ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,241 / 2,518

第1241話 怖れていた事が……

しおりを挟む
 魔法使いとの模擬戦はちょっと不完全燃焼だったけど、思ったより得るものがあったので何となく満足している自分がいる。

 特に大きなダメージも無く(シュウの主観では、回復した傷はダメージ判定では無い)終わったので、歩きながらできるストレッチをしながら家に戻っている。

 途中、ダマを発見した子どもたちが寄ってきてモフられていたが俺が奇怪な動きをしていたので、それに興味を持ったのか何をしているのか教えてくれ! とせがまれた。

 慌てて子どもを回収しようとした親御さんたちをジェスチャーで止めて、何をしていたのか簡単に説明をしてあげると、今度は教えてほしい! と騒ぎ出したので、近くの公園に移動して歩きながらしていた方ではなく、止まって行うストレッチを子どもたちに教えてあげた。

 また今度、時間がある時に教えてあげる事を約束して、今日は家に帰るように促す。もうしばらくすれば夕食の時間になるので、早めに帰るように伝える。遅くなると、俺が領主だと知っていても母親は怒ってくるからね。母は強し!

 良い感じでストレッチができたのでちょうどよかったと思い帰路に着く。

 家に到着すると、俺が出て行った時の様子とは違う落ち着いた感じで、庭に妻たちが集まっていた。娘たち3人も柔らかく作った芝生の上で体を動かしていた。

 その中でミーシャが俺が帰って来た事に気付き、駆け出して寄って来た。

「とーたん、おかえり!」

 と言って俺に両手を上げて抱っこを要求してきた。娘たちは俺の事を『とーたん』と呼んでいる。きっと『おとーさん』と呼んでくれているのだろう。ブルムとスミレはまだ単語でしか話せないが、ミーシャは少しだけ文章で話すようになっている。

 ジャンプをして跳び付いてきたので抱きかかえてやる。

 嬉しそうな顔をしていたのに、顔を摺り寄せようとすると両手で全力で止められた。その娘の行動に混乱していると、

「とーたん、くしゃい! おろちて!」

 娘に臭いって言われた……しかも降ろしてくれだと……これ以上、娘に嫌われるわけにはいかないので言う通りに降ろしてあげる。

 娘に言われたセリフに、この世界に来て一番ダメージを受けた。

 反抗期の娘とかに、お父さんの洗濯物と一緒に洗わないでとか、近寄らないでと言われてショックを受ける父親の気持ちが分かってしまった。分かりたくないのに……

 でもさすがに1歳になって間もない娘に言われるとは、さすがに早すぎないか?

 両手両膝をついてガックリとしていると、ミーシャの動きにつられて寄ってきたブルムとスミレが視界に入る。嬉しそうな顔で寄って来た2人を抱きしめようとしたら、目の前でUターンして母親の元に戻ってしまった。

 追撃をされた俺のライフはゼロになり崩れ落ちる。

 その様子を見ていたシェリル・イリア・ネルが近寄ってきて、慰めてくれた。だけど、慰めてくれている途中に、

「ご主人様、汗臭いからミーシャちゃんたちに逃げられたと思います」

 と言われた。自分で嗅いでみてもよく分からないが、3人が揃って同じ事を言ってくるので汗臭いのは間違いないようだ。

 少し離れた所で、娘たちを抱いていた3人の母親が、

「さすがに1歳になったばかりの娘たちが反抗期でシュウ君の事を嫌うなんてないわよ。DPで召喚した漫画のような展開なんてないわよ。それに臭いって言われる前までは、喜んで近付いてきたでしょ? この娘たちはみんなシュウ君の事が好きなのよ」

 打ちひしがれていた俺にミリーがそう教えてくれた。ミーシャを抱きかかえて何やらお話をしていたようだ。その中で近付きたくない理由を教えてくれたようだ。

 俺は体を洗いにシャワー室へ走る。手抜きをせずに全速力で体を洗う器用な事をしていた。

 体を洗って服を着替えた俺は、恐る恐る娘たちのいる場所へ……ゆっくりと近付いてきたミーシャが、大丈夫だと判断したのかしゃがんでいた俺に抱き着いて来てくれた。それを見たブルムとスミレも近付いてきて抱き着いて来てくれた。

 本当に良かった! 嫌われなくてよかった……そう思い涙を流していた。

「とーたん、どっかいたいの?」

 ミーシャに心配されてしまった。さすがにこの事を言うわけにはいかないので、ごまかしてミーシャに話をする。

 そんな様子を見ていた母親3人は、ケラケラと笑っていた。ちくしょう、娘に面と向かって、臭いって言われたんだぞ! 誰だってショックを受けるに決まってるだろ!

 娘ができる前から、娘に嫌われたら死ぬ自信がある! と言っていたので、その事を思い出して笑っているのだろう。話した時だって、みんな笑ってたしな。

 でも今回、本当に臭くて嫌と言われていたと分かったって、言われた時のショックは消えないからな! 簡単に死ねる体じゃないのに、死ぬかと思ったわ!

「もぅ、そんな事で泣かないでよ。この娘たちがシュウの事嫌うわけないじゃない。いない時だって、とーたんは? って聞いてくるくらい会いたがっているのよ。だから自信を持ってよ。それに、シェリルたちに聞いたけど、かなり汗臭かったみたいよ」

「そんなに臭かったのか?」

 そう言ってシェリルたちの方を見てみると、苦笑をした3人が視線を逸らすくらいには臭かったようだ。

「そう言う事よ。本当に臭ければ、この娘たちだって臭いって言うわよ。だからそのくらいで泣かないの。私たちも模擬戦をしてスッキリしたから、明日は久しぶりに娘たちと一緒に何かしましょ。聖国との戦争で忙しくてこの娘たちと遊べてないでしょ? この娘たちも遊びたがってるからね」

「あっ! それなら、畑エリアや家畜エリアに行こうよ! ミーシャちゃんたちにも、普段食べている物がどうやってできているか見せてあげたい! 理解はできないだろうけど、楽しんでもらえると思うの」

 そう言ったのはメルフィだ。年少組は、土木組や孤児院の子と畑エリアに自分たちの畑を作っている。土づくり等は、ワームやドリアードに手伝ってもらっているが、他の部分は共同管理だがみんなで作っているようだ。

 そこに案内したいのだろう。他にも理由はあるだろうけど、畑エリアも家畜エリアもノーマンとアクアが管理してるから、俺の知らないものが増えてたりするんだよな。たまには見に行かないとな。

 娘たちに聞いてみると、いきたい! と騒ぎ出したので、明日の予定は決まった。みんなで畑エリアと家畜エリアに行こう!
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...