ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,250 / 2,518

第1250話 チキンナゲット

しおりを挟む
「スカーレット様から話は聞いております。今日は、一緒に加工品を作りたいのだとか。ご主人様がなさる事では無いと思いますが、お願いだという事ですので一緒に作りましょう。何か作りたい物の希望はあったりしますか?」

「あえて上げるなら、鶏系の何かを作りたいかな? 自分が好きだから、どういう風に作っているか気になるしね!」

「鶏ですか……鶏、鶏、そろそろ補充しようとしていたチキンナゲットとかいかがですか? そこまで難しい物ではないですので、簡単に作れると思います」

「チキンナゲットか、前に作った気がするけど、ほとんど手伝っていなかったからよく覚えていない。よし! チキンナゲットを作ろう!」

 移動中に色々な話をしてくれた。この建物は、俺の家で食べる加工品をほぼすべて作っているそうだ。加工品と言っても、主な物は燻製だったりソーセージ各種、揚げる前まで加工した物等々を作っているのだとか。

 たくさん作った物に関しては、ディストピアから離れて頑張ってくれている領主代行やその家族、文官武官に送られているそうだ。向こうにもブラウニーは常駐しているが、こういった物を作る余裕は無かったりするので、助かっているのだとか。

 まぁチキンナゲット位なら、簡単に作れるので加工品としてはどうなのかとも思いますが、無いよりはある方がいいという事で作っています、だってさ。

「チキンナゲット自体は簡単にできてしまうので、作っている間に何かほかに作りたい物を考えて下さいね。もし浮かばないようでしたら、今日作ろうとしていた物を作っていきますのでよろしくお願いします」

 加工場に到着すると既に食材が準備されており、他のブラウニーも集まっていた。普段は分担作業で行ったりする様だが、今回はチキンナゲットという事で、特に分担せずに食感が少しずつ違う物を作っていくのだとか。

 俺に1人のブラウニーが付いてくれて、他のブラウニーはそのまま作業を始めた。俺についてくれたブラウニーが、手順を交えながら説明してくれる。

 工程はいたって簡単だった。胸肉をまずは一口大より小さく切って、それを叩いてミンチ状にする。ミンチ状にした胸肉に、片栗粉・卵・塩・胡椒・ニンニク等を入れて粘り気が出るまで混ぜる。それを成形して揚げたら完成。

 工程は簡単で分かりやすいのに、いろんな種類をどうやって作るのかと言えば、食感が変わるようにミンチの度合いを変えたり、追加で中に入れる食材を変えたりして複数の物を準備しているのだとか。

 いつも美味しいと食べていたのだが、食べ比べをした事があったわけでは無いので、食感の違いなどは全く分からなかった。味についても、個人的に好きな甘めのバーベキューソースに粒マスタードを加えたオリジナルソースで、個々の味を細かく覚えていたわけでは無いので、判断できなかったのだろう。

 説明を受けてから俺は少し悩んだ。チキンナゲットって何が重要なのだろうか? やっぱりサクッとした食感が個人的には好きなので、上げた時に周りがさっくり仕上がるようにしたい! でも、それはしっかり揚げたりすればいいだけなので違うよな。

 という事は中身か? あんまり鶏肉の食感が生きているのもチキンナゲット感がないから……でも、あまり柔らかすぎても嫌だから、どうすればいいんだ?

 分からなかったので、お付きのブラウニーに助言を求める。ただミンチにするだけであればミキサーを使うらしいが、そうするとつなぎを入れても柔らかさが強くなってしまうらしい。なので、手間はかかるけど包丁で叩いて多少食感が出る位にしてはどうか? という話になった。

 追加で入れる食材は、素人が無理に考えても微妙な物しかできないので、今回は特に何もしない。だけど、1つだけ工程を多く入れる事にした。

 ブラウニーのレシピでは、混ぜて成形したらそのまま揚げるのだが、この間に一工程。成形した物に片栗粉をまぶしてはたいてから揚げる。という形にした。

 特に深い意味は無かったのだが、唐揚げを作る時にカリッと揚げるコツは、漬け込んだ後のお肉に片栗粉をまぶして、しっかりと余分な片栗粉を落とした方がカリッと上がると聞いた覚えがあるので、それを試してみたのだ。

 そして、一手間加えた事もあり、俺が思っていたようなサクッとした食感になった。他のブラウニーが作ったチキンナゲットがサクッとしていないわけでは無いが、自分が作った事もあるためか美味く感じた。

 ブラウニーと試食をしていたら、

「「「とーたん!」」」

 と娘たちが俺を呼ぶ声が聞こえた。

 どうやらミリーたちがスカーレットに、俺がここで何か作っているという話を聞いて、娘たちを連れて散歩に来たようだ。

 衛生上の問題で、娘たちは作業場の外から俺を呼んでいたので、すぐに抱っこする事は出来なかった。一通り作業が終わって、エプロンなどを外して娘たちの元へ。

 部屋に入って抱っこしようとしたら、俺の方を見ておらずブラウニーが揚げているチキンナゲットに視線が釘付けだった。この娘たちは本当に食事優先な感じだよな。俺と同じ物が食べれるようになってから、特にその傾向が強くなっている。

 お付きのブラウニーがその状況を予測していたみたいで、揚げてきた物を1人1個分持ってきてくれていた。

 俺は、娘たちの気をチキンナゲットでひいて、抱っこをしながら1人ずつ食べさせてあげる。

 妻たちもチキンナゲットをもらって食べていた。そうすると「いつもよりカリッとしてるわね」「サクサク感がいいわね」等と言っていた。やっぱり揚げる前に片栗粉をつけると、成形してすぐ揚げるよりはサクッと揚がったらしい。

 たまたま上手くいったのかもしれないが、外カリ中ジュワは正義だな。それにあげてから時間が経ってしまうとどうしても、サクッと感やカリッと感が薄くなってしまうので、しょうがないかもしれないな。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

処理中です...