ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第864話 魔法演武

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 ゴーストタウンコロシアム完成イベント4日目、魔法のデモンストレーションという話だったが、言い回しが変わっていた。

「本日は、イベント4日目! 行われるのは、魔法演武! 魔法使いの皆様! 自分の魔法技術を見せる時が来ました! お昼までは、事前に希望された方の魔法演武があります。昼食後は、飛び入り参加の時間になります。すでに昨日から問い合わせがあり、参加者が増えています。

 そして本日の締めには、ディストピアの誇る大魔法使い達の魔法演武がありますので、お楽しみにしていてください!あ、コロシアムの正面入り口西側で、ブラウニーの屋台があります。美味しいですよ! 是非、食べてみてください。では、魔法演武開催だ~~~!!」

 おっと、露骨にブラウニーの露店の広告を入れてきたな。ブラウニーの作る飯は美味しいからな。今回はガッツリ食べれる丼系と、お酒に合うおつまみ系も多い、個人的には焼き鳥や串カツは最高だと思う! ブラウニーの店の近くは、ビアガーデンみたいになってるし、かなり繁盛しているな。

 魔法演武の1人目は、聖国から来た冒険者パーティーの魔法使いのようだ。ランクはB。自己紹介をしているが、ゴーストタウンに来た人に顔を売っておきたいのだろうか?

 得意魔法などを話してはいるが、全部を正直に話しているわけではなさそうだ。冒険者である以上、自分の手の内が全部知られるリスクは避けるだろう。手の内が知られても問題ないレベルで、熟達しているのであれば別だろうけど。

 観客に見せるのは、視覚でわかりやすい火の魔法のようだ。小さい炎からどんどん大きくしていき、ターゲットになるカカシにあてていく。

 最後は、最大まで大きくしたと思ったら、圧縮して炎を飛ばしカカシを焼き尽くした。

 思ったより反応が良くないが、魔法の事を知っている人間からしたら、かなりの技術を持っていると分かる演武だった。

 続けて3人程は、同じようなスタイルだったが、1人目の魔法の使い方には勝てていない印象だ。

 5人目は、この世界では珍しい土魔法使いだ。ここはダンジョンの中なので、地面を利用したりできない分魔力を多く使わなければならないのだが、アースランスを10個以上生み出してカカシを串刺しにしたのは、視覚的にも印象がよく歓声が上がった。

 使い手が多くない分、印象深い演武だっただろう。土魔法使いの本領は、ダンジョンの中ではなく土や石がある場所での戦いだからな。

 穴を掘ったり壁を作ったりというのもあるが、近くにある土や石を利用して攻撃する事が出来るので、広域殲滅でなければ燃費のいい魔法なのだ。俺たちのように収納系のアイテムがあれば、ダンジョンでも問題ないが、その中に土等をいれるなら余分に食料をもっていったりするのが、普通のパーティーだろう。

 何人かの演武が終わって出てきたのは、雷魔法の魔法使いだった。

 魔法スキルがあれば難易度は下がるが、雷魔法は制御が難しいので使い手は多くない。特に生物に対して強力な魔法ではあるが、相手に誘導するのも魔法に組み込まれているため、同じ規模の他の魔法と比べると消費が大きいのが難点だ。

 しっかりと魔法を制御しており、的確に的であるカカシを撃ち抜いている。そして目を見張ったのは、1つの魔法で5つのカカシを撃ち抜いた制御技術だろう。1つずつ撃ち抜く事を考えれば、魔法力は断然少なくて済むが、制御が格段と難しくなるのによくコントロールできたな。

 午前中はそれ以上特に目についた魔法使いはいなかった。

 昼食をはさみ、午後の部へ突入する。

 飛び入り参加の魔法使いもあまりぱっとしなかったが、1人だけ気になる演武を行っていた。

 魔法使いでは、土魔法使いより珍しい、水魔法を攻撃に転用して使う魔法使いがいたのだ。魔術師に限らず、魔力がある人間は飲み水のために水魔法を覚えるが、それを攻撃魔法に転用する人はほとんどいない。

 そんな水魔法を使って魔法演武を行っていた魔法使いの技量は高かった。

 少量の水を圧縮して、ウォーターカッターの要領でカカシを切り裂いていたのだ。地味ではあるが、分かる人には分かる高等テクニックを披露していた。

 そんな人達の演武が終わり、俺たちの演武の出番になった。まずは、イリアの魔法演武だ。

 所定の位置につくと、エルフが得意とする精霊魔法を使って、樹魔法を使ったのだ。普通ならダンジョン内で花を咲かせる事は難しいのだが、魔力によって強引にダンジョンの地面に咲かせたのだ。ダンジョンの特性を知っている魔法使いは、青い顔をしていたのが印象的だった。

 やり切ったイリアは、両腕に力こぶを作るような格好で満足げに頷いていた。

 次に、ライムが所定の位置に向かい、魔法演武を始める。

 ライムが初めに行ったのは、水で作った竜を魔法で作り出して自由自在に操って見せたのだ。そしてその後に、炎で作った竜を作り出し水と同じように自由に操って見せたのだ。

 その後は、見難かったが風で竜を作り、土で竜を作り、雷で竜を作り、氷でも竜を作って見せた。

 そして最後に6属性全てで竜を作り自在に操って見せたのだ。魔法力だけでなく、人間離れした制御も見せた。その光景にコロシアムの外からも、すごい歓声が聞こえてきた。後で知ったが、魔法使いが2~3人気絶していたらしい。

 見た目が派手な竜を作ったライムの後に俺か、ライムとは違う方向だし大丈夫だよな!

 俺は、ダマ、リバイアサン、アリス、ピーチ、ライラ、ジュリエットを連れてコロシアムの中心に立つ。ダマやリバイアサンは小さい状態で移動していたため、可愛いといった歓声が聞こえてきた。

 よし、みんなに指示を出して、俺を中心に正六角形の位置についてもらう。

 魔法をイメージして、軽く足をあげ踏み下ろす。足が地面につくと同時に、4人と2匹の足元から石柱が伸びて、みんなを10メートル程上まで押し上げる。

 少し歓声が聞こえたが、それ以上にこれから何をするんだ? みたいな事が聞こえてきた。

 俺は右手を上げ、俺の体を包むように10m程の水柱を作り、手を回す仕草と同時にウォーターカッターを1m間隔で周囲には放ち、みんなの足元の石柱を輪切りにする。

 その後はダルマ落としの感覚で、6本の石柱に向かって空気の塊を同時に発射して、1段ずつ抜いていく。その様子が面白かったのか、子供にはウケていたように見えた。

 とはいえ、最後がこれじゃあ面白くないよな! 次に行ったのが見た目でも分かりやすい、水球を作った。その数は50個。その水球を半球状に配置する。

 その水球を、

【マルチプルフレア】

 炎の魔法で同時に撃ち抜き蒸発させる。同時に100個の魔法を制御して見せたのだ。魔法の事が分からない人達にも、なんとなく凄さは理解してもらえただろう。

 そして、水蒸気で目隠しをしている間に最後の魔法の準備に入る。1つ1つは規模の小さい火魔法だが、それを同時に1000個以上制御して放つ魔法だ。意識を魔法に集中する。

 水蒸気が晴れて俺が右手を突き出すと同時に、光の球が空へ上がっていく。

 ある程度高くまで上がった所で、爆発をして小さな炎が周囲に飛び散った。

 魔法で再現した、花火を打ち上げたのだ。イメージだけでなく、制御が必要な魔法の個数が多く少し眩暈がしたが、何とか成功した。

 魔法演武にふさわしい最後の魔法だと俺は思っている。まわりにいたメンバーも驚いており、サプライズが成功した。

 こうして、イベント4日目も問題なく終了した。
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