ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1206話 奴らの介入

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 今すぐにいい案が出せる訳も無いので、一旦会議はお開きとなった。

 俺も1人で考えるんじゃなくて、みんなと一緒に考えてみよう。妻たちは、ディストピアの中でも特殊な存在だから、俺や兵士が思いつかない様な事を思いついてくれるかもしれないしな。

 野戦病院という名の城に、リリー以外の皆がそろっていたので話を聞いてみた。

 塹壕に入りたくなる理由ですか? とみんなで首をかしげていた。その中でネルが、

「美味しい食事がいっぱい用意してあったら、入りたくなると思う!」

 と……気持ちは分かるけど、さすがに敵軍が用意した食事は毒の心配があって食べなくないか?

「ネル、確かに美味しい事は正義です。ですが、あんな奴らのために食料の一片も渡す理由がありません!」

 おっと、シュリが変化球でネルの意見を否定した。その意見は、正直どうかと思うぞ!

 他には、

「高ランクのポーションやエリクサーが、軍事物資で大量に準備されている! とかどうですか? 物欲を刺激して塹壕に入らせる形ですね」

 俺も考えたけど、この世界でポーションやエリクサーはかなり貴重だからな。現実味が薄いと言わざるを得ない。

 しばらく悩んでみたが思いつかなかったので、思いつき次第魔導無線で意見を出してほしいと伝えた。

 くつろいでいたダマを膝の上に乗せ、お腹のあたりをワシャワシャしてやる。

『ちょっとあんた。あんたならもっと簡単にあいつらを始末できるでしょ? 何ちんたらと戦争なんてしてるのよ! あまりに長引くから、賭けが成立しないじゃない!』

 おっと……いきなりチビ神が現れた。ビックリしなくなったけど、不意を突かれると心臓に悪いからやめ欲しい所だぜ。

『あんたの心臓の事なんてどうでもいいのよ! 賭けが成立しなくなったから、周りに苦情を入れろってうるさく言われてるのよ! 何とかしなさい!』

 人の生き死にで賭け事とは、神様は呑気でいいもんだ。

『はぁ? 何言ってんのよ。あんたが死ぬわけないでしょ! 敵軍が何日で壊滅するかって賭けをしてたのよ! 全員が14日、2週間以内のどこかの日に賭けてたのに! まともに戦うつもりが無いの!?』

 戦争を覗いてたなら分かるだろ。今回俺は、手助けはしても要請がない限り戦闘に参加しない。俺が作った街…‥国? 同盟? まぁ呼び方は何でもいい。そいつらが、俺らの力に頼らずどこまでできるかを知るための戦争でもあるんだよ。

『何それ……戦争が決まってから、覗くのは禁止されてたから知らないわよ!』

 チビ神が逆ギレしてきた。

『まぁいいわ。罰として何か提供しなさい!』

 ふざけんな! お前らは基本的に干渉しないんじゃなかったのか? 滅茶苦茶干渉してんだろうが!

『基本的には! 干渉しないわよ。今回は例外って事ね』

 その割には良く干渉されてる気がするのだが? 例外が多すぎんぞチビ神!

『あんた自体が例外的存在なんだから気にするだけ無駄よ! そんな事はどうでもいいから、何か賭けになるネタを寄越しなさい!』

 うげ、ハードルが上がった!? 何かの提供から、賭けになるネタを寄越せに変わったぞ。

『まぁ、私はいきなり難しい要求をするつもりはないわよ。とりあえず、あなたの動きが渋かった理由は、さっきの説明でよくわかったわ。でも、細かい所までは分からないから説明してちょうだい。あっ! 他の神もここにいるから、聞こえるようにするからね!』

 拒否権も無しに他の神にまで俺の思考が筒抜けになる……とはいえ、こういう状態で無視しても俺に勝ち目はないので、チビ神の言う通りに今回の流れを詳しく説明する。

 それで納得してもらえたわけでは無かった。

 一番多かった声は、それだけの戦力があるのにいちいち手間をかけるのか? という疑問の声だった。蹂躙できるのだからしてしまえばいい! と騒ぐのだ。気持ちは分かるけど、人間には人間の考え方があるんだよ。

『で、あなたは今、相手があなたのフィールドの塹壕に入ってきたくなるように仕向けたいわけね。そんなの簡単じゃない。人は欲が強くて物に惹かれる傾向が強いけど、現実味のないアイテムは罠だと思うから近付かない可能性が高いって事よね?』

 チビ神にしては、俺の説明をしっかり理解しているだと……

『あんたのその反応、本当に失礼よね! まぁ、そんな物がなくても入りたくなるようにすればいいんでしょ? なら簡単じゃない。相手の後方から魔物に襲わせて追い立てればいいじゃない! 入りたくなる、逃げ込みたくなるように仕向ければいいのよ!』

 なんだと! 確かにチビ神の言った通りだ。今までは、釣るような感じで何の餌をまくのか考えていたが、餌が無くても塹壕に入る理由ができればよかったのだ。

 そして、俺はDPで魔物を召喚できる。直接倒すのでなければ、レイリーも許可してくれるのではないだろうか? 非実体系の恐怖を煽るような魔物とかどうだろうか? バザールに相談したらアンデッド系の魔物でそういうのがいないかな?

『いいわねそれ! みんなも聞いたでしょ? これを賭けの対象にしましょう! 魔物は私たちが召喚できるように準備するわ。召喚する数もレベルも賭けの対象にしましょう! もちろんメインは、私たちの選んだ魔物が何日で敵国を崩壊させるか賭け直しよ!』

 お~! と野太い声が聞こえてきた。しかも、野太い声だと分かるのに、女……女神の声も混じっているのが分かる。ったく本当に暇人……暇神共め!

 俺は、チビ神から教えてもらった方法が活用できるか、レイリーと相談をするために前線の指令室に移動した。お供は、俺の膝の上で撫でられていたダマだ。グレンは先に飛んで道中に問題ないか調べてくれている。シエルは今まで以上に小さくなって、俺を護るために頭の上に乗っている。

 出発する前にニコに見つかり、そこは自分の場所だ! と猛抗議する姿を見せつけられたが……お前、最近こいつらに護衛を任せて、自分はのんびりと過ごしてるだろ? 最近この位置にいないだろ? 少しくらい許してやれよ。後でネチネチイジメんなよ?

 あ~でも、ニコが先頭に立つなら他のスライムも付いてくるか? 今じゃ数が何匹いるか分からないくらい増えている。俺の命令が無い限り、自分で居心地のいい所に居座ってるからな。温泉に浸かり続けているスライムもいるから、温泉スライムと呼んでるやつもいるしな。

 レイリーもチビ神の存在を知っているので、あまり歓迎できる案では無かったが、聖国の兵士を直接攻撃しない、という条件で許可された。レイリーは、逃げ出してくる兵士が大量に塹壕に入ってくる前提で、防衛策を考え始めた。

 こうして、聖国との戦争は最終局面に向かって走り出した。
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