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第1103話 ニコの大冒険Ⅲ
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ニコの視線の先には、子ども冒険者とでも呼ぶべきチームがいた。
なんで視線の先にいるのか分かるのかと言えば、どういう原理か分からないがニコの見ている方向に、FPS視点で画面に表示されるので、見ている場所が分かるのだ。そのせいで回転移動とかジャンプ移動すると気持ち悪くなるのだ。
で、何でニコはあのチームを気にしているんだろう? ディストピアにいるって事は、教育的には問題ないはずなのに……なんか失敗でもしたのか?
ニコが不用意に近付いていくと、子ども冒険者チームがニコに気付き、武器に手をかけようとして、近くの先輩冒険者に止められていた。
先輩冒険者たちが子ども冒険者たちに何やら話をしている。ニコはその様子をただただ見ている状態だ。
先輩冒険者が話し終わると、また子ども冒険者の所へニコが向かって動き出した。それまでニコは女冒険者の膝の上で撫でられていたので、子ども冒険者たちも警戒心は無くなっている。
テーブルの上に乗ると、マスターを呼ぶような仕草をして『いつもの』と注文しているように見える。
子ども冒険者たちは、ニコの可愛さにやられてみんなで撫で繰り回している。そうするとそこにマスターが食事を運んできた。
子ども冒険者たちは、かなり慌てた様子で注文何てしてないよ!? みたいな仕草をしていたら、ニコが体の中からお金を取り出して、マスターに支払いをしている。
なんかカッコいい事してるな。いっぱい食えよ! と言っているような感じで、テーブルから離れていった。
「あの子たちは、ディストピアに来たばかりなのかしら?」
「そうね、来てからあまり時間のたってない子たちが集まって作った冒険者チームかしら?」
「だからお金もまだあまりなくて、食事が少ないのを見たニコが食事を出してあげた感じかな?」
様子を見てると、母親3人組が趣味部屋に来ていた。娘たちはどうしたのかと思ったら、ベビーカーに乗ってすやすやと眠っていた。家の中でベビーカー? と思ったが、娘たちが寝ている事を考えたら、抱っこしているよりは良いのかもしれないな。
それにそれぞれのベビーカーの中には、ケットシーとスライムが一緒に入っていて、抱き枕にしたり埋もれたりして、非常に満足そうな顔をしているのでこういうのもありだろう。
「そっか、ディストピアにいるからって、みんながみんな標準以上の力があるわけじゃないよな」
「そうね、シュウ君は知らなかったと思うけど、来たばっかりの子どもたちの中には、こういう子たちも多いのよ。自分たちで何でもできると思ってたけど、ここにきてそれが通用しなくて、あそこの酒場で落ち込んでいる子とかね。ニコちゃんは良くそんな子たちにご飯とか奢っているわよ」
「ん? って事は、ニコが冒険者ギルドに来て、依頼をこなしたり素材を買い取ったりしてもらってる事は、知ってたって事か?」
「そうね。てっきり話したと思ってたけど、今さっきまでの皆の様子を見て話してなかったっけ? って考えちゃったわ。私が知っているのは、ギルドの中の話と素材や依頼の関係で、何処に行っているのか分かるくらいだけどね」
それもそっか。依頼と素材で何処に行っているのかは分かるもんな。話してなかったか忘れたのは、あまりにも普通の事になりすぎて、感覚がおかしくなってしまったのだろう。あれが当たり前になっていたらいちいち言う必要がないもんな。
そんな事を話しているとニコが次の目的地に着いたようだ。
目の前には湖が見えるので製塩所のあるエリアに来ているみたいだ。そのまま湖に進入して……潜った!?
お風呂に入っている時には、見た事がない潜水を急に始めたのだ。スライムだから……方法によっては可能なのだろうが、湖に潜って何がしたいんだ?
湖底に着くとあたりを見回して、岩陰を見つけると移動を開始して……あっ! 伊勢海老の様な大きなエビを捕まえた。2匹3匹と捕まえていき、全部で5匹捕まえた所で浮上を始めた。
その途中で襲ってきたマグロを、反対に捕獲して浜辺に上がって来た。
ニコの視界の先には、製塩所で働いているおばちゃんたちが食事休憩をしていた。製塩は大変で目が離せない所もある仕事だから、食事は交代交代で食べてるんだよな。昼食の時間から結構経っているので、最後のグループかな?
そこに向かってニコが移動をすると、おばちゃんたちが手を振ってきた。そうするとニコが伊勢海老とマグロを放出した。
おばちゃんたちは慣れた手つきで、伊勢海老を半分に切って浜焼きの網の上に乗せている。マグロに関しては、ニコが職人の如くおばちゃんたちの前で見事に解体していき、拍手をしてもらっていた。
解体が済むとおばちゃんたちと交代して、一番おいしい所を刺身にしてもらっていた。芸の細かい事に刺身に付ける物として、複数の塩と醤油を取り出して食べ始めた。
「ニコって美味いもの食ってるんだな」
俺の一言にみんなが苦笑している。寄生虫が怖くないのかと思ったが、そこは万能スライムニコの能力で、1度体内で凍らせてから、寄生虫を殺して解凍しているらしい事を後で知った。
おばちゃんたちはマグロを楽しんだ後、休憩が終わったようで仕事場に戻るが、また次の休憩をするおばちゃんたちがニコの周りに集まったてきた。
知らなかったのだが、3交代で2チームが働いて1チームが休憩に入るシフトのようだ。
次のチームのおばちゃんがニコのために兜焼を始めた。これが焼けるのには時間がかかるので、ニコはそのままおばちゃんたちに撫でられながら、刺身を食べてのんびりと焼けるのを待っていた。
そのまま、一緒に食事を始めたおばちゃんたちが休憩で戻ってくるまで、兜焼はじっくりと焼かれ、一番おいしい頬の肉をちょっと堪能すると、残りをみんなにあげていた。
ニコに満腹中枢があるのかは知らないが、子ども冒険者たちに食事を奢っている所を考えると、全部自分で食べたいわけでは無いのだろう。
おっと? おばちゃんたちが兜焼きを食べ始めたのを見て、移動を開始した。後ろを振り向いて触手を振って、おばちゃんたちと別れを告げたように見える。
街の中へ戻り……どうやら家に帰ってくるようだ。
こうしてニコの大冒険は終わりを告げたのだった。
なんで視線の先にいるのか分かるのかと言えば、どういう原理か分からないがニコの見ている方向に、FPS視点で画面に表示されるので、見ている場所が分かるのだ。そのせいで回転移動とかジャンプ移動すると気持ち悪くなるのだ。
で、何でニコはあのチームを気にしているんだろう? ディストピアにいるって事は、教育的には問題ないはずなのに……なんか失敗でもしたのか?
ニコが不用意に近付いていくと、子ども冒険者チームがニコに気付き、武器に手をかけようとして、近くの先輩冒険者に止められていた。
先輩冒険者たちが子ども冒険者たちに何やら話をしている。ニコはその様子をただただ見ている状態だ。
先輩冒険者が話し終わると、また子ども冒険者の所へニコが向かって動き出した。それまでニコは女冒険者の膝の上で撫でられていたので、子ども冒険者たちも警戒心は無くなっている。
テーブルの上に乗ると、マスターを呼ぶような仕草をして『いつもの』と注文しているように見える。
子ども冒険者たちは、ニコの可愛さにやられてみんなで撫で繰り回している。そうするとそこにマスターが食事を運んできた。
子ども冒険者たちは、かなり慌てた様子で注文何てしてないよ!? みたいな仕草をしていたら、ニコが体の中からお金を取り出して、マスターに支払いをしている。
なんかカッコいい事してるな。いっぱい食えよ! と言っているような感じで、テーブルから離れていった。
「あの子たちは、ディストピアに来たばかりなのかしら?」
「そうね、来てからあまり時間のたってない子たちが集まって作った冒険者チームかしら?」
「だからお金もまだあまりなくて、食事が少ないのを見たニコが食事を出してあげた感じかな?」
様子を見てると、母親3人組が趣味部屋に来ていた。娘たちはどうしたのかと思ったら、ベビーカーに乗ってすやすやと眠っていた。家の中でベビーカー? と思ったが、娘たちが寝ている事を考えたら、抱っこしているよりは良いのかもしれないな。
それにそれぞれのベビーカーの中には、ケットシーとスライムが一緒に入っていて、抱き枕にしたり埋もれたりして、非常に満足そうな顔をしているのでこういうのもありだろう。
「そっか、ディストピアにいるからって、みんながみんな標準以上の力があるわけじゃないよな」
「そうね、シュウ君は知らなかったと思うけど、来たばっかりの子どもたちの中には、こういう子たちも多いのよ。自分たちで何でもできると思ってたけど、ここにきてそれが通用しなくて、あそこの酒場で落ち込んでいる子とかね。ニコちゃんは良くそんな子たちにご飯とか奢っているわよ」
「ん? って事は、ニコが冒険者ギルドに来て、依頼をこなしたり素材を買い取ったりしてもらってる事は、知ってたって事か?」
「そうね。てっきり話したと思ってたけど、今さっきまでの皆の様子を見て話してなかったっけ? って考えちゃったわ。私が知っているのは、ギルドの中の話と素材や依頼の関係で、何処に行っているのか分かるくらいだけどね」
それもそっか。依頼と素材で何処に行っているのかは分かるもんな。話してなかったか忘れたのは、あまりにも普通の事になりすぎて、感覚がおかしくなってしまったのだろう。あれが当たり前になっていたらいちいち言う必要がないもんな。
そんな事を話しているとニコが次の目的地に着いたようだ。
目の前には湖が見えるので製塩所のあるエリアに来ているみたいだ。そのまま湖に進入して……潜った!?
お風呂に入っている時には、見た事がない潜水を急に始めたのだ。スライムだから……方法によっては可能なのだろうが、湖に潜って何がしたいんだ?
湖底に着くとあたりを見回して、岩陰を見つけると移動を開始して……あっ! 伊勢海老の様な大きなエビを捕まえた。2匹3匹と捕まえていき、全部で5匹捕まえた所で浮上を始めた。
その途中で襲ってきたマグロを、反対に捕獲して浜辺に上がって来た。
ニコの視界の先には、製塩所で働いているおばちゃんたちが食事休憩をしていた。製塩は大変で目が離せない所もある仕事だから、食事は交代交代で食べてるんだよな。昼食の時間から結構経っているので、最後のグループかな?
そこに向かってニコが移動をすると、おばちゃんたちが手を振ってきた。そうするとニコが伊勢海老とマグロを放出した。
おばちゃんたちは慣れた手つきで、伊勢海老を半分に切って浜焼きの網の上に乗せている。マグロに関しては、ニコが職人の如くおばちゃんたちの前で見事に解体していき、拍手をしてもらっていた。
解体が済むとおばちゃんたちと交代して、一番おいしい所を刺身にしてもらっていた。芸の細かい事に刺身に付ける物として、複数の塩と醤油を取り出して食べ始めた。
「ニコって美味いもの食ってるんだな」
俺の一言にみんなが苦笑している。寄生虫が怖くないのかと思ったが、そこは万能スライムニコの能力で、1度体内で凍らせてから、寄生虫を殺して解凍しているらしい事を後で知った。
おばちゃんたちはマグロを楽しんだ後、休憩が終わったようで仕事場に戻るが、また次の休憩をするおばちゃんたちがニコの周りに集まったてきた。
知らなかったのだが、3交代で2チームが働いて1チームが休憩に入るシフトのようだ。
次のチームのおばちゃんがニコのために兜焼を始めた。これが焼けるのには時間がかかるので、ニコはそのままおばちゃんたちに撫でられながら、刺身を食べてのんびりと焼けるのを待っていた。
そのまま、一緒に食事を始めたおばちゃんたちが休憩で戻ってくるまで、兜焼はじっくりと焼かれ、一番おいしい頬の肉をちょっと堪能すると、残りをみんなにあげていた。
ニコに満腹中枢があるのかは知らないが、子ども冒険者たちに食事を奢っている所を考えると、全部自分で食べたいわけでは無いのだろう。
おっと? おばちゃんたちが兜焼きを食べ始めたのを見て、移動を開始した。後ろを振り向いて触手を振って、おばちゃんたちと別れを告げたように見える。
街の中へ戻り……どうやら家に帰ってくるようだ。
こうしてニコの大冒険は終わりを告げたのだった。
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