ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第985話 野営地での一幕

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 士官らしき奴らの首にロープを巻いて移動しているときに、トラブル……じゃないな、ハプニングがあった。

 俺に何があったと言うわけではない。

 ロープを数珠繋ぎのようにしており、俺が持っているロープを先頭の奴に、先頭の奴から次の奴、次の奴から更に次という形で繋いでいたのだ。

 その先頭の奴を引っ張って移動していた時に、後ろの奴が『こんな扱いは不当だ!』といってごね始めたのだが無視して引っ張っていたら、騒いでいた奴が静かになっていたので振り返ると、首が締まっていたのだ。

 先頭の奴は、俺の力に逆らうと首が締まるので逆らわずに着いてきたのだが、一番後ろにうるさかった奴は、それに従わなかったのだ。

 その結果、俺と騒いでいた奴を除いた16人が引っ張っていく形となり、力では対抗する事も出来無いのに踏ん張ったせいで倒れて、ロープが首を絞める形で地面を引き摺られていたのだ。

 立っていた16人に助けなくていいのか聞いたところ、助けるためにうごきだしたが、起こした後に全員がボコボコに殴っていた。

 歩いている最中に先頭の奴に聞いてみたら、この中では一番偉かったらしい。

 親の七光りで今の地位に就いたためか周りにも嫌われていたようで、殴れてスッキリしたと言っていた。

 でもな、他国の人間から見ればお前等も対して変わらない評価だけどな。

 騒いでいた奴は、もう迷惑をかけるなと言うことで、縛り方の変更をお願いされた。

 首から首へ繋いでいたロープを、首⇒手首⇒首に変更した。これで首が締まることはなくなったので遠慮なく引っ張って行けるだってさ。しかも、口には布を詰め込まれていた。お前等、どこに隠し持ってたんだ?

 俺に従順したところで、お前等を裁くのは助けた人たちなんだけどな。

 っと言うことがあったのだ。

 で、うるさかった奴は、引き摺られる形で裁きを行う人たちの前に連れてこられた。

「おぉ、シュウ様! この度は助けていただき本当にありがとうございます」

「そう言うのはいいって。俺も仕事でやっただけだからな。それより、食事はしっかり食べたか?」

 俺に近寄って来たのは、この集団のまとめ役だ。領主ではないが、それなりの地位にあり信頼されていた様なので、俺が仕事を押し付けたのだ。

「全員お腹いっぱいに食事をさせていただきました。本当に助かりました。このご恩は絶対に!!」

「だから、そう言うのはいいってば……」

 何度もそう言われて、拒否してるのに、しつこいな。

「一応確認して食糧をつかってるけど、自分の食糧には手を着けてないよな? ここで使ったら帰ったときに苦労するから、先にこいつ等の食糧から食えよ。あっ! でも、日持ちしない物があったら、物々交換してもらってくれよな」

「そこは、何度も言われましたので、周知させています。馬や荷馬車は、本当に頂いてもよろしいのですか?」

「気にするな。あれがないと荷物が運べないだろ? どうせ俺の物じゃないから懐は痛まないし、あんなにあっても俺は使わないからな。有効活用してやってくれ」

「それで、後ろの人たちは……?」

「察していると思うけど、盗賊を率いてた奴らだ。こいつ等をみんなで裁いて欲しいんだ。どんな裁きでもかまわない。殺すのもいたぶるのも解放するのも自由にしていい」

「っ!!」

 このまとめ役の人、結構頭の回転が早いから、俺が言わんとしていることを薄々察してくれている。

「少し時間を頂いてもよろしいですか?」

「あぁ、かまわないよ。でも、俺たちはこれからもう一つ野営地を潰しに行くから、こいつ等の管理をお願いしたい」

「それは、いいのですが……私たちの中にこいつらを取り押さえられる程の力がある者がいないのです」

「あ~そっか、じゃあ、今回出番の無かったお前たちに任せるか!」

 まとめ役の言葉を聞いてなのか、俺の後ろに集まってきていたニコたちスライムに任せることにした。

「その……スライムたちで大丈夫なのでしょうか?」

「問題ないよ。特にこの虹色のスライムは、Sランク相当の実力があるから安心していいよ。ライム、石の壁を作ってくれ。よし、ニコやれ!」

 そう言うと、ニコが体の一部……触手を伸ばして石の壁に拳大の穴が次々に空いていく。

 最後に止めとばかりに、石壁に突撃する。

 石壁が砕けた。

 何かの遊びだと思ったのか、残りのスライム達が俺も俺もと言う感じで、石壁の破片に突っ込んできた。

 見事に石壁が砂に変わってしまった。

「まぁこんな感じです。それに暴れたり逃げたりするようなら、面倒だから殺しちゃっていいよ」

 少し顔がひきつっているけど、大丈夫だろう。

「じゃあ、時間がないからもう行くわ。後はよろしく」

「シュウ様! 前のグループを追うのでしたら、トビという人物をお探しください。私と同じ様にまとめ役をしてくれるはずです」

 ほぅ、前のグループにも、まとめ役が出来る奴がいるのか、いい情報だ!

 準備をしていたシルキーたちに状況聞くと、直ぐにでも出発が可能とのこと。移動時間は、俺たちの馬車で30分もかからないとのことだ。

 それにしても、シルキーたちはよくわからないな。家事精霊だから、馬車の準備とかは違うと思うのに、嬉々としてしてくれるんだよな。

 家の仕事……お前たちの概念の家って何だろうな?

「ご主人様に関わる全てのお世話をすることです」

「え? 俺声出してた?」

「言葉にしなくても、ご主人様は考えている事が分かりやすいですからね。

 私たちの存在意義は、この世界に呼び出してくれたご主人様への奉仕です!」

 胸を張ってスカーレットが俺に言ってくる。

「俺の考えていることがバレやすいのか?」

「ご主人様も身に覚えがあるのでは?」

「そう言えば、妻たちにも分かり易いって言われてたっけな」

「そう言うことです。それより、早く行きましょう。食事の準備中も出来ていますよ。ご希望通りガッツリ食べられるサンドイッチを準備しておきましたよ」

 軽食に近いサンドイッチをガッツリ系に仕上げてくるのは助かるな。

 食べやすいし、何よりガッツリ系のサンドイッチは、鳥カツとか俺の好物を多く作ってくれるんだもんな。

 スカーレットにお礼を言って、馬車に乗り込む。馬車の中では、妻たちがすでに食事を始めていた。
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