ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1282話 状況把握

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 急く気持ちを押さえながら、リバイアサンに早く早く! と無言の圧力をかけている。

 気になるのが、娘たちが睡眠状態にある事なんだよね。ただ寝てるだけならいいけど、普段あまりない母親に抱かれたままなのが気になる。スカーレットがいるなら、娘たちに負担の少ないようにベッドを出していると思うのだ。

 それに、おそらく妻たちを拉致した国の兵士がダンジョンアタックをしてきている。レベルを見る限り、攻略できるレベルでは無い事は分かっているが、それでも娘たちの事が心配だ。

 2時間程移動すると、みんなのいるダンジョンの下に到着する。

 行きなり部屋に飛び込んだのが悪かった。俺たちが来るとは思っておらず、年長組の妻たちが臨戦態勢に入って切りかかって来たのだ。

 シュリとアリスの攻撃は、一撃で死にはしないだろうけど、致命傷になりえる威力だと判断できる。というか、こんな状況でも俺がケガをすれば、年長組の皆の心が傷付くのは目に見えている。可能なら、余裕で受け止めて見せる事だろう……

 両手に盾を持ち、フォートレスを2重で発動する。その上で体の周りに結界を5重に張り年長組の攻撃に備える。

 初めにフォートレスに当たった攻撃は、ライムの魔法だ。室内という事もあり、周囲に影響のある魔法は使わず、小さくてもダメージを見込める土魔法でアイアンバレットを使って来た。

 しかもアイアンバレットは、ソフトポイント型の弾丸だ。命中すると花が開いたように弾丸が変形し、当たった部分の肉を巻き込んで広がるため、傷が大変な事になるあれだ。それが数十発放たれている。

 1枚目のフォートレスは抜かれてしまったが、何とか2枚目防ぐ事ができた。

 そこにシュリの純粋な物理攻撃、今までで一番の脅威度だろう。俺が敵だったら殺さないと拙いからな。全力だった。

 2枚目のフォートレスはあっけなく砕かれ結界に到達する。2枚まで割り攻撃が止まった。

 続いてきたのは、アリスの魔法剣だ。込められている魔法はまさかの炎系だった。捨て身とまではいかないが、自分を巻き込んでもダメージを与える覚悟の攻撃だった。

 これはただ防いだだけじゃアリスがケガをしてしまうな。治せると言ったらそれまでだが、だからと言って怪我をさせたいわけでは無い。

 炎系であるなら水系で打ち消すしかないか? それより吸収か? 扱いが上手くいかない闇属性のアブソープションがいいか?

 悩むくらいなら両方でいってやる!

 受け止める右の盾にアブソープションをまとわりつかせ、左手の盾は地面に捨て杖を取り出して、いつでも魔法を発動できる状態にする。

 アリスの魔法剣が盾に接触すると、魔力を奪い大した効果を発揮できなくなった。念のため水魔法で剣を包み込み余波も無く打ち消す。

「俺だ! シュウだ! お願いだから止まってくれ!」

 そう言うと、ピタッと止まってくれた。

「ご主人様?」

 気丈に振る舞っていたのだと思う。いきなりこんな所に連れ去られて、こっちと連絡をとる方法も無くビクビクしていたんだもんな。しかも娘たちも一緒で、大変だっただろうな。

 気付いた年長組の皆は泣き出してしまい、ミリーやカエデ、リンドも涙ぐんでいた。

「迎えに来たよ。本物だから安心してくれ」

 泣き出したとはいえ、俺に本気の攻撃を仕掛けてしまった3人が違う意味でもっと泣き出してしまった。

「3人は、反射に近い形で攻撃を仕掛けて来たけど、それは家族を守るためには大切な行動だ。相手の出鼻をくじければ、それだけ考える時間が生まれるんだからな。むしろ、反射でそれを行えた事を誇ろう。俺は怪我すらしていないから大丈夫だよ」

 ちょっと上から目線だけど、その言葉で3人は多少落ち着いてくれた。年長組はあまり寝れていなかったのだろう。泣き止むとそのまま安心したように寝てしまった。

 この部屋も最低限の物はそろっているが、持って来た船に比べれば劣る物なので船に移動してベッドに寝かせてあげる。

 母親の3人は交代で休憩をとっていたため、年長組に比べて負担は少なかったのか寝てしまう事は無く何があったのか話してくれた。

 俺の予想通り、勇者召喚の魔法陣を使って呼び出したらしい。異世界の強力な力を求めて召喚された後、ミリーたち獣人をみて、半端者や獣風情と差別するような用語を使っていたらしい。

 見た目はいいから、兵士の性欲処理にでも使えと、一番偉そうな奴が言っていたとか……殺す!

 異世界から呼ぶつもりだったのに、同じ世界からの召喚をしてしまったのか? みたいな事を魔法使いたちが言っていたとか。

 その後に一番偉そうな奴が、妻たちに命令をしてきたが従う訳もなく、何でこっちの言う事に従わないんだ! と癇癪を起し、そこで1度目の戦闘が起きたらしい。妻たちは、状況が分からず情報も欲しかったので殺すわけにもいかなかったため多少苦労したのだとか。

 妻たちを捕らえようと近付いてきた兵士を薙ぎ倒すと、強い奴らを召喚できた事を喜んで、手を貸すならうんたらかんたら言われたらしいが、得てしてこういう奴らは約束を守るわけが無いので拒否をした。

 勇者召喚の間で戦闘になると、不利になると判断したようでさっさと出て行ってしまったようだ。

 兵糧攻めという事だろう。急に呼び出されたため、食料なども持っていない。魔法が使えれば水は確保できてもまともに行動できるのは3日が限界だからな。

 そこで、やっと落ち着いて話す事ができたのだと。1人は確保して情報を聞き出したかったのだが、全員連れていかれてしまったようだ。

 スカーレットがダンジョンを作れると言ったのだが、コアを召喚しスキルを発動させると掌握できないエリアと表示されてしまったので、いったん外に出て掌握できる場所を探す方向にまとまったのだとか。

 目の前にいる奴らをライムが魔法で蹴散らして、スカーレットがダンジョンを作れる場所を探し、すぐに作れる場所を発見したので30階層分のランダム作成を行い、ダンジョンに逃げ込んだのだとか。

 で、現在に至る。

 こんな感じだろう。とはいえ、どうしていいかもわからず、ダンジョンに引きこもっていた所に俺が突然来たため、攻撃を仕掛けてしまったのだろう。

「で、気になったんだけど、娘たちは何で今も寝てるんだ?」

「それなんだけどね。いきなり周りの状況が変わったでしょ? そして、大きな声を出す人もいてこの娘たちが泣きだしちゃったのよ。私たちでも状況が分からずビクビクしてたからね。それでツィード君が眠らせてくれてね」

 娘たちにストレスが無いようにツィード君が眠らせてくれたらしい。今も寝ているのは、起きると思い出してしまうのかすぐに泣きだしてしまうので、落ち着くまで食事以外は眠らせておく事にしたんだってさ。マジでこの国の奴ら殺す!

「そだ、ご主人様。召喚された時になんだけど、闇魔法の奴隷系統の技術が込められていたみたいだったから、解除しておいたよ!」

 ツィード君が爆弾を放り込んできた。もしツィード君がいなかったら、奴隷の首輪みたいに従わされたって事か? でもあれは、罰則系だから支配できるわけじゃないはず……でも、いい状況ではなかったはずだ。

「とりあえず、この国をぶっ潰す」

 放っておいたら、また同じ事をするかもしれない……と言うか、妻たち以外にも召喚された人がいたかもしれない。そう考えると、この国は存続させてはいけないと思った。
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