ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1030話 思ったより大事だった

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 約束の3日が経った。ドワーフたちはキッチリと10セット作って納品してくれた。

 綾乃たちが準備した織機に、ドワーフのじっちゃんたちが準備した部品をセットして、生地を織っていく。

「ほほ~これは面白いの。ワシらの準備した部品は、縦糸を通して使うものじゃったのじゃな。同じような物を大きさ違いで、複数作る作る意味が分からなかったが、こういうことじゃったのじゃな!」

 自分たちが作った部品が何に使われるか知って、満足そうにしている。

「なるほど! 縦穴の長さが違うのは、互い違いにした時に糸を上下させるための物で、その隙間にシャトルを通すのか。これなら、今までの作り方に比べれば数倍の速さで作れるようになるの!」

 10セット試してみたが、

「シャトルを通す事を考えると、この幅以上の物がいいわね。ただ、縦糸もしっかりしすぎると、拙いかしら?」

「分からん! とりあえず、素人でも通しやすい幅のやつでいいんじゃね?」

 俺の一言で、織機の話は終了した。試作品とはいえ完成したので、今日は宴会だ!

 っとその前に、俺はゼニスの所へ向かおう。確か今日の午後はディストピアにいるって、予定表には書いてあったから、ちょっくら行ってくるか。

 織機を収納の腕輪に収めてから、ディストピアに向かった。

「……と言う感じの物を作ったんだけど、どうするのがいいと思う?」

 織機の説明をゼニスにすると言ったら、グリエルとガリアも話を聞きたいと言い、同席している。

「これはすごい物ですな。織機の値段次第ですが、生地の量産ができそうですな。今でも生地は足りていないので、助かりますがこの技術が漏れるのは困りますね……」

「シュウ様。ディストピアには織機を置いてもよろしいですか?」

「ディストピアは、住人の仕事はどうなの?」

「人が足りない所が多いですよ。生地を大量に織る事が出来れば、衣服関係に携わる人が少なくなるので助かります」

「え? 空いた時間とかで服を作ったりしないの?」

 俺は、昔の話を思い出して、衣服などは自分たちで作る事が多いと思っていたが、お金のあるディストピアの人たちは服を買って、それにかける時間で働いたり、家族と過ごしたりしているそうなのだ。

「なので、織機は助かりますね。これでしたら、赤ん坊の面倒を見ながらでも、自分のペースで織れますからね」

「あ~縫う方にもミシンっていう道具があるんだけど……」

 そう言うと、ガリアが食いつくように俺の方を掴んで聞いてきた。なので、どういう道具なのかを説明すると、ゼニスが頭を抱えていた。頭が痛い様だ、薬飲むか?

「シュウ様。とりあえず、ミシンについてはディストピアだけの導入にしてください。時期を見てゴーストタウンに導入して、この技術が漏れないようにしてもらいたいですね」

「織機の方もだよな? 簡単にマネできるモノじゃないと思うけど、ある程度知識のある人間が見れば、いずれ再現されるか? 何か条件付けをして作る人たちを探すべきかな?」

「公にして募集はしない方がいいでしょうね。そういう所には、技術を盗みに来る人が必ずいますからね。ゴーストタウンで広めるのであれば、街のために働いている人たちの親族に対して話をするなどして、出来る限り外からの要員を排除するべきでしょう」

 頑張った所で完全に防ぐ事は出来ないので、基幹部を隠して使用できる方法等を考えるべきだろうか? そこら辺はその時に考えるか。

「ガリア、とりあえず織機の方は作れるから、必要な台数を教えてくれ」

 まずはディストピアで様子を見てから、色々確認してどこまで広めていくかを話し合おうという事になった。その結果をもって、綾乃とバザールの所へ戻る。

「と言う事で、次はミシンを作る事になった。足踏みミシンで、縫い方は1つでいいから真っ直ぐ綺麗に縫えるように作ろうと思ってるから、一緒に頑張ろう」

「そういえばシュウ、織機いじってて分かったんだけど、ドワーフに作ってもらった部品あるじゃない? あれって、2つ必要なかったわ。縦糸をしっかり張った状態で、上下させれば問題なかったわ」

 それを聞いて、構造を思い出す。確かに言われた通りの方法でも問題なかった。何で俺たちは難しく考えていたんだろう?

「で、少し問題があったわ。シャトルを通した後に横糸を詰める部品の事を忘れていたわね。トントンってするあれよ!」

 そう言われて、動画を見た時に糸を詰めるための道具が付いていなかった事を知った。

「シュウには悪いけど、作ってもらっていた部品と、似たような物を作ってもらってるよ。こっちの部品は小さい穴と細長い穴を交互に配置しているけど、今作ってもらっているのは大体同じ幅で縦に針が並んでいるような物を作ってもらっているわ。トントンするための部品ね」

「あ~そうなのか。とりあえず、足踏みミシンは後にして、織機の改良をしようか。ディストピアでどれだけ使うか分からないけど、少し量産しておこうか」

「了解でござる。ドワーフの爺さんも暇をしていると思うでござるから、手分けをして部品を作成していくでござるよ!」

 トントンするための部品はおさと呼び、縦糸を通して上下に動かす部品を綜絖そうこうと言うらしい。俺たちは、設計図や部品だけをちゃっちゃと作って、部品の名前などを気にせずに作っていた。

 きちんとそこら辺を見ていれば、もっと簡単に作れたのではないだろうか? とりあえず、おさを使うために、吊り下げなければならない部分を作成していく。

 図面には、確かに俺たちの頭の上あたりにまで織機の本体があるのに、目の前にある織機は俺たちの胸付近までしかない。作っている時は何でこんなに大きさが違うのかなんて考えもしなかった。全く3人そろって何を考えていたのだか。

 おさを吊るす部分に関しては、他の部品の延長上で何とかなったので、修正は少なくて済んだのが不幸中の幸いだろうか?

 ドワーフのじっちゃんたちは、すごかった。俺たち3人が1つの織機の部品を作る間に1人で作ってしまうほどのスピードだった。部品毎に分担していたので、実際には違いがあるのだが、その位のスピードで織機の部品を作っていたのだ。

 しかも、初めて作る部品なはずなのに、雑談をしながら片手間に作っているような感じだった。こういう部分はスキルがあっても、経験がものをいうんだろうな。

 1週間後には、50機の機織機が完成していた。
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