ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第829話 カレリア2日目

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 現在は、朝食が終わって少し経った時間だ。カレリアの商会予定地では、すでに慌ただしく準備が始まっていた。1階の生鮮食品を取り扱うエリアに関しては、市場調査……特に価格設定が分かれば、すぐにでもオープンする事ができるので、売り場の調整がすでに始まっている。

 すでにダミーの商隊がくることになっているらしい。そこまでしてるのかと苦笑してしまったけどね。

 商売を始める前に、この街の役所に申請をしに行かなければならないのだが、最近有名になっているカザマ商会なので申請を拒否されることはまずない。

 扱いは貴族で公爵クラスなので、もしここで申請を拒否しようものなら、反逆罪に問われてしまうと、今朝意識をこっちに移す前にゼニスが教えてくれた。

 俺は俺の仕事をするかな。俺に建築のセンスはないので、妻たちや商会の人間に確認をとりながら作成していく。室内に関しては、基本俺の趣味なので有無を言わさず作成している。もちろん商会の人間たちが主に使うエリアは、みんなの意見を反映している。

 反映しているだけで、主軸となるものは俺の趣味なのだ! 俺に作らせるという事は、こういう事なのである!

 完成した部屋に魔導具を設置して、ディストピアにいるグリエルやゼニス等、各所につながるか確認を取り作業を終了する。作業が終了したら、現状を伝えるために設置した設備を経由して、ゼニスに色々な確認を取っているようだ。

 基本的に自分たちで色々準備はしているが、最終確認や気になる事の相談をカメラを通して行っているらしい。カメラの向こうでは、ゼニス以外にも手の空いていた商会の幹部がいて、議論を交わしているみたいだ。俺にはかかわりのない話なので、その様子をながめて『大変だな~』等と他人事のように思っていた。

 俺が今日する事は、すでに終わってしまったので、テラリウムの様子を見に地下へ戻る。

「ん~やっぱり、いつ見てもこれはすごいな。って、いつ見てもとか言う程回数見てないか」

 自分の口走った感想に、自分で突っ込みを入れていた。部屋の中では、木霊たちがミドリやブラウニーと協力して手入れをしていた。昨日の今日で手入れする事があるのかと思ったが、見栄えを意識した手入れをしているようだ。

 ミドリに関しては、手入れだけでなくディストピアに戻った時の事を考えて、次のテラリウムの構想を練っているようだ。木霊とも相談しているようなので、俺が設計したテラリウムより上等な物が出来上がるに違いない。楽しみだ……でもさ、ミドリ。君はどこに向かって走っているんだ?

 今までは、8:2位の割合で家事とプライベートだったミドリだが、テラリウムができた事によってその割合が、4:5:1……家事4、テラリウム関係5、プライベート1という感じになっている気がする。

 テラリウムも家に住んでいる人のため、といえば家の仕事に含まれるだろうけど……まぁ、本人が好きな事をさせるのが一番いいか。無理だけはしないように伝えてはいるしな。

 する事を探してもないので、ミドリが手入れをしている中、本を読む事にした。予想以上に自然の中で本を読むっていうのも悪くないな。俺お気に入りのソファーを使っているとはいえ、ディストピアの家の世界樹の木漏れ日の中より良く感じる。

 さすがはミドリというべきか、テラリウムに集中していたとしても、俺の食事に関しては手を抜く事はなく、この自然の中で食べるような昼食を準備してくれている。こういう所で食べると言えば、バーベキューか行楽弁当が俺の中で候補にあがるのだが、ミドリが準備したのは行楽弁当だった。

「さすがミドリ! 分かってるね。おにぎりに唐揚げ、厚焼き玉子にアスパラベーコン、サラダまで準備してくれたんだな!」

 俺がドッペルだからと言って、手を抜かないあたり本当に気合が入ってるな。しかも俺の好みに合わせて量も調節されていて、ちょうど食べきると満足できる感じだったのだ。

 食事の好みだけじゃなく、胃袋の大きさまで把握されている。正直これだけ美味しければ、フードファイターみたいにめっちゃいっぱい食べたいけど、胃が受け付けないからな。シュリの体質が羨ましい。

 この世界に来た当初にあの体質だったら、俺は破産してただろうけどな!

 ドッペルの姿でご飯を食べても、本体のお腹は膨れないので、今日も今日とてドッペルの体で食べてから意識を戻して本体でも食事をする。そして、ミドリと他のシルキーの連携のいい事、昨日の昼から4食分の食材が全くかぶってないのだ。

 ドッペルの体で揚げ物が多ければ、本体はさっぱりした物が多かったりと、1食のタイミングで2食分の食事を食べるので、色々考えてくれているようだ。

 今回のドッペルは、まだ自立するように設定していない。理由はいくつかあるが、自立するように設定するとある程度自我が芽生えるので、意識を移していない時の制御が大変になるのだ。現状自立するようになってしまうと面倒なので、自立するようにはしていないのだ。

 ドッペルは従魔と同じ扱いになるが、従魔だって自分のしたい事があるのだ。特に俺の従魔は自由な傾向が強い。ニコやハクはまだまだいい方だけど、クロとギンにニコ以外のスライムたちは、俺より妻やシルキーの言う事の方をよく聞くんだからな、ペットと同じか?

 いつも世話してくれる人たちの方が大切って事なのか? それなのに、ブラッシングや体を洗うのは、俺にやれと圧力をかけてくるんだからな、誰に似たか分からんがわがままな奴らだ!

 そんな奴らでも可愛いから許しちゃうんだけどな。これがダメな飼い主なんだろうな。

 っと話がそれた。落ち着くまではドッペルに自立行動をさせるのはよくないので、今は意識を移して食事をしているのだ。その食事の内容にまで気を使ってくれるシルキーの連携には脱帽である。

 到着して2日目は、色々な準備でつぶれて俺には退屈な午後だった。暇をしているとの事で、時々ディストピアに呼ばれて領主っぽい仕事もしていたけどな!

 綾乃は、さっそくお気に入りのドッペルを連れて街の散策を楽しんだらしい。特に何の発見も無かったが、ホクホク顔で帰ってきたので楽しんだのだと思う。
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