ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
885 / 2,518

第885話 拠点造り2日目~3日目

しおりを挟む
 悩んでいる所にバッハが飛んできた。

「グッドタイミング! バッハ、ちょっと手伝え!」

 有無を言わさず強制的に手伝わせることにして、持ち上げる事に関しては問題がなくなった。それでも負担を考えて重さは調整しているけどな。魔力回復ポーションも使って、ミスリル合金の四角パイプを大量に作った。

 一応パイプを埋める時に水が入らないように蓋をして土台に打ち込んでいる。50センチメートル角のパイプなので、クリエイトゴーレムで49センチメートル角の穴をあけて打ち込む。

「あれ? 1メートルくらいしか入らないんだが……少し入ったって事は、力次第では下まで埋まるはずなんだが、何でだ?」

 5分程考えて、問題が何だったのか思い至る。

「そりゃ入らないわけだ。穴の中の水の逃げ道がないんだもんな。それなら水の逃げ道を作れば、ビンゴ!バッハ、サクッと押し込んでくれ」

 初めの1本がおやつの時間を過ぎた頃にやっと立った。

 それから怒涛の勢いで柱を打ち込んでいく。いつもの夕食の時間を少し過ぎて、やっと土台になる半分の長さの柱が全部立った。その数、49本。約10メートル間隔で打ち込んだのでこの数になった。ほとんどの時間はミスリル合金の加工の時間だ。

 次の日は、昨日のパイプの上に更にパイプを乗せて、水面より5メートル程高い位置まで床を持ってくるための土台作りに励んだ。

 土木組が昨日の段階で深い溝を掘っているので、今日は上陸組と合流して島の上で戦闘をしている。戦闘組の人数が増えたので、クリエイトゴーレムで接着させるくらいは問題ない。魔法組とアリス、カエデ、リンドが手伝いに来ているので、柱を作るペースがアップしており、俺は柱を建てる事に集中できた。

 そのおかげもあって、柱の上に柱と同じパイプを乗せてつなげるところまで土台が完成した。真上から見ると、昨日は点が等間隔にあったのが、今はマス目状になっている。

 明日はマス目状の所に十字の柱を入れてつなげる予定だ。今のままでは、間隔が10メートルもあって床作りにならないからな。せめてその半分5メートル間隔位に出来ないと、どうにもならない。ただ、床も全部金属にするとなると重さがネックなんだよな。重機がないからどうしてもな。

「なぁ、2人はどう思う?」

 建築の心得がある、カエデとリンドに話を聞いてみる。

「シュウは考えすぎじゃないか? 本来の建て方をするなら無茶もいい所だが、クリエイトゴーレムで補強したりするのだから、重要なところにだけ金属で補強してあげれば、後は普通の木材……建築に向いている物を使えば問題ないでしょ。クリエイトゴーレムのおかげで、劣化を気にしないで済むんだからさ」

「なるほど! 土台が完成したら今度は、木材を使って建築していけばいいのか!」

「建材についてだけど、強化はあまり過剰にしないでほしい。釘なんかが刺さらなくなるから。土台と一緒で、自己修復の修復力を使って、強く固定できれば倒壊の可能性も減るから。だけど、地震とかで倒壊しなくても、揺れはダイレクトに伝わるから、家具とかが倒れて大変かもね」

 なるほど、土台と一緒の方法で強く固定するのか。建物が壊れないで、人が死なないなら家具が壊れるくらいどうでもいいだろう。

 ちなみに、土台を建てる時に柱より穴を狭くしているのは、木造建築の技法を流用している形だ。原理は全然違うが、強引に狭い所へ打ち込む事によって、修復機能で元に戻ろうとする力を固定する力に使っているのだ。

「じゃぁ、明日の十字のパイプが全部設置できれば、すぐに床に取り掛かれるか?」

「そうだね、全面をすぐにって言うわけにはいかないけどね。後、1つ気になったんだけど、海岸に溝を作ったんだから、みんなを島に上陸させて戦わせる必要あるの?」

「あ~それね、魔物がずっと同じペースで沸いてるのか調べてもらってるんだよ。今まで魔物同士で戦っていたから次々沸くのか、だれが倒しても次々沸くのか……俺たちが狩る事によって、多少沸く頻度が変わるか気になってね。

 まぁ、俺たち程早く狩れる冒険者パーティーは、ディストピアにはいないから、指標みたいなものかな? それを調べてもらってるんだよ」

 ただ、みんなにはこの事を話していなかったので、話を聞いていた全員が納得をしてくれた。

「シュ、シュウ様! 少しお話いいですか?」

「どうした?」

 緊張した様子で、土木組のメンバーの娘が俺に話しかけてきた。

「私たち土木組なんですが、島に上陸するより拠点造りの方が役に立てると思います」

「え? どういう事?」

「私たちは、戦闘訓練を積んではいますが、基本は土魔法を中心とした工作部隊なんです。シュウ様や綾乃さん、バザールさんみたいにミスリル合金みたいなものを加工できませんが、木材や土、岩を媒体としたクリエイトゴーレムなら問題なく使えます。

 それに合わせた魔核も作ることができますので、拠点造りの方がお役に立てると思います。それに、建物作りも覚えたいと思っていましたので、よろしければ拠点造りに回してください!」

「まじか……魔法組のメンバーもクリエイトゴーレムでミスリル合金は、くっつけるくらいの加工ならできるようになったけど、完璧に魔核を作る事はまだできないのに……この世界の人間で、初めて魔核作りに成功してるって事か?」

 意外な事実を知って俺は驚いた。

「そりゃ凄いな! カエデ、リンド! 明日は土木組について拠点造りに参加してくれ、みんなに建築の基本を教えてほしい。今回は大分勝手が違うから、役に立つか分からないけど、ディストピアに戻ったらしっかりと教えてやってくれ。

 あっ! でも無理はするなよ? 君たちは、今でも十分に働いているんだから、無理して体を壊さないでほしい」

 そういうと、土木組のメンバーがすごい喜びようではしゃいでいた。建物が建てられるようになったら、もっと忙しくなるのに、本当にそれでいいのかと密かに思っていた。

 俺は、魔法組のメンバーと一緒に十字のパイプを作っていく。1つ目が完成した所で、カエデとリンドが土木組の指揮をとって、木材を加工しながら床を作り始めた。

 クリエイトゴーレムが使える人が増え、俺たちの作業効率は一気に上がった。その日の内に、60メートル四方の床を全面張る事が出来たのだ。

 土台になるパイプと床は、地球の技術であるボルトを使っているのでズレる心配はないが、俺は地球の建築技術を理解しているわけでは無いので、この使い方があっているのか分からないけどな!
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...