ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,603 / 2,518

第1603話 のんびりとした時間

しおりを挟む
 俺たち3人は、各自の対策について語った。

 綾乃の考えた対策は、腐食系の魔物を使うというものだった。アダマンタイトは不変であるためどうにもならないが、体内にある金属、特に筋肉に使っているミスリル合金は腐食するのだ。ただそこまで強力な腐食となると、腐食液を出したらその魔物も死んでしまう、使い捨ての方法だった。

 そして、S級スケルトンにも有効なのだから馬鹿にできない対策だ。S級スケルトンの中には、アダマンコーティングをしているモノもいるので、100パーセント有効な方法ではないが、コーティングは薄いので、攻撃で欠けることもあるので十分だろう。

 バザールの考えた対策は、守る側のダンジョンマスターの視点からで、倒すのに時間と労力をかける意味を見出せないとのことで、罠で隔離する方法を考えていた。

 人造ゴーレムは魔物ではないので、ダンジョンシステム上オブジェクト扱いだ。なので敵の魔物でなければ、キャスリングで自分の魔物ごと隔離領域に捨てることができる。S級スケルトンに関しては、落とし穴トラップにはめて、コンクリートを流し込み固めるという方法だった。

 さすがのS級スケルトンでも、壁に何の取っ掛かりがないので普通の状態でも上るのは難しい。それに加えて固まる前のコンクリートは無視できない。固まれば動いて壊すことも可能だが、壊したところで破片になるだけなので、出てくるまでに相当な時間がかかる、という感じだ。

 倒せていないけど、十分な時間稼ぎになるな。

 俺は、どうやって倒すかだけを真正面から考えた。人造ゴーレムは関節技なので、締め付ける力の強い魔物ということで、マーダースネークを使う方法だ。名前を聞くと毒を持っていそうだが、こいつの殺意、本領は締め付けである。人間の腕位の太さで10メートルほどあり、締め付ける力が驚くほど強いのだ。

 S級スケルトンは、バザールと同じで罠にはめるような形をとるのがベターだと思っている。ただ、罠と言ってもダンジョンのそれとは別である。アダマンタイトの繊維で作った糸を骨に絡ませて、行動不能にするというものだ。

「なるほどっす。腐食系の魔物っすけど、DPでLvをあげないと、使い物にならないっすよね? マーダースネークもLv上げが必要っすよね? そうなると、バザールさんの回答がDPを一番使わないってことっすかね?」

「DPの消費だけで考えれば、バザールの対策一択だな。攻めることを考えるなら、綾乃の対策が有効じゃないかな。俺のは正直、どっちつかずって感じの対策だな」

「攻めに関しては、人造ゴーレムとS級スケルトンがいるっすから、考える必要がないのでは?」

「それもそうだな。バザールの罠ならすぐにでも設置できるから、俺たちの作った階層に設置しておくか?」

「ダンジョンのトラップとして設置すると、条件を満たすと発動するっすよね? それなら、こちらで任意に発動できるトラップにしてみてはどうっすか?」

「そんな都合のいいトラップはさすがに作れないぞ」

「クリエイトゴーレムで床を作って、こちらでボタンを押したら落とし穴が発動するとか、バザールさんのさんのアンデッド操作能力で、落とし穴にスケルトンで土台を作ってその上に床を設置するとかダメっすかね?」

「「「……」」」

 健司の発想を聞いて、俺たちは黙って目を瞬かせた。

「お前、意外にすごいな。俺たちにない発想を簡単に発見したな」

「凝り固まってない思考でござるからかもしれないでござる」

「クリエイトゴーレムだと、いったんダンジョンに入らないといけないから、今回は無しね。バザール、時間のある時にスケルトンを召喚して、罠作ってくれない?」

「ダンジョンに入っても問題ないと思うでござるが、リスクはあるでござるな。でも、綾乃殿も手伝ってもらうでござるよ! 某だけに押し付けるのはよろしくないでござる」

 その後も話し合いが続いた。

 ウルが寝入ってから1時間ほど経った頃。

『そろそろ、助けてほしいです』

 何やら念話が聞こえて来た。この声はダマだと思うのだが、どこにいるんだ? 部屋を探してみると、娘たち、スミレとブルムに抱き着かれた状態で、動けなくなっているダマを発見した。

「そんなところにいたのか、娘たちもそろそろ起こさないといけないかな。ミリー、軽めのおやつを準備するように、言ってもらっていいかな?」

「全員分? 娘たちのだけでいいんじゃない?」

「一緒に食べることを考えると、みんな一緒の方がいいだろ? 俺たちが違うの食べてたら、ミーシャたちだって食べたがると思うぞ」

 普段ならミリーの方が気付きそうなことなのだが、何やらすっぽ抜けていたみたいだな。

 ダマを救出するべく行動を開始する。スミレとブルムを抱えて太ももの上に向かい合うような形で座らせた。まだ眠いのか、俺の胸あたりの服をつかんで顔をこすりつけてくる。

 しばらくすると目が覚めたようで、とーたん! と叫んで抱き着いてきた。良きかな良きかな。

 ミーシャはその声で起きて、私も! と言わんばかりに背中に飛びついてきた。

 ウルも目が覚めたようで、俺の近くに来た。

 騒がしくなってきたためか、下の子たちも目を覚ました。

 3人の中でいち早く目を覚ましたシンラが、俺の所へ駆け寄ってくる。膝に座ろうとしたら、姉たちがいたため止まってしまった。後ろを振り返り、眠気眼のまま追いかけてきているプラムとシオンを目にすると、スミレとブルムの間に割り込むように頭を突っ込んでくる。

 その気迫に負けた2人が太ももの上から退いて、シンラに場所を譲った。

「シュウ君は、本当に子どもたちに好かれているわね。でも、2人ほどそうでもなさそうかな?」

 ミリーの言う2人は、シンラを追いかけてきていたプラムとシオンのことだ。シンラがまた俺の膝の上にいるので、猛抗議をするために両サイドから頭突きをしてきているのを見たためのセリフだ。

 下の子たちは、母親たちが回収して下のお世話をするようだ。時間を決めて、トイレに行くようにしたところ、漏らすことが減ってきたらしく続けているとのことだ。

 この年頃の時って、便意や尿意ってあるのか? ないから、おまるに座らせるのだろうか? そこらへんはよくわからないので、任せます!

 おやつが終わったら、ミーシャたちに状況を説明して対策を考えさせてみよう。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...