ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1031話 ドワーフたちの情熱

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 織機の次はミシンに取り掛かった。部品を木材で作成していく。この木材を元に金属の部品を作ってもらう予定なんだ。

「そういえばさ、そろそろ奥さんたちの出産日ってそろそろじゃないの?」

「そういえば、そろそろ40週なはず……って、もう産まれてもおかしくないんじゃね? それなのに、今日の朝もいってらっしゃいって送り出されたけど、いいのかな?」

「それなら、大丈夫なんじゃない? 何かあれば連絡くるでしょ? それに、ここからならディストピアに帰るのに15分もあれば余裕でしょ? 陣痛が来てから呼ばれても、余裕で生まれる前に着くわよ」

「出産ってどんくらい時間かかるんだ?」

「聞いた話で記憶が定かじゃないからあれだけど、10時間とかかかるって話よ」

「マジか! 出産ってそんなに時間かかるんだ。その間、陣痛とかいろいろな痛みが次々来るんだろ? 大変なんだな……」

「男には分からない痛みだと聞くでござるからな。なにせ、鼻の穴からスイカが出てくるような……って物理的に不可能でござる」

「それ、俺も聞いた事あるな。どれだけいたいんだよ! って感じだな。

 んーサンダーとか、やすりが回ってて押し付けるタイプの研磨機とかあると加工が楽なんだけどな」

「それなら、先にそっちを作っちゃう? 歯車をドワーフに作ってもらえば何とかなるでしょ?」

「動力をどうするかが問題でござるよ」

「それなら、水車を動力にしたらどうだ?」

「ゴーストタウンに上水下水はあるでござるが、水車を回せるような川は無いでござる」

「何か動力になりそうなものか?」

「なら、足踏みミシンの回転の動力は使えないの?」

「あ~何か堂々巡りみたいな感じになってるな。とりあえず、足踏みでできる動力を作ろうか。あれは魔導具ではないから、技術さえあればだれでも作れる道具なんだよな、頑張ろうぜ!」

 動力の関係で足踏み研磨機の作成が始まった。

 この足踏み研磨機については、構造はいたってシンプルだ。なにせ歯車すら使わないで作成する事になったからな。

 足踏みで動力にする回る部分の軸と直結して、研磨機のやすりの部分が回転するようにしているので、問題になるのは動力が足踏みであるため、どれだけのスピードで回せるかと言う事だろう。

 踏み始めは手で回してから行えば、後は慣性も使い回転させるのは問題ないだろうし大丈夫だろう!

「これだけ構造が簡単でござるなら、寸法さえ間違えなければ問題ないでござるな!」

「そうだな。次に問題になるのは、やすりの部分だな。付け替えができるようにしておかないとな」

「シュウ、それ以上に問題な事があるわ! まさか砥石をそのままつけるわけにはいかないでしょ? 削れる量の問題もあるわけだしさ」

「そういえば、粗削りする時には結構凹凸の激しいもの使うんだっけ? 研磨剤には、細かく砕いた硬い物質を入れて金属を研磨するんだったよな。それなら砥石に荒く砕いた硬い物質を入れられないかな?」

「クリエイトゴーレムであれば、問題ないでござるが……それを人の手でできるでござるか?」

「わかんない事は、じっちゃんたちに聞いてみよう!」

 工房でドワーフのじっちゃんたちが、織機について話し合っていた。自分たちでも改良できないか検討してみるそうだ。耐久面を考えて金属に交換できる部分は金属に出来ないか? と言う事も検討しているらしい。頼もしいじっちゃんたちだ!

 そんなじっちゃんに、砥石について聞いてみると「そんな事も知らんのか?」と、ちょっと馬鹿にされてしまった。

 細かい説明は省くが、と言う風に前置きをされて砥石の作り方を教えてもらった。

 簡単に言えば、砥石に使う素材を必要なサイズの粒状にして、それを特殊な薬剤と一緒に混ぜて圧力をかけて、それを焼いて完成するそうだ。形の関係上、レンガみたいな形が作りやすく使いやすいので砥石の大半は長方形の形をしているらしい。

「……って事だってさ。だから、きちんと成型できれば、円状の物も作れない事は無いみたい。大きな砥石は重いけど、慣性の力になる事を考えれば問題ないかもしれないね」

「それって、金属用じゃないの?」

「ドワーフのじっちゃんたち曰く、金属より柔らかい物なら何でも削れるってさ。確かにその通りなんだけどね。付け替えるのは大変だから、用途毎に研磨機を1台ずつ準備した方がいいと思う」

「問題は、新しい物に付け替える時でござるか?」

「そこは、円状の砥石の中心にちょっと大きめの十字の穴をあけて、動力の軸も同じ十字にしておけば大丈夫だと思うよ。硬いもの同士がぶつかるとすぐ壊れるかもしれないから、クッションになる素材もあるといいかもしれないってさ」

「シュウの意見かと思ったら、ドワーフの意見だったのね」

「この研磨機の話したら、予想以上にくいついちゃって、砥石の方はすでに試作が始まってるよ」

「最後の仕上げはともかく、整形であれば段違いの速度でできるでござるからな。あの人たちが食いつかないわけが無いでござるか。ディストピアの方の爺様も押しかけてくるかもしれないでござるな」

 バザールが遠い目をしていた。でも、今は骸骨状態なので、そう見えるだけで実際の所はどうなのだろうか?

 相談に言ったのが10時位で、1時間くらい話して戻ってきてバザールと綾乃に説明したのが11時頃。そして、ディストピアの老ドワーフたちが押しかけて来たのがお昼前……行動が早すぎんだろ! そして、バザールのフラグ回収が早すぎんぞ!

 昼飯は、宴会のようなどんちゃん騒ぎをしながら、研磨機の話をしていた。酔いながらするような話じゃないと思うが、ドワーフたちにとって度数が40以下の物は水と変わらないらしく、いくら飲んでも酔わないらしい……宴会では酔っぱらっているって事は、それ以上の物をがばがば飲んでるって事か?

 午後からは、老ドワーフたちも加わり開発が始まったため、その日の夜には試作品が出来上がってしまった。

 研磨機の方は構造が簡単にしてあるからまだわからなくもないが、砥石の方が完成している理由がよくわからない。

 よくよく話を聞いてみると、昔ドワーフの中で砥石を作るのに時間がかかると言って、時間を短縮するための魔法ができないか、試行錯誤して生まれた魔法を使って砥石を作ったらしい。

 ドワーフたちって、自分たちの趣味のためなら、多少の常識をひっくり返してしまうんだなって思ったよ。

 しかも、ボールベアリングまで、研磨機に合わせて作っていたのだから、その異常な情熱の恐ろしさに背筋が寒くなったもんだ。
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