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第687話 国王と交渉
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対応に悩んでいると、俺が行動に移すより早く事態が進展する。扉が開かれ、国王が出てきた。
「ダールトン侯爵、この騒ぎは何だ?」
「謁見の間に武器を持ち込もうとした、不届き者共を捕えるため。深紅の騎士団とはいえ、平民の風情が侯爵である私に剣を向けた不敬罪で、捕らえさせるところでございます」
「そうか、分かった。近衛たち、この者を捕えよ」
ダールトン侯爵は勝ち誇った顔をしているが……次の瞬間、近衛たちに護衛の騎士共々捕えられていた。
「近衛の方々、私ではなくあちらです!」
「ダールトン侯爵……いや、国家反逆で捕らえたからには、元侯爵だな。この者たちは国賓だと、説明がされているとの事だが、私が国賓と決めた者に剣を向けたのだから、反逆罪に問われても不思議でない事は、理解できているよな? 近衛たちよ、牢屋に連れていけ」
ギャーギャー言っている、元侯爵のダールトンが口を塞がれて、連れていかれていた。
「シュウ殿、迷惑をおかけした。こちらの都合で申し訳ないのだが、本当に助かった。色んな犯罪を犯しているのだが、決定的な証拠がなくてな。国賓であるシュウ殿を害そうとしたのだから、問題なく国家反逆罪で一族すべてを巻き込んで、粛清をする事ができる」
「もしご主人様が怪我をしたら、どうするつもりでしたか?」
おっと、ここに来てキリエが若干キレている雰囲気を、醸し出している……
「シュウ殿に危害を加えられない事は、君たちを見ていればわかる。それに深紅の騎士団一の剣の使い手を付けたのだ、その可能性はゼロだと言ってもいい」
「それでもケガをされた場合は、どうするつもりでしたか?」
「シュウ殿の世話をするメイドたちは、回復魔法を使えると聞いているので、問題ないと考えていた」
「他力本願な部分がありますね」
「それは否めないが、こちらで対応するより、そちらの方で対応した方が確実だと思っていたので、深紅の騎士団長以外は、手を出させないようにしていたのだよ」
「キリエ、それ以上はやめておけ。このタヌキの言ってることは、あながち間違ってないからな。それよりさっさと話をすすめよう。こっちには時間がないんだ」
急ぐように合図を出すと、国王が部屋に招き入れた。そこには近衛騎士団の団長と副団長と思わしき騎士と、四人の文官がいた。後は見えない位置に、十人程隠れているのが分かった。誘導されるように席に着く、十人程が座れるような円卓の机が置いてあった。
「話し合いを始める前に、一ついいか? この部屋に隠れた人間が十人程いるんだが、そいつらは排除してもいいのか?」
俺がそういうと、イリアが精霊魔法を唱えて火・水・風・土の中級精霊を呼びだした。
瞬く間に召喚された精霊を見て、近衛騎士団の二人は顔を引きつらせていた。
「おっとすまない。お前たち、あの馬鹿侯爵はもういないから、元の配置に戻っていいぞ」
国王がそういうと、陰や天井の近くからアサシンみたいなやつらが出てきて、部屋の外に出て行く。
「ふ~ん。一応確認しておくけど、俺たちの武器を取り上げるのか?」
「武器を預けてくれるのか?」
「断る」
「じゃぁ、いちいちきかんでくれ」
「それにしても、俺に対する対応の態度が大分変ったな」
「どこまですると、ドラゴンの尾を踏むか理解できたからの態度じゃよ。この位なら君は気にも留めないだろ? むしろ、国王だからとふんぞり返っている態度の方が、君は嫌うんじゃないか?」
「正解だ。なかなかいい勘してるな。この辺で無駄話を止めようか。ここに来た理由は分かってるみたいだけど、リブロフの件で確認しに来た。どういうことだ?」
「簡単に言えば、国王である私の命令無視して出兵してしまっている。絶対にやめろと言ったのだが、君の実力を知らないアホ貴族共が、景気の良くなったリブロフを取り返して、ジャルジャンまで手に入れる! とか言い出してしまってな。
出来るなら、出兵した貴族だけ処理してもらえると、こちらとしては助かるんじゃが」
そんなことを言いながら、チラチラ俺の方を見てくる国王……こいつ良い性格してるな。国家反逆罪の事が無ければ、いい友達に慣れたかもしれないな。
「チラチラ見んな! 貴族だけを処理したとして、俺のメリットはなんかあるか? 個人的には、黒龍のバッハもいるし、鍛えたワイバーンが五匹もいるから、皆殺しの方が楽なんだよな。範囲のブレスとかあるし?」
「君に対して駆け引きは良くないな。率直に言う。今回私の命令を無視して出兵した軍の、貴族とその側近だけを処理してほしい。多少の兵たちの損害は気にしないが、馬鹿貴族の命令であるため、兵士の立場の人間は、拒否権が無いのだ。その部分を考慮して頂ければと思う」
「そこが本音か。確かに、上からの命令を拒否できないのが軍隊だよな。一つ聞いていいか? いくら軍隊でも、下っ端の人間に拒否権は無いだろうけど、隊長クラスの人間には、ある程度の権限はあるだろ? そこらへんはどうなんだ?」
「今回出兵している軍隊に、そういった事ができるかは不明だが、王国でも帝国でも、隊長クラスの人間であれば、異議を唱えられるようになっているはずだ」
「そっか、じゃぁ俺らが処理する対象は、貴族とその側近、隊長クラスの人間という事でいいのか?」
「そうだな、隊長クラスもグルになっている可能性の方が高い。ある程度の戦力になるから、死なれてほしくは無いがやむを得ないだろう」
「ここまでが仕事内容だな。それをする事による、俺たちのメリットは何だ?」
「貴族共の財産の半分、という事でどうだろうか?」
「全部じゃなくて半分か? どれだけ蓄えているか知らないが、立て直すことを考えると、全部を渡してたら破算してしまう可能性もあるか? 最後に一つ。何故王国は近衛や新規の騎士団を使って、貴族を処理しなかった? 命令違反なのだろ? 反逆罪で処理ができるんじゃないのか?」
「隠しても仕方がないことだから白状するが、国家反逆罪に問うには貴族の数が多すぎたのだ。いくら国王といえど、本音では自分たちの利益のためと思っていても、建前で国の事を思ってと言われてしまえば、複数の貴族を同時に、国家反逆罪に問うのは難しいのだ。君にお金を払う事で処理を依頼したい」
「ふ~ん、処理したことによって、派兵が強まる事は無いのか?」
「強く言う事は出来ない。中立地域での武力行使だ、死んだとしても何も言えないのだ。内心では言いたいことはたくさんあってもな」
「そういうエリアって事か。まぁわかった。それで手を打とうか。処理が終わったらまた来るけど、処理のために人材を借りていきたいんだが、良い人材がいるか?」
「そうだな……深紅の騎士団を十二人程連れていけるのなら、簡単になると思うがどうだろうか?」
「それでいいか。大箱の馬車、十二人が乗れる奴はあるか? それを使って、バッハに運んでもらうわ。出来るだけ早く準備してくれ」
「了解した。三十分で準備させる」
俺はバッハの待つ広場まで連れて行ってもらい、深紅の騎士団が来るのを待っていた。
「ダールトン侯爵、この騒ぎは何だ?」
「謁見の間に武器を持ち込もうとした、不届き者共を捕えるため。深紅の騎士団とはいえ、平民の風情が侯爵である私に剣を向けた不敬罪で、捕らえさせるところでございます」
「そうか、分かった。近衛たち、この者を捕えよ」
ダールトン侯爵は勝ち誇った顔をしているが……次の瞬間、近衛たちに護衛の騎士共々捕えられていた。
「近衛の方々、私ではなくあちらです!」
「ダールトン侯爵……いや、国家反逆で捕らえたからには、元侯爵だな。この者たちは国賓だと、説明がされているとの事だが、私が国賓と決めた者に剣を向けたのだから、反逆罪に問われても不思議でない事は、理解できているよな? 近衛たちよ、牢屋に連れていけ」
ギャーギャー言っている、元侯爵のダールトンが口を塞がれて、連れていかれていた。
「シュウ殿、迷惑をおかけした。こちらの都合で申し訳ないのだが、本当に助かった。色んな犯罪を犯しているのだが、決定的な証拠がなくてな。国賓であるシュウ殿を害そうとしたのだから、問題なく国家反逆罪で一族すべてを巻き込んで、粛清をする事ができる」
「もしご主人様が怪我をしたら、どうするつもりでしたか?」
おっと、ここに来てキリエが若干キレている雰囲気を、醸し出している……
「シュウ殿に危害を加えられない事は、君たちを見ていればわかる。それに深紅の騎士団一の剣の使い手を付けたのだ、その可能性はゼロだと言ってもいい」
「それでもケガをされた場合は、どうするつもりでしたか?」
「シュウ殿の世話をするメイドたちは、回復魔法を使えると聞いているので、問題ないと考えていた」
「他力本願な部分がありますね」
「それは否めないが、こちらで対応するより、そちらの方で対応した方が確実だと思っていたので、深紅の騎士団長以外は、手を出させないようにしていたのだよ」
「キリエ、それ以上はやめておけ。このタヌキの言ってることは、あながち間違ってないからな。それよりさっさと話をすすめよう。こっちには時間がないんだ」
急ぐように合図を出すと、国王が部屋に招き入れた。そこには近衛騎士団の団長と副団長と思わしき騎士と、四人の文官がいた。後は見えない位置に、十人程隠れているのが分かった。誘導されるように席に着く、十人程が座れるような円卓の机が置いてあった。
「話し合いを始める前に、一ついいか? この部屋に隠れた人間が十人程いるんだが、そいつらは排除してもいいのか?」
俺がそういうと、イリアが精霊魔法を唱えて火・水・風・土の中級精霊を呼びだした。
瞬く間に召喚された精霊を見て、近衛騎士団の二人は顔を引きつらせていた。
「おっとすまない。お前たち、あの馬鹿侯爵はもういないから、元の配置に戻っていいぞ」
国王がそういうと、陰や天井の近くからアサシンみたいなやつらが出てきて、部屋の外に出て行く。
「ふ~ん。一応確認しておくけど、俺たちの武器を取り上げるのか?」
「武器を預けてくれるのか?」
「断る」
「じゃぁ、いちいちきかんでくれ」
「それにしても、俺に対する対応の態度が大分変ったな」
「どこまですると、ドラゴンの尾を踏むか理解できたからの態度じゃよ。この位なら君は気にも留めないだろ? むしろ、国王だからとふんぞり返っている態度の方が、君は嫌うんじゃないか?」
「正解だ。なかなかいい勘してるな。この辺で無駄話を止めようか。ここに来た理由は分かってるみたいだけど、リブロフの件で確認しに来た。どういうことだ?」
「簡単に言えば、国王である私の命令無視して出兵してしまっている。絶対にやめろと言ったのだが、君の実力を知らないアホ貴族共が、景気の良くなったリブロフを取り返して、ジャルジャンまで手に入れる! とか言い出してしまってな。
出来るなら、出兵した貴族だけ処理してもらえると、こちらとしては助かるんじゃが」
そんなことを言いながら、チラチラ俺の方を見てくる国王……こいつ良い性格してるな。国家反逆罪の事が無ければ、いい友達に慣れたかもしれないな。
「チラチラ見んな! 貴族だけを処理したとして、俺のメリットはなんかあるか? 個人的には、黒龍のバッハもいるし、鍛えたワイバーンが五匹もいるから、皆殺しの方が楽なんだよな。範囲のブレスとかあるし?」
「君に対して駆け引きは良くないな。率直に言う。今回私の命令を無視して出兵した軍の、貴族とその側近だけを処理してほしい。多少の兵たちの損害は気にしないが、馬鹿貴族の命令であるため、兵士の立場の人間は、拒否権が無いのだ。その部分を考慮して頂ければと思う」
「そこが本音か。確かに、上からの命令を拒否できないのが軍隊だよな。一つ聞いていいか? いくら軍隊でも、下っ端の人間に拒否権は無いだろうけど、隊長クラスの人間には、ある程度の権限はあるだろ? そこらへんはどうなんだ?」
「今回出兵している軍隊に、そういった事ができるかは不明だが、王国でも帝国でも、隊長クラスの人間であれば、異議を唱えられるようになっているはずだ」
「そっか、じゃぁ俺らが処理する対象は、貴族とその側近、隊長クラスの人間という事でいいのか?」
「そうだな、隊長クラスもグルになっている可能性の方が高い。ある程度の戦力になるから、死なれてほしくは無いがやむを得ないだろう」
「ここまでが仕事内容だな。それをする事による、俺たちのメリットは何だ?」
「貴族共の財産の半分、という事でどうだろうか?」
「全部じゃなくて半分か? どれだけ蓄えているか知らないが、立て直すことを考えると、全部を渡してたら破算してしまう可能性もあるか? 最後に一つ。何故王国は近衛や新規の騎士団を使って、貴族を処理しなかった? 命令違反なのだろ? 反逆罪で処理ができるんじゃないのか?」
「隠しても仕方がないことだから白状するが、国家反逆罪に問うには貴族の数が多すぎたのだ。いくら国王といえど、本音では自分たちの利益のためと思っていても、建前で国の事を思ってと言われてしまえば、複数の貴族を同時に、国家反逆罪に問うのは難しいのだ。君にお金を払う事で処理を依頼したい」
「ふ~ん、処理したことによって、派兵が強まる事は無いのか?」
「強く言う事は出来ない。中立地域での武力行使だ、死んだとしても何も言えないのだ。内心では言いたいことはたくさんあってもな」
「そういうエリアって事か。まぁわかった。それで手を打とうか。処理が終わったらまた来るけど、処理のために人材を借りていきたいんだが、良い人材がいるか?」
「そうだな……深紅の騎士団を十二人程連れていけるのなら、簡単になると思うがどうだろうか?」
「それでいいか。大箱の馬車、十二人が乗れる奴はあるか? それを使って、バッハに運んでもらうわ。出来るだけ早く準備してくれ」
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