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第1632話 重い話は嫌だな……
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元王族とその護衛を処理した領主館前。
広場には野次馬が沢山いた。場を治めるためにレイリーの連れて来た、精鋭の方たちに協力してもらい、今回の事情を伝えてもらう。断片的にしか分かっていないが、問題ない部分を抽出して話してもらっている。
そして決定的なのは、あいつがダンジョンマスターの存在を知っていたということだ。そう判断した理由は、あいつの鑑定結果にある。
元王族という称号以外にも、転生者という称号があったのだ。健司の件もあるから転生者についてはどうとも思っていないが、護衛のレベル300超えが10人もいるのは、この世界のことを理解している証拠だろう。
どこまで知っているかは分からないが、ダンジョンで魔物を倒すとレベルが上がりやすいこととか、ゴーストタウンがダンジョンだということを理解していたのは間違いない。
できれば情報を搾り取りたかったが、死人が出たことにより俺も頭に血が上っていたようだ。あいつらの振る舞いを見て、我慢できなかった。
俺は、死者の出た衛兵の部隊のところへ行き、話を聞くことにした。
亡くなった3人は、2人が19歳と20歳の若者で、最後の1人が40代だった。
若者2人は他の街からきていて、勤務態度も問題なくお金の面も何とかなったため、近々家族をこの街に呼べると喜んでいたそうだ。
一緒に来ていたグリエルに、この若者2人の家族にコンタクトを取るようにお願いした。内容は、息子が死んでしまった街だが移住の意志があるなら、住む場所はこちらで用意すること、勤務時間内で職務をまっとうしたことによる死亡……殉職なので、賞恤金を渡すための手続きをしたい旨を伝えてもらう。
もし、移住する気であれば、商隊を派遣して同行させることも伝えてもらう。
最後に住居や賞恤金を準備し、出来る限り希望に沿った働き口を斡旋するが、それ以上の支援は無くゴーストタウンの法に触れるようなことをすれば、問答無用で裁くことを伝えてもらった。
俺としては、来ても来なくてもいいのだが、家族が街のために死んだのだから便宜を図れと言われても困るので、初めに釘を刺しておいてもらおうという考えだ。グリエルも賛成したので、その内容で連絡を取ってもらうことにした。場合によっては、人を派遣することも検討する。
問題は40代の方だな。この人は、世帯持ちで奥さんと子どもが4人、育ち盛りの子どもが3人に、生まれたばかりの赤ちゃんが1人。大黒柱がいなくなったこの家族は、絶望の淵に立たされるだろう。ゴーストタウン以外の街なら。
俺は、すぐに行動へ移す。この殉職した兵士の上司と領主代行を連れて、この家族、奥様のもとへ向かう。
事情を説明するのに、俺よりは上司と領主代行の方が見た目的な意味で、威厳があるので任せることにした。
説明を受けた奥さんは泣き崩れ、子どもたちも一緒に泣いてしまった。
落ち着くまでに時間がかかったが、これからのことについてしっかり話し合わなければならない。
雇う際の契約時に、殉職した場合の項目がゴーストタウンには存在している。賞恤金は他の街でもあるのだが、大した額ではない。これまで街に貢献してくれた兵士とその家族への対応として、十分とは思えない金額しか払われないのだ。
なので、他の街のことを知っている奥様は、これからどうすればいいのか、子供4人も抱えて生きていけるのか心配し始めた。他の街なら、賞恤金を渡して無くなる前に働け的なことを言うらしいと知っていたので、子どもたちを見て悲痛な顔をしている。
そこで俺はこの世界にない概念である、遺族年金について奥様に伝える。日本の遺族年金とは多少違うが、生活の保障がされるという点では同じだ。
子どもたちが成人するまで、ゴーストタウンでは18歳の就学については、完全無料。住宅は引っ越してもらうが、子育てがしやすいように寡婦が多い孤児院の近くに、移り住んでもらい併設されている治療院に就職できるように技術指導を行う。
希望があれば、治療院以外の仕事も斡旋する。少なくとも下の子が5歳になるまでは、遺族年金の他に生活を補助金も出すことを伝えた。
それを聞いたときには、目を丸くしていた。そして、嘘ではないかと確認されてしまった。嘘ではないことと、この街のために殉職した兵士の家族を蔑ろにするつもりはない! と言い切った。
とりあえず信じられないだろうから、当面必要になるであろうお金をお渡しする。あまり多くのお金を持っていると、危険を伴うので多くは渡していないが、商業ギルドの銀行にすでに入金してあることも伝えておく。
家については思い入れがあるのでこのまま住みたいと言われた。移設をするのはどうかと相談する。今の家をそのまま孤児院の近くへ持っていくのはどうか聞いてみると、「それでお願いします」とのことだ。
他の街で孤児院と言えば、治安があまり良くない地域にあることが多いらしいのだが、俺の街では孤児院に治療院を併設している関係上、近くに兵士の訓練場や詰め所、寮などが近くにあるので、街の中でも治安がとてもいいのだ。
それを知っているので、家を移設できるなら引っ越す気になってくれたのだろう。
家族を馬車に乗せ移動してもらっている間に、キャスリングで家を移動させてしまう。現地に着いた奥様や子供たちは目を丸くして驚いていた。魔法を使って移動させたと話しておいた。
相談したいことがある場合には、孤児院の院長を通せば領主代行や、グリエルに相談できるようにしておいた。
すべてが終わった後、俺の執務室で、
「殉職された方の家族への補償が手厚いですね。他の街では考えられませんよ。大黒柱のいなくなった家族は、街にとって不要なものと切り捨てる領主の方が多いのですよ。大半の貴族は、自分の利益しか見ていないですからね」
「うちは、お金ならいくらでもあるからな。あの家族への補償をしたところで、ゴーストタウンの税金だけで考えてもビクともしないだろ?」
「そうですね。できて間もない街という訳ではないですが、建物も道もダンジョンの一部と認識されているため、メンテナンスにお金がかかりませんし老朽化とは無縁です。そのくせ、新しく作る時には問題なく壊せるのですから不思議ですよね」
やっぱり、自分の街で兵士に死人が出るのは、いい気分じゃないよな。ゴーストタウンでは、何気に初めてじゃないか?
他の街というか、中立地域ではない王国や帝国の中にある飛び地の都市では、何人か亡くなっているけどな。
広場には野次馬が沢山いた。場を治めるためにレイリーの連れて来た、精鋭の方たちに協力してもらい、今回の事情を伝えてもらう。断片的にしか分かっていないが、問題ない部分を抽出して話してもらっている。
そして決定的なのは、あいつがダンジョンマスターの存在を知っていたということだ。そう判断した理由は、あいつの鑑定結果にある。
元王族という称号以外にも、転生者という称号があったのだ。健司の件もあるから転生者についてはどうとも思っていないが、護衛のレベル300超えが10人もいるのは、この世界のことを理解している証拠だろう。
どこまで知っているかは分からないが、ダンジョンで魔物を倒すとレベルが上がりやすいこととか、ゴーストタウンがダンジョンだということを理解していたのは間違いない。
できれば情報を搾り取りたかったが、死人が出たことにより俺も頭に血が上っていたようだ。あいつらの振る舞いを見て、我慢できなかった。
俺は、死者の出た衛兵の部隊のところへ行き、話を聞くことにした。
亡くなった3人は、2人が19歳と20歳の若者で、最後の1人が40代だった。
若者2人は他の街からきていて、勤務態度も問題なくお金の面も何とかなったため、近々家族をこの街に呼べると喜んでいたそうだ。
一緒に来ていたグリエルに、この若者2人の家族にコンタクトを取るようにお願いした。内容は、息子が死んでしまった街だが移住の意志があるなら、住む場所はこちらで用意すること、勤務時間内で職務をまっとうしたことによる死亡……殉職なので、賞恤金を渡すための手続きをしたい旨を伝えてもらう。
もし、移住する気であれば、商隊を派遣して同行させることも伝えてもらう。
最後に住居や賞恤金を準備し、出来る限り希望に沿った働き口を斡旋するが、それ以上の支援は無くゴーストタウンの法に触れるようなことをすれば、問答無用で裁くことを伝えてもらった。
俺としては、来ても来なくてもいいのだが、家族が街のために死んだのだから便宜を図れと言われても困るので、初めに釘を刺しておいてもらおうという考えだ。グリエルも賛成したので、その内容で連絡を取ってもらうことにした。場合によっては、人を派遣することも検討する。
問題は40代の方だな。この人は、世帯持ちで奥さんと子どもが4人、育ち盛りの子どもが3人に、生まれたばかりの赤ちゃんが1人。大黒柱がいなくなったこの家族は、絶望の淵に立たされるだろう。ゴーストタウン以外の街なら。
俺は、すぐに行動へ移す。この殉職した兵士の上司と領主代行を連れて、この家族、奥様のもとへ向かう。
事情を説明するのに、俺よりは上司と領主代行の方が見た目的な意味で、威厳があるので任せることにした。
説明を受けた奥さんは泣き崩れ、子どもたちも一緒に泣いてしまった。
落ち着くまでに時間がかかったが、これからのことについてしっかり話し合わなければならない。
雇う際の契約時に、殉職した場合の項目がゴーストタウンには存在している。賞恤金は他の街でもあるのだが、大した額ではない。これまで街に貢献してくれた兵士とその家族への対応として、十分とは思えない金額しか払われないのだ。
なので、他の街のことを知っている奥様は、これからどうすればいいのか、子供4人も抱えて生きていけるのか心配し始めた。他の街なら、賞恤金を渡して無くなる前に働け的なことを言うらしいと知っていたので、子どもたちを見て悲痛な顔をしている。
そこで俺はこの世界にない概念である、遺族年金について奥様に伝える。日本の遺族年金とは多少違うが、生活の保障がされるという点では同じだ。
子どもたちが成人するまで、ゴーストタウンでは18歳の就学については、完全無料。住宅は引っ越してもらうが、子育てがしやすいように寡婦が多い孤児院の近くに、移り住んでもらい併設されている治療院に就職できるように技術指導を行う。
希望があれば、治療院以外の仕事も斡旋する。少なくとも下の子が5歳になるまでは、遺族年金の他に生活を補助金も出すことを伝えた。
それを聞いたときには、目を丸くしていた。そして、嘘ではないかと確認されてしまった。嘘ではないことと、この街のために殉職した兵士の家族を蔑ろにするつもりはない! と言い切った。
とりあえず信じられないだろうから、当面必要になるであろうお金をお渡しする。あまり多くのお金を持っていると、危険を伴うので多くは渡していないが、商業ギルドの銀行にすでに入金してあることも伝えておく。
家については思い入れがあるのでこのまま住みたいと言われた。移設をするのはどうかと相談する。今の家をそのまま孤児院の近くへ持っていくのはどうか聞いてみると、「それでお願いします」とのことだ。
他の街で孤児院と言えば、治安があまり良くない地域にあることが多いらしいのだが、俺の街では孤児院に治療院を併設している関係上、近くに兵士の訓練場や詰め所、寮などが近くにあるので、街の中でも治安がとてもいいのだ。
それを知っているので、家を移設できるなら引っ越す気になってくれたのだろう。
家族を馬車に乗せ移動してもらっている間に、キャスリングで家を移動させてしまう。現地に着いた奥様や子供たちは目を丸くして驚いていた。魔法を使って移動させたと話しておいた。
相談したいことがある場合には、孤児院の院長を通せば領主代行や、グリエルに相談できるようにしておいた。
すべてが終わった後、俺の執務室で、
「殉職された方の家族への補償が手厚いですね。他の街では考えられませんよ。大黒柱のいなくなった家族は、街にとって不要なものと切り捨てる領主の方が多いのですよ。大半の貴族は、自分の利益しか見ていないですからね」
「うちは、お金ならいくらでもあるからな。あの家族への補償をしたところで、ゴーストタウンの税金だけで考えてもビクともしないだろ?」
「そうですね。できて間もない街という訳ではないですが、建物も道もダンジョンの一部と認識されているため、メンテナンスにお金がかかりませんし老朽化とは無縁です。そのくせ、新しく作る時には問題なく壊せるのですから不思議ですよね」
やっぱり、自分の街で兵士に死人が出るのは、いい気分じゃないよな。ゴーストタウンでは、何気に初めてじゃないか?
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