ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1201話 ライガの事情

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 レイリーと一緒に獣人の少年が一緒に来た。遠目で見ていたが、この子がライガかな?

「シュウ様、御呼びという事で参上しました。おそらく、ライガの事が聞きたいと思い呼ばれたと判断して、勝手にライガも連れてきました。説明するだけでしたら私だけでも良かったのですが、ライガも自分の言葉でシュウ様に説明したいと言っています」

 レイリーだけの言葉では伝わらない事もあるだろう。そう考えると、ライガが来た事は事情を知るいい機会という事だな。自分の言葉で話させれば、何を考えているかも理解できるかもしれないな。

 レイリーの説明はこうだ。

 半年程前にゼニスが重要な商談があったので、キャラバンを率いてその街に出向いた際に、ライガを発見したそうだ。ライガには、病気の母と食事があまり食べられずに今にも死にそうな妹がいた。その母と妹のために、金を持っていそうなゼニスに目をつけて自分を売り込んだそうだ。

 自分はどうなっても構わないから、母と妹を助けてほしい……と。当時ガリガリに痩せていたのに、自分の稼ぎを母と妹のために使っていたそうだ。それでも、妹は死にそうな程飢えていたそうだ。

 普段なら無視をしただろうが、その時ゼニスは何かを感じて話を聞いたのだとか。その際に、力には自信があるといい、ガリガリに痩せていたのに力があるとか馬鹿にしているのか? と通りがかった冒険者がバカにしたそうだ。

 腕相撲をして買った方に金貨1枚をやると言って、ライガとバカにした冒険者とで腕相撲をさせたのだ。

 結果は、ライガが瞬殺。恥をかかされたと思った冒険者が剣を抜いてライガを殺そうとした所を、ゼニスの護衛が止めたのだと。見た目とは違う強さには何かあると思い、ライガの申し出を受けてディストピアに連れ帰った。

 という事らしい。ライガは学がなく力仕事しかできないけど、家族のために頑張るから! と言い、どうにかして働きたいと頭を下げてきたので、条件付きでグリエルに紹介してそこからレイリーに話がいったのだとか。

 本当であれば、10歳にも満たない子どもを働かせるわけにはいかないが、母親も病気で妹も食事を思う様に取れず死にかけている……働けるのはライガだけだった。全部負担しても良かったが、ライガがそれでは何かあった時に困ると言って、どうにか働かせてほしいと土下座までされたと。

 ゼニスは、グリエルを紹介する条件として、この街では子どもは勉強をしなければならないから、勉強をしながら働くという事を提示した。これは、この街の領主、つまり俺が決めたルールなので従わないのであれば、この街で生活する事は出来ないと伝えて了解を得たらしい。

 グリエルが話を聞いて、色々調べた所、シュリと同じ病気というよりは、呪いに近い体質だという事が分かった。それを聞いたライガが、力が役に立つなら戦う! と言ったため、レイリーに鍛えさせることにしたのだとか。

 鍛えた結果が、今日の戦果という事だろう。

「なるほどな。で、ライガ君。君に聞きたいんだけど、レイリーの言っている事に間違いはないかな?」

「ない!」

 簡潔に答えたライガは、隣にいたレイリーに拳骨を頭に落とされていた。口の利き方がイマイチうまくないので注意しているが、なかなかなれないそうだ。

「君から、俺に伝えたい事は何かあったりするかい?」

 俺がそう言うと、ライガが急に立ってテーブルの横に膝をついて土下座をした。

「シュウさん! 俺たちを救ってくれてありがと! イダイ!」

 また殴られた。どうやら、シュウさんと呼んだ事にレイリーが怒ったようだ。

「レイリー、子供にそれはないだろ。呼び捨てじゃないんだから、そこまで怒る必要はないと思うぞ。それとライガ、土下座なんてしなくていい。ゼニスに認められたのは、君の観察眼と誠意……少しの運のおかげだ。胸を張るといい。だけど、本当に軍人でいいのか?」

「俺は何もできない。だけど、お母さんと妹を救ってくれたシュウさんに恩返しがしたい。グリエルさんから聞いた話で、特異体質が戦闘に役に立つと言われたから、戦う仕事をしたい! 軍人であれば、もし死んでも残った家族に、多額のお金を残す事ができると聞いた。だから、俺は戦う!」

 それを聞いた俺は、白い目でレイリーを見た。苦笑をしているレイリーが、

「確かにお金の心配をしなくていいと話しました。ライガが常に心配しているのは、家族の事です。軍人であれば死ぬ事もあると説明して、死んで家族を残していいのか聞きました。死にたくはないけど、自分には戦う事しかできない……と心が折れることなく言われてしまい、軍の説明をしたのです」

 その時に、もし死んだ時の事も話したのだとか……それでも10歳にも満たない子どもに話す内容じゃないな。

「シュウさん! レイリーを責めないで! 俺がお願いしたんだ! この力を使ってみんなを護るって! だから痛いって!」

 呼び捨てにされたレイリーが、また拳骨を落としている。

 偶然に偶然が重なって、ライガはここに来たのか。

「ライガ……君が決めた事なら、これ以上は何も言わない。でも、母親や妹を悲しませてはいけないよ。軍人として生きるなら、死んでも生き残る覚悟をしてほしい。本当なら、もっと大きくなるまで全面的に支援したいけど、君はそれを望んでいないんだよね? だから、約束してほしい。必ず生きると」

 ライガはよく分かっていないようでポカーンとした顔をしているが、家族のために生きる努力をしてほしい、と言い換えると……わかった! と返事をしてくれた。

 家族の話を聞くと、元気になったようで昔よりいい生活が出来ているのだとか。ちなみに、ライガがもらっている給金は、レイリーと同じ位なのだとか、かなりの高給取りだ。ただ、秘密兵器……戦略級の戦闘力を持っているので、問題ないと思う。

 でも可能な限りライガには出番がないといいな。せめて後5年。この世界での成人までは……

 ライガを先に帰してレイリーと向き合う。その後、出来る限り出番のないように話を進めていく。

 年少組をフレデリクの戦争に担ぎ出した人間のセリフとは思えませんが、とレイリーに突っ込まれた時は、苦笑してしまった。

 レイリーの下にいるが自分の意思で参加しているライガと、俺が奴隷として買った娘たちを鍛えて戦争に担ぎ出した。妻たちも自分の意思で戦ってくれてたけど、どう考えても俺の方が悪人っぽいな。

 とはいえ、被害を少なくするためには、ライガを前線に出す必要が出てくるので、戦況次第ではライガに出陣してもらうとレイリーが。それに、ライガが戦況に焦れて自分から出て行く可能性も捨てきれないとか……子どもだもんな。

 とりあえず、俺はできる事をしよう。特別扱いになるけど、ライガに生きて帰る様に言ったからには、全力で支援しないとな。老ドワーフと綾乃に連絡をして、専用装備の準備をお願いした。
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