ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1050話 思ったより奥が深い

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「なっ!? それは、雷虎の発電器官! 何で持ってるの!? あれってAランクの魔物のだったよね? 何で領主様が持ってるの? 実質最上級の耐電付与付与素材よ!」

 興奮しているリーダーに落ち着くように伝える。

「これを使えばすぐにでも付与開始できるって事?」

「えっと、下処理をしないといけないので、もしこの素材を使えるのであれば、付与開始できるのは、3日後ですかね。初めて扱う素材なので、出来ればもう少し時間をかけたいですが……」

「あ~じゃぁ、来週の頭、1週間後なら時間的にどうかな?」

「それでしたら、問題なく付与できると思います!」

 うん、大丈夫のようだ。綾乃の方を向くと1週間もかかる事に不満を持っているのか、しかめっ面で俺の方を見ている。慌てて付与して失敗されても困るだろ? 初めて扱う素材だっていうし、時間位あげてやれよ!

「そだ、他の付与も同じように魔石と内臓があれば出来るのか?」

「えっ? えぇ、素材にもよりますが、出来ると思います。何か付与してほしいのですか?」

「あ~例えばなんだけど、元々素材自体にある程度の耐火装備があるのに、エンチャントはかけれるのかな?」

「え? もともと耐性のある装備に更に同じ耐性ですか? そんなに贅沢な使い方をできる程、耐性を持った装備も素材もないですから、試した事がないですので、出来るか分かりません……」

 あ~そういう物か? なら実験も兼ねてやってもらうか? ドラゴンシールドを取り出して、リーダーに聞いてみる。

「この盾に付与するのだったら、どの位の量があればできるんだ?」

「見せてもらってもいいですか?」

 ドラゴンシールドを渡すと、まじまじ見て、プルプルと震えはじめた。おトイレでも我慢してるのかな?

「シュウ様、つかぬことをお聞きしますが、この盾の素材ってドラゴンの鱗ではありませんか?」

「分かる人には分かるんだね、そうだよ。レッドドラゴンの鱗で作った、ドラゴンシールドだね。使い道がよくわかっていなかったこの内臓なんだけど、おそらく付与に使えるんだよね? 内臓はどれ位で、魔石はどの位必要なのかな?」

「えっと、成功するか分からないのですが、それでも付与をした方がいいですか?」

「失敗したからって気にしないでいいよ。ただ高価なものだから、処理の過程とか付与する所とか見せてもらうけど大丈夫かな? 成功報酬とは別に、もちろん依頼を受けてくれた段階で報酬を準備します」

「え? 依頼を受けるだけで報酬ですか?」

「うん、まず難しい依頼だから、そうでもしないと誰も受けてくれなそうだからね。それに無いと思いますが、金属加工の方でちょっと不正をした工房があるので、高価な素材なだけに監視みたいな形になるけど、問題なければですが」

「心境的に疑われるのは嬉しくないですが、確かにここまで高額の品を扱うとなれば、不正が疑われても仕方がないですよね。っと、あんたは大人しくしてなさい!」

 隣のおっさんが我慢に耐えかねたのか、立ち上がって俺たちに何かを言おうとする前に、リーダーの鉄拳が顔を捕らえて部屋の隅へ飛んでいった。まぁ、職人からすれば不正を疑われてまで、へりくだる必要性は感じられないのだろう。俺もおっさんみたいに怒ると思う。

「失礼しました。それに、実際に不正にあわれているのであれば尚更ですね。お受けするのは問題ありませんが、いくつか条件を付けてもよろしいでしょうか?」

「俺たちが飲める範囲の条件なら検討しよう」

 しばらく頭で何やら計算をしている様子で、1分ほどで口を開いた。

「条件としては……」

1、失敗しても文句を言わないでもらいたい事。

2、制作過程は監視しても構わないが、邪魔をしない事。

3、作業内容の説明は一切しない事。

4、報酬としてレッドドラゴンの肝と魔石の残りを譲ってもらいたい事。

 の4点をあげてきた。

「さすがに4の条件は無いでござるな。その盾でどれだけの量を使うか分からないでござるが、さすがに付与1つで金貨数千枚は下らないSランクの魔物の魔石を、報酬として臨むのはあり得ないでござる。ふざけているのか?」

 バザールの口調が最後だけ変わって、死の気配が濃厚に漏れ出してきた・・・不死の王、ノーライフキングだけあるな。殺気じゃない所が、バザールの本気度の低さを表しているだろう。

 死の気配より濃密な殺気の方が、与える影響が大きいらしい。普通の人間にとっては、高ランクの魔物から出されるモノであれば、どっちも死の危険であることには変わりないけどな。

 俺に向けられていないので、呑気にそんな事を考えていたらバザールの死の気配が収まった。

「我が主が優しいからとはいえ、さすがにその駆け引きはありえんでござる。これからはもう少し言葉を考えてから発言するがいいでござる」

「ったく、バザール……言いたい事はわかるけど、さすがに一般人にそれはないだろ。多分だけど、近くにいた兵士たちがここら辺を調べに来るかもしれないぞ?」

 死の気配がリーダーに向いていたとはいえ、あれだけの気配だ。多少訓練をしたゴーストタウンの兵士であれば、気付かないはずはない。それに中隊長クラスなら、離れていても感じ取る事はできるだろう。

 息が吸えていなかったリーダーは、気配から解放されてむさぼるように息を吸っていた。バザール、さすがにやり過ぎだ。そもそも交渉なんだから、吹っ掛けてくるのは相手の出方を見るためじゃないのか?

「失礼しました。領主様は商人ではありませんでしたね。つい、あの業突張りの商人と同じように対応をしてしまった事を、深くお詫び申し上げます。では改めて、報酬としていただきたいのは、残りであることは変わりませんが、2回……いや、値段を考えると、1回分の材料をお譲りいただければと思います」

「そもそも、1回分でどれくらい必要なんだ?」

「耐性付与の強度にもよりますが、一般的には内臓を100グラムと魔石を一欠片……10グラム位ですかね」

「思ったより少ないな、ちなみに耐性の強度とは何ですか?」

「耐性付与は永続的なモノでは無いのはご存じですよね? なので、装備の素材や使い方を考慮して耐性付与をかけるのです。簡単に言うと付与の持続時間と効果量の合算が、強度に当たると考えてください。

 付与の耐性効果、減算とでも言いましょうか? それは、素材によって決まるので強度が残っている間は一律の効果を発します」

 へ~付与ってそういう感じなのか……となると、耐電を施す銅線は、すぐに強度の限界がくるのか?

「あっ、銅線に関しては、実験してみない事には分からないですが、持ち込まれた雷虎の素材であれば、普通に付与を施せば、数年単位で持つと思います。弱い電気を通すだけと言う話ですので、多分ですが」

「1年位持つならとりあえず十分だよ。盾には一番やりやすい素材の量を使ってくれ。報酬はそうだな、2回分。内臓を200グラムと魔石を20グラムってとこでどうだ?」

「それでしたら、こちらからお願いしたいくらいです!」

「じゃぁ、先に銅線の方を仕上げてほしい。残った素材は、劣化しない収納系アイテムはあるか?」

「もちろんあります。付与には高価な素材も多いので、容量はそこまで大きくないですがもちろんあります!」

 と言う事で、雷虎の素材は預けて置く事にした。今回渡したものでどの位の量に付与できるか産出してもらうと、およそ3トン程はいけるのではないかと言う話だ。予想より多くてびっくりしたのだが、表面だけにと言う限定であるためか、かなり多くできるらしい。

 来週になったら、レッドドラゴンの素材を渡す事になった。
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