ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1013話 集中しすぎた

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「シュウ! モデルができたわよ!」

 趣味部屋パート2となる広い空間の中心でくつろいでいると、扉が壊れそうな勢いで開け放って綾乃が飛び込んできた。

「これは、やり過ぎでござらんか?」

「どうせやるなら徹底的にな! 音響設備とかも、映画館の数倍は金がかかってると思うぞ! 全部DPで魔改造しただけだけどな!」

「で、気になるのでござるが、あれは何でござるか?」

 俺が設置した1000インチ有機ELのモニターをバザールが指をさしていた。

「あ~あれは、魔改造した有機ELのモニターだぞ。どの位大きくできるか試したらこうなった」

「綾乃殿! 指令室のモニターは全部これに統一するでござる! これなら移動も簡単でござるし、必要に応じて増減が可能でござる!」

「採用!」

 綾乃とバザールの間で、よくわからないやり取りがされていた。

 2人が持ってきた指令室のモデル。つか、設計図みたいなもんだな。どこに何を置いて、どういったものを準備する! とか、席の配置やその他もろもろを書き込んだ紙を俺に見せてきた。

「もっときれいに描けよ! 絵が下手過ぎて、説明されても内容が入ってこないわ!」

 おかしいな、綾乃はそこそこ絵が上手かったはずなのに、今回の設計図に書かれている絵は酷かった。なんていうか、ただのガラクタに見えるような絵だった。落書きか?

 なので面倒だが2人から色々聞き出しながら、俺がCADを使ってある程度図面にして、それを3Dにするソフトにぶち込んで、細かい調整をしていく。

「お~これって、思ったより使えるな。家具とかの設定を自分で入力しないといけない事を考えると多少面倒だけど、大きさが分かってれば大体のイメージは出来るもんな。んで、お前らの考えていた指令室はこんな感じか?」

「さすが! シュウ! いい仕事してるわね!」
「最高でござる!」

 ただ、俺が想像していた指令室とはちょっと違った。

 俺がイメージしたのは、良くハリウッド映画とかでペンタゴンの中に置かれているような、あんなのをイメージしていたのだ。

 だけど、2人が俺に伝えてきた要望をまとめると、オペレーターと言うか、俺たちが座る場所は部屋という空間の中の、中心から扉側、それ以外の3面にびっしりと複数のモニターを配置して、至る所の映像を見れるようになっている。

 だけど、高さも部屋の中心と言う事もあり、下に行くほど見難くなっていた。何故席をここに作ったんだと思ったけど、それには一応理由があった。

「そっちの方が面白そうじゃん!」

 これは理由なのだろうか? それに、部屋がデカすぎてモニターが見難いんだよ! 双眼鏡でも使ってみろって言うのか?

 部屋の広さが一辺が30mもあるのだ。100インチのモニターを置いたとしても、映像が小さくて何がうつってるか、よく分からねえんだよ!

 そう言って怒鳴り飛ばした。2人共ぶつくさ言っているが、実用性のない指令室はさすがに作るわけにはいかない。なので、コンパクトにするのを条件とした。

 最大でも縦横10メートル、高さ5メートルを限度として指令室を設計するように命令した。

 まったく、作ってみたいのは否定しないが、使用する可能性を考えるとあの指令室は使えないのだ。せめて、使える物を作ってくれ。

 俺は、趣味部屋パート2の最終的な仕上げをして、サンゴ礁の見える部屋に移動した。

「ん~暗くなってくると……なんも見えないな」

 何を当たり前な事を言っているんだ? と思うけど、夜の海はただただ不気味だった。かといって光を使って見えるようにしたら、秘密基地にならないもんな。不自然に湖の中が光ってたら怪しすぎるもんな。

 夜は湖の中を見えないようにしておくべきかな? 雰囲気的にはカーテン? 室内の光が漏れないようにするなら、ブラインドと遮光カーテンを使ってみるか?

 俺は室内を結構明るくしてから秘密基地から出て、海の上から光が漏れていないか確認する。

 月が出ているので、全く気にならないレベルだと思う。月が出てなくても大丈夫かな? もう1枚何かあればほぼ防げるかな? 潜られちゃえが結局、不自然な窓が水中にあるからバレちゃうんだけどね。

「よし、外からの対策はこんなもんだろう。室内はどうしよっかな? あんまり高級感があると、俺が居辛いからな。安っぽくなく高級感があまりない感じがいいんだけど……俺にはそういうセンス無いからな。置くものとかは、ブラウニーに丸投げしようかな? 完璧にやってくれるだろうし」

 広い空間にビーズクッションを置いて、埋もれてから全力でだらけていると、

 スマホ型魔導無線が鳴った。

『シュウ、何処にいるの? 今日は外で食事しないんじゃなかったの?』

「あっ! 連絡入れるの忘れてた」

『みんな待ってるんだけどどうするの?』

「ん~こっから帰ると多少時間がかかるな、先に食べといて、シルキーたちには戻ってから謝るから……」

 戻ってからシルキーたちに謝ると思うと、ちょっと憂鬱な気分になるな。普段は優しいけど、こういうことになると本当に厳しいからな。

「……ウ、シュウ! 大丈夫? 何かあったの?」

 綾乃とバザールが心配して俺の顔を覗き込んでいた。

「あ、カエデから連絡があって、食事どうすんのってさ……連絡入れてなかったから、シルキーたちが怒りそうだから、帰るのがね」

「あぁ、シルキーたちね。あの子たちって怒ると本当に怖いからね。特に食事や掃除の面に関しては、鬼だって裸足で逃げ出すわね!」

「とりあえず、帰るって言ったから俺は戻るよ。お前たちはどうするんだ?」

「ん~私は、お泊りセットも食事も準備してあるから、ここに残って色々いじるわよ。バザールも付き合いなさい。あんたがいないとDPで召喚できないからね」

「了解でござる。と言う事になったでござる」

 2人は残ってここの模様替えでもするのだろうか? ブラウニーに頼もうかと思ったけど、こいつらがやってくれるならやってもらおうか。

「そっか、バザールにDP渡しておくわ。それより、お泊りセットってなんだよ?」

「え? 決まってるじゃない! お友達の所に遊び行く時の必需品じゃない! パジャマにお布団! ベッド等々を収納の腕輪に入れてるのよ!」

「ふ~ん、今までに使った事は?」

「…………いわ……」

 どうやらないらしい。まぁそうだよな、ディストピアでもあまり家から出ないし、俺の妻や土木組以外とあまり交流がないみたいだからな。触れないでおこう。

 帰ろうと思い地上に出ると、バッハが待っていて、俺を運んでくれるようだ。さすがに早いな。

 家に着くと走って食堂に向かう。そうすると、みんなが食事をしないで待ってくれていた。

「ご主人様、今日は息抜きできましたか? 奥様方を心配するあまり、息が詰まっているように感じましたが大丈夫ですか? 皆さんが心配されてますよ」

 スカーレットが前に出てそんな事を言ってきた。

「シュウ君。あなたはもうちょっと自由にしていいと思うよ。私たちは十分に色々してもらっているんだから、もっと我が侭になっていいと思うよ」

 よくわからなかったけど、なんだか涙が出てきて泣いてしまった。
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