかげで、魔物に対しては有利に戦えるからね。こっちの方が本命だと思っているよ。このおかげで生活費に困らないで済んでいるんだからね」

「自分の力は、ある程度隠しておくものだぞ……ってそれ以外にも、自信があるってことか?」

「そうだよ。こう見えて武芸には長けていて、特に武器を使った戦場格闘技をならっていたんだよ」

 ふ~ん、生身で覚えた天然のマルチウェポンってことか? 俺のスキルで覚えた、にわかとは違うのだろう。

「なるほどね、自信があるって事ね。これ以上は突っ込まない方がいいな。それで他に聞きたいことはあるか?」

「中立都市とはいえ、一応俺たちは王国の勇者のパーティーという事で、王国から干渉があると思うけど、それは大丈夫なのかい? 迷惑をかけたのはこちらだから、協力をしてもいいと思っているけど、どうするのかな?」

「あ~王国……いや、国王はこの件に、絶対に干渉してこないよ。君たちがいつ召喚されたのか知らないけど、国王は俺たちに干渉しようとする勢力がいれば、喜んで切り捨てるさ」

「……何をしたんだい?」

「たいしたことじゃない。フレデリクとリーファスという街の名前は、きいたことあるか?」

「君が王国内に持っている、領地の事だろ?」

「で、フレデリクが俺の街になってから、国王から奴隷兵が差し向けられたことがあったんだ。その際に、全員を返り討ちにしてやったんだよ。これ以上干渉するより、放置する方がいいと判断してるはずさ」

「それだけの実力があれば、何かしらの思惑に巻き込まれるのはしょうがないか。それが嫌で樹海という危険な場所に、街を作ったって事かな?」

「そういう事だ。ここにいる限り勇者という名は、意味がなくなるから、好きなだけ楽しんでいくといい。この街は、元々日本人が作ったダンジョンだと思う。じいちゃんに聞いた事のある物が、ダンジョンから出てるから間違いないんじゃないかな?

 使い方が分からないものも多いから、珍品として外の貴族が大金をだして買って帰るから、俺としてはお金が動くから助かるんだけどな」

「そうなのか。勇者という色眼鏡で見られないのは嬉しいな。ダンジョンもあるんだよな、2人では深いところまではいけないからな。気の合う仲間が見つかるといいな」

「ここには、外と違う冒険者組合があるから、行ってみるといい。臨時パーティーを募集している人もいるから、話を聞いてダンジョンに行ってみるのも悪くないさ。

 組合の中で臨時パーティーを募集しているのは、今まで一度もトラブルを起こしていない人たちだから、良い人もいると思うよ。ただ自分の身は、自分で守るのが基本だからな、気をつけろよ」

「助言、ありがとう。ユウキ、この街で頑張ってみるか?」

「そうだな。恩があったとはいえ、ウザい奴らと縁が切れたんだ。自由に過ごしても、罰は当たらないよな? シュウ、面倒をかけたけど感謝しているよ。また機会があったら話を聞かせてくれ」

「ここに住んでれば機会があるかもしれないさ。一応、衛兵にどこに泊まってるかだけ教えてくれ。あいつらの処分が決まったら、どうなったかだけは連絡をさせるから。後、パーティーメンバーって事は、こいつらの私物を渡す事になるから、場所が分からないと困る」

「あいつらの持ち物も、俺たちに渡すのか?」

「そうだよ。この街は潤ってるから、没収しなくてもお金に困る事は無いからな。それにもし荷物持ちの人間が捕まって、全部没収されたら困るだろ?

 そこを考慮して、固定でパーティーを組んでいる仲間がいるなら、そいつらに渡す事になってる。もし着服したらこの街にいれなくなるから、衛兵も不正に手を染めないようにみんなで見張りあってるよ」

「いい街なんだな」

「中には、アホな貴族や鼻の高くなった馬鹿どもがいるから、注意してくれよ。これからしなきゃいけない事もあるから、またな」

 シンジとユウキの勇者コンビをその場に残して進んでいく。気絶している元勇者のパーティーメンバーは、衛兵に担がれて連れていかれる。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

処理中です...