ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
954 / 2,518

第954話 予想外の魔物

しおりを挟む
 今は33階を進んでいる。出発して約4時間。この階の7割位の行程は突破できていると思っていいだろう。上の階と特に変化があるわけでもなく、思ったより早く進めている。

 食事などに関しては、歩きながらお腹がすく前に軽食をちょこちょこ食べているが、シルキーたちはピクニック気分なのか、従魔たちの背中の上で景色を楽しみながら、お茶をしたりサンドイッチなどをつまんで色々話しているようだ。

 それはまだ放っておいていいだろう。気になるのはダマなのだが、魔導具の効果が切れているわけでもないのに、調子悪そうなのだ。少し熱っぽいと言って冷たいニコを抱き枕にして、小さいサイズのダマがリアカーみたいなもので運ばれているのだ。

 引いているのは、背中にシルキーを乗せていないギンが引っ張っている。ダマの近くにはハクがいるが……お前はただ飛ぶのに疲れただけだろうな。看病していると見せかけて一緒に寝ているあたり、ハクらしいと言えばらしいのだが。

 ダマには一応、万能薬や回復薬、回復魔法を使ってもあまり効果が見られなかった。無理して連れて行くのもどうかと思ったが、戻ったとしても1匹で置いておくわけにはいかないので、連れていく事を決めたのだ。

 ただ、周りを涼しくすると楽だという事で、リアカーの中だけかなり温度が下げられるような魔導具を作成した。

 原理は簡単、Bランクの魔石を3つ魔核にして、1つは箱な中に氷を雪状に作る魔核、1つは箱の中に風を送り込む魔核、1つは断熱結界のような効果のある魔核の3つをあわせた魔導具だ。風の強さは調節できるので冷やすのには問題なかった。

 マグマから飛び出てくる魚は叩き落として仕留め、天井から襲ってくるコウモリは弓で落としていく。ドロップ品がもったいないと思うが、ダメージが少ないとはいえ危険を冒すリスクは無いので、倒せる時に倒す! 方針で進んでいる。

 34階に到着すると少しだけ状況が変わっていた。何というか、重力を無視したマグマの流れが目の前を流れているんだよね。見えない筒の中を流れている感じかな? しかもそのマグマの流れから、タコの足やサメのヒレのようなものが見えている……

 サメのヒレ!? どうやら新しい魔物が追加されたようだ。みえている部分から推測すると、ってサメのヒレをみてサイズが分かる程サメの事詳しくないし! 魔物だから当てはまるかもわからないしな。ただ思うのは、それなりに大きなサイズなんじゃないか? という事だ。

 ヒレが見えているのだから、マグマの表面に近いはずだ。弓を構えて撃つ! ヒレの近くに着弾して、矢が激しく動き出した。物の数秒で矢は焼け落ちてしまったが、サメの姿を確認する事が出来た。

 凶悪な歯をガチガチさせながら現れたサメは、体長5メートルはあろうかというかなり大きなサメだった。出てきている所がマグマじゃなければ、海のパニック映画に出てきそうな人食いザメのような見た目である。海で見かけたらトラウマになるレベルだな。

 俺たちまでまだ距離があるため、攻撃に転じれないサメがマグマの中で暴れているのが分かる。あのまま放っておくのも危険なので、魔法で追撃してもらい倒す事に成功した。

 やはりこのフロアの特性なのか、氷系の魔法で簡単に死んだ。楽に倒せるのは良いけど、いちいち魔物以外での殺意が高いダンジョンだと思った。

 何とか34階を踏破し35階へ突入して30分位経った頃に、

「ご主人様! よくわからない気配を感じました。何かかなり大きなものが動いているような気配がします。遠ざかったり近付いたりしている気がするのですが、どうも上手くつかめない感じです」

 斥候役のマリーとソフィーが、何やら話した後に俺に報告してきた。

 俺も変な感じがするな~とぼんやり感じてはいたが、マグマの所為だろ? みたいな感じでスルーしていた。いや、スルーとは違うな。正体がつかめない物の詮索をするより、防御に備えておく方がいいと判断して、いつでも結界を張れるようにはしていた。

「みなさん、少し固まって進みましょう。集まっている所を狙われるかもしれませんが、結界や魔法、フォートレス等をいつでも発動できるようにしておいてください」

 隊列を少し詰めて守る範囲を狭くしながら進んでいく。相変わらず散発的にマグマの中から魚やタコが攻撃してきたり、コウモリが飛んできたりするがしっかりと迎撃していく。

 35階も半ばまで進んできた所で、少し遠くからも見えていたのだが、不自然に広い地面のある空間があったのだ。

「怪しさ満点だな」

 思わずこぼしてしまった言葉にみんなが頷いていた。

「マグマの近くを陣取るより、中央で円陣を組んだ方がいいですね。入る前に立ち位置を決めましょう」

 そういってピーチはシュリやアリス、ライムと相談しながら、全員の配置を役割別に割り振っていった。

 調子の悪そうなダマも、さすがに休んでいるわけにはいかなかったようで、顔に水をかけてもらい気合を入れていた。

 一気に中央まで進み円陣を組んだ。その3秒後に四方のマグマから赤黒いヘビとは違うな。何が一番近いかと言えば、一狩り行こうぜの2Gに出てくる、マグマの中から攻撃してくるヤツを少しスリムにした感じだろうか?

 それが4匹も同時に現れたのだ。大きさはサメの倍くらい、10メートル程だろうか? だから一狩り行こうぜのヤツみたいな迫力は無いが、それなりの迫力はあった。

 そいつが急にマグマに潜ったと思ったら、尾びれでマグマを叩いて波を起こして攻撃してきた。

「あぶねぇ!」

 俺たちは同時に結界や魔法で防御をした。次の瞬間には大質量の物がぶつかったような音を立てた。

 危うくマグマで身を焼かれるところだったぜ。魔法を解いてもらい周囲を確認すると、そこら中にマグマが固まりこびりついていた。中にはまだ赤く熱い部分もあった。

 この状態じゃ戦闘もできないので、周囲を冷やす魔法を使い地面の熱をとっていく。

「1つ分かりましたね。あの魔物は私たちを捕食の対象としているわけでは無く、狩りの対象にしているのでしょう」

 食われたり苗床にされるという事はあるが、ただ単に狩りの対象とする魔物は多くない。もし捕食をするのであれば、あのような攻撃は使ってこないだろう。そう言う意味では、かなり厄介な相手かもしれないな。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...