ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,200 / 2,518

第1200話 秘密兵器?

しおりを挟む
 こちらの作戦は……陣地へ引き込み、聖国に数の利を生かせないように塹壕内で大盾を前面に出した、ファランクスを元にした攻勢防御とでも呼ぶ隊形で戦闘を開始した。

 この方法なら戦闘できる人数が減るため、平均レベルの高い俺たちに有利になるのだ。平地による会戦でも、前線の兵士以外は弓兵とかを除けば戦闘に参加できていない人員が多いが、指揮官の技量次第では隊列を自在に変えて対応されてしまうので、絶対数が少ないこちらは不利になる可能性が高い。

 特に俺たちの軍は、各隊毎の練度は高いかもしれないが、ディストピア・ゴーストタウン・グレッグ・ミューズ・ヴローツマインの5つの街から集まっているため、連携が拙い部分が目立つのだ。

 だからレイリーは、平地に並んで戦闘をするより、個々に分かれて対応できる塹壕内での戦闘を決めたと言っていた。

 実際にその作戦は上手くいっており、聖国側は後ろからくる自軍の兵士の所為で、戦闘をしている兵士が撤退もできずに沈められている。

 それに対してこちらは、スムーズに交代できるように連日の訓練が効果を発揮している。

 スムーズに交換する方法は、大盾をその場に置いて人員だけ入れ替えたり、横穴を作って交換の際に大盾を持った人員を配置しておく等、いくつもの方法を準備している。

 そのおかげで、戦闘時間が長くなっても疲労は少なくて済んでいる。ただ、問題も出てきている。士気が高いため前に前に押し出てしまうため、交換するタイミングが難しくなっているのだとか。

『レイリー様! ダブルの冒険者たちが動いたそうです。同じ場所では無く、クランでまとまって塹壕に突入してきました』

 すべての魔導無線の声を拾える俺の魔導無線から、そう報告が届いた。

 見渡せるように作った塔のような場所から見下ろす形で戦場を見ているが、塹壕の中は覗けない。ん~これって塹壕っていうのかな? 高さが5メートル以上もあり迷路みたいになっている。戦闘が行われているかは、ポールアックスの動きを見れば分かる形だ。

 5メートルなら上を移動しようとする奴が出てくるが、それに対しては塹壕の上に作られたトーチカという、ちょっと矛盾した感じがする場所から、弓使いが狙い撃つ形で上がってくる敵を落としている。

『スカルズの皆さん、ポイント13にお願いします。ポイント7には、あいつを投入しよう。こちらの被害は出来る限り少なくする。副官の2人は、ポイント7の指揮を頼む。暴走させないように注意してくれ』

 ん? あいつって誰だ? 暴走するって……危なくないか? 妻たちにも聞いてみるが、軍に属している妻はいないので、知っている者はいなかった。軍の指揮系統に聞いてみるが、説明をしている暇がないと解されてしまった。

 レイリーからは、危険は危険ですがそれは、こっちではなく相手側が危険という意味です。ポイント7は地図に記してありますので、しばらくしたらマップ先生で情報を検索してみてください。と言われた。全体の指揮に忙しいのに・・・すまん!

 レイリーの指示が出ると、塹壕の上を跳んで移動している黒い集団と、それ以上に動きの速い小柄な重装備の鎧姿がそれぞれの方向に進んでいた。鎧姿の後ろを見覚えのある2人が追いかけている、副官かな?

 レイリーに言われた通り、しばらく待ってからマップ先生で検索する。そこで、目が飛び出そうになった。

 レベルは400と普通の兵士にしてはかなり高い。だけどそれだけならこれほど驚かなかった。驚いた理由は、ステータスが同じレベルのシュリと同等位だったのだ。シュリと同じ英雄症候群という事だろう。

 そしてその年齢が問題だ……10歳。いくら何でも幼過ぎるだろ。これは後でレイリーを問い詰めないといけないな。

 そして、その子がたどり着いた場所の敵を示す光点がどんどん消えている。これが示す事は、敵兵がかなりの勢いで死んでいるという事だ。確かに敵対した相手が危険だな。

 時々その子がいる場所から人影が見える。先程まで全身鎧だったため気付かなかったが、獣人の子のようだ。どういう経緯でこうなっているのか気になるけど、レイリーがつかっているという事は、何か理由があるのだろう。

 そしてマップ先生の情報で、その子とダブルの冒険者が衝突する寸前だと分かった。ん~映像が欲しい。

『ポイント7付近の兵士は、後方に撤退。ライガがダブルの冒険者と接敵した。周囲の塹壕が壊れると仮定。私たちは後退を指揮します。隊長はラインの再構築をお願いします』

 あの周囲は壊れる事が前提で話が進むようだ。俺とは違うが、上から戦場を見ているレイリーが壊れる範囲を想定して、それに対応した前線の構築を指示している。

 30分もしない内に、ダブルの冒険者2人とそのクランは前線から撤退していた。理由は違うがもたらした結果は同じだ。

 スカルズの向かった方は、狭さもあったが塀の上も使える利点を最大に生かして、立体的に攻める事によってクランメンバーを4割程削り、ダブルの冒険者にも毒竜のナイフを突き立てたようだ。毒をくらったと判断して撤退したのだとか。

 ライガが相手にした方は、クランメンバーの8割が死んで、片手を失ったダブルの冒険者が命からがら撤退して、それを追いかけようとしたライガを止めるのに副官2人が苦労していた。

 単独では最高戦力の2人が撤退した事により、今回の衝突は終わり敵兵が撤退を開始していた。こちらは追撃を開始し、迷路のような塹壕を逃げにくい状況で、殿を務めた者たちを容赦なく殺していった。

 敵兵は、3000人に近い数が死んでいる。それに対して、こちらは5人の兵士と14人の冒険者が亡くなってしまった。

 5時間程の戦闘で、3000人近く死んだとか。戦場に出たのが両軍合わせて12000人……25パーセントに近い人間が1回の戦闘で死んだのか。多くないか?

 聖国に関していえば、戦場に出た40パーセント以上が死んでいる。戦争で30パーセントも失えば、撤退するレベルだ。死んだほとんどが、神殿騎士では無く一般兵だったけどな。

 そして死んだ3000人の内、3割の900人がライガによって殺されている。戦争だから文句はないが、10歳の少年を戦場に出して人殺しをさせるとか……明日も攻めてくることを考えたら、レイリーに手間をかけさせるのは気がひけるが、確認をしておかないといけない!

 そう思い、レイリーを呼び出した。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...