ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,242 / 2,518

第1242話 ビックリした

しおりを挟む
 今日は朝早くから外に行く準備を始めている。

 朝食は畑エリアで用意するので、そのまま来てほしいとの事だった。用意と言っても、仕上げをその場でするだけ、既に下ごしらえは終わっている。

 畑エリアに来て、朝食の準備が始まった。

 ポテトサラダを作るのに、粒マスタードとマヨネーズを混ぜた物を使っている。今まで食べて来たポテトサラダも美味しかったのだが、粒マスタードで作ったポテトサラダは、大人の味? 1ランク上の味になっていた。

 他にもホットドックやチキン南蛮のタルタルソースにも、粒マスタードを使って作っていた。

「今日食べてもらったマスタードの作り方を、ご主人様に見てもらいたいので、これから案内します!」

 案内された畑には、よく分からない半分程枯れた植物があった。どうやらこれは、からし菜と言う植物らしい。聞いた事あるけど、からし菜って若い内にサラダやおひたしで食べる野菜じゃないのか?

 どうやら、この種が俺たちが今さっき食べた調味料に使われている、マスタードの主原料という事らしい。聞いてはいたが、イマイチピンとこないな。

「どう見ても、ただの種だな」

 千歯扱きでからし菜の種を取っている時に出た言葉だ。だって、どう見てもただの種だぜ? 種と言えば油を搾る事はあっても、食べる事ってあまり多くないよな? こんなに小さい粒だと特に食べない気がする……ゴマ位か?

「ご主人様も知らないんですね。からし菜のからしは、マスタードのからしなんですよ! これをそのまま食べてもマスタードの味は、あまりしないですけどね」

「そのまま食べても多少は味がするんだ? 味がするなら種のまま使ったりはしないのか? ちょっと食べてみてもいいか? うげえ……苦い。少し口の中が渋いよ。あれ? でも、ちょっとマスタードの味がするな」

「そのままだと、苦いだけなんですよ。水分を含むとマスタードの味がすると言われています。そういえば、からしとマスタードの違いは知っていますか?」

 メルフィにそう質問されて、からしとマスタードの違いを考えた。日本で一般的にからしと言われているのは和からし、マスタードは洋からしって言われていたよな?

「加工方法が違う?」

「おしい! 50点です! 加工方法が違うのはもちろんですが、主原料が少し違うんですよ。同じからし菜でも品種が違うんです! からしと言われている物はすり潰してから水分を加えて練ってからしにするのに対して、マスタードは酸味を加えて加工するんですよ。細かく話せばもっと違うのですが、今回はこの位で」

 へー同じような色でも味が違うのは、マスタードの方には酸味を加えているから味があそこまで違うのか? 主原料となるからし菜の品種も大きく関わっているのかな?

 俺が食べた事に興味を持った娘たちも、からし菜の種を母親にねだっている。苦笑して、美味しくないんだよ? と言っているが、3人は俺の真似がしたいようだ……後で怒られた。娘たちが真似するから迂闊なことしないでよ! と。

 案の定、娘たちは苦かったようですぐにペッと吐いた。その行為に、食べ物を無駄にしちゃいけないと母親に怒られていた。だから興味本位で食べたとしてもしてちゃダメなんだよ! と。娘たちは深い意味は分かっていないが、反省はしたようだ。

「ご主人様! これからマスタードつくりをするので、来てください!」

 年少組に呼ばれて、野外キッチンみたいに展開されたキッチン馬車のもとへ行く。このためにこの馬車を持って来たんだな。

「今さっきとったからし菜の種をこの果汁に付けます!」

 大きな声でそう言ったソフィーが、ブドウを取り出した。

「ブドウ? それが酸味? 甘い奴は使わないのか?」

 そう言って気になったので、ブドウを一粒もらって食べた。あまりにも酸っぱくて飲み込むのに時間がかかった。娘たちも真似をしようとしてねだっていたみたいだが、今回はさすがに止められていた。少し絞った汁を指に付けて舐めていたが、すごい顔をしてから母親の胸に顔を埋めていた。

 その様子を見ていた年少組は、見覚えがあるのか「懐かしいね」と言いながら笑っていた。

「この酸っぱいブドウが酸味として使う液体です。お酢を使う事もあるそうですが、いくつも試して酸っぱいブドウ果汁が良かったんです! 多少甘みも欲しいので、甘いブドウも2割程加えます! その果汁に先程のからし菜の種を漬けます。ケチらずにいっぱい使うのがミソです!」

 いっぱい使うとは言っているが、からし菜の種は、お米を炊く時の比率より水分が多めだ。

「一晩置いたのがこれになります!」

 どっかのテレビ番組みたいな事を言って、一晩漬けこんだ物が準備された。昨日の夜決まったばかりなのになぜ準備ができているのだろうか? と思ったら、毎日一定量を作っているようでその一部を俺のために取り分けてくれたようだ。

「これをミキサーで細かくしていきます。色々試した結果、この粒マスタードはちょっと粗めが美味しかったので、この位になったら止めて、2週間程馴染ませます。馴染ませたのがこれになります!」

 また料理番組みたいに、新しいボウルに寝かせた粒マスタードが出て来た。

「お腹いっぱい食べないで欲しかったのは、ここでこれを食べてもらうためです!」

 と言って、ソーセージが出て来た。粒マスタードをシンプルに楽しむのであれば、この食べ方が一番! という事で、アツアツに焼けたソーセージにたっぷりと粒マスタードをつけて食べる……

「美味い! 今まで召喚して食べてたマスタードとは、比較にならないくらい美味い!」

「でしょ! 下処理や調味料が重要なのは分かってたけど、調味料も物によって味が全然違うんです! 畑エリアでは色々な調味料をみんなで試しているんですよ!」

 サーシャがそう説明してくれた。

 俺が美味い! と叫んだのを聞いて、娘たちが母親にねだっていた。小さく切り分けられたソーセージを食べさせている。

 そういえば、娘たちは既に俺たちと同じ物を食べている。どの位の歳で同じものを食べていいのか分からないが、娘たちは問題ないとシルキーが判断している。全く同じというわけにはいかないので、多少手を加えられている。

 驚いたのが、ハチミツを使った物も食べているのだ。トーストしたパンにバターとハチミツ……初めに見た時は全力で止めたのだが、シルキーたちがそんなミスをするわけもなく、魔法で体に悪い菌を殺しているので問題は無いと無い胸を張っていた。

 それに一般的には1歳を過ぎれば問題ないらしいのだが、問題ないとはいえまだ赤ちゃんなので念を入れて魔法で処理しているのだとか。その他にも、王蜜には基本的に不純物がない。すべてを取り除いた状態の最高の物が王蜜なので、赤ちゃんがそのまま食べてもまず問題ないらしい。

 クイーンハニービーの能力が高すぎてビビるわ! そもそも雑菌無しのハチミツってどうやって作るんだよ!

 そんな感じで驚いたもんだ。

 そんな事を考えていると、

「「「おいちぃ!」」」

 娘たちがソーセージに粒マスタードをつけた物を食べて、声を上げていた。この娘たち、基本的に好き嫌いは無いんだけど、お肉だとテンションが上がるんだよな。誰にしたんだろうな……母親な気がするわ。

「みんなも気に入ってくれたみたいですね。では、次に行きますので着いて来てもらっていいですか?」

 エレノアが準備ができたといい、次の場所へ移動を開始する。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...