ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,648 / 2,518

第1648話 計画進行中

しおりを挟む
 あれから、3回ほどサッカーの授業に参加させてもらった。

 2回目はボールの蹴り方、3回目はボールの蹴り方の応用、4回目は基本的なルールを実演込みで説明。2回目3回目は、みんなの見込みがよかったのだが、4回目のルールとなると目に見えて首を傾げる子どもたちが多かった。

 試合=戦闘みたいな感じで認識していたようで、殴る蹴るなどして止めるものだと思っていたらしい。その中でボールを運んでゴールに入れる、過酷な遊びだと思っていたのだとか。

 スポーツじゃなくて、格闘技ともいえないけど物騒な遊びだな!

 俺はこの時にもう一度、サッカーを遊びの範囲で楽しむためにみんなにやってもらいたいと思っている、と伝えた。どこまで分かってくれるか不明だが、しっかりとしたルールがあり覚えてもらい、その範囲内で創意工夫してくれるようになるといいな。

 俺の関係者以外では日本語を理解できないので、俺の持っている動画を見せてもみんなには分からない。なので、運動の得意な人に集まってもらい指導用の動画を作り、各学校へ配布している。

 学校の基本的な設備は同じなので、映像を見ることができる魔道具も準備されている。過去にそういった魔道具があったみたいで、それをDPで召喚して解析してから新しくしたものを配布している形だ。

 しばらく経った頃には、学校が終わってから帰りに校庭で遊んでいる姿や、公園の一角で遊んでいる姿を見るようになった。それでも、家の手伝いに支障が出ない範囲で遊ぶ形だったので、忙しい家の子たちはなかなか遊びに参加できていなかったな。

 ディストピアでは、貧しいから子どもも働いているということは基本的にない。

 そもそも、子どもを学校に通わせることによって、街から給付金が出る形なので子どもは働かせるより学校へ行かせた方が得なのだ。それに知識も身に着くから子どものためにもなると言って、ディストピアでは就学可能な子どもは100パーセント学校へ通っている。

 では、なぜ忙しい家があるかと言えば、繁盛している店の子たちだからだ。商店や飲食店や屋台などは、過多にならないように調整しているので、半数以上の店は繁盛していると言ってもいいだろう。そうでもない店でも、生活に苦労することは無いくらいには稼いでいるようだ。

 ディストピアって、思っている以上にお金持ちが多いんだよね。

 お金の流れとしては、野菜や魚の加工品の畑エリア、家畜エリア、海産物エリアの人たちや、冒険者たちから始まり、携わっている家の人がディストピアのお店に金を落とし、お店が潤う。潤ったお店の人がさらに違うところでお金を落とす。

 といった形で、経済が回っている。医療に関しては、日本より安価で手軽に受けられる上に、外科手術などを行わなくても治せるのだ。

 そんなこんなで、ディストピアは基本的に裕福なのである。

 他の街では、子どもにサッカーをやらせられるほど、裕福じゃない家庭の方が多いよな。そうするとどうしても、お金持ちの子どもの参加が多くなるのかな? 商人であれば、他の街に顔が売れるとか、考えたりするのだろうか?

 サッカーは遊びで教えているけど、各街の対抗戦ともなれば、街の威信をかけた戦いにもなるわけだ。できれば、サッカーを利用してとかいう、金持ちの発想はできる限り排除したいな。あるか分からないけどな。

 地球で貧しい国の子どもたちの中には、プロ選手になってお金を稼ぎたいと言って練習している子もいるとか聞いたことがあるな。貧乏だからチャンスが無くなるのだけは、絶対に避けたい……ということでグリエルに相談だ。

「なるほど、言いたいことはよく解りました。確かに、お金持ちの子どもが名を売る、というのはありえますね。それは、街対抗のイベントとしては、間違っているのもわかりました。ですが、やはりと言っては何ですが、お金のない家の子どもたちを参加させるのは、難しいのではないでしょうか?」

 ディストピアやゴーストタウン以外でも、学校の費用はタダなのだが、通わせられるだけの余裕がない家もそれなりにあるのだ。そんな子どもたちにも参加できるようにしたいと、俺は考えている。

 なので、街対抗のイベントに参加する候補の子どもたちに、街代表という名目で、俺の商会から厳密には、使われていない俺への配当金を使って、支援金を出すということに決まった。

 一番の問題はお金の部分だったので、札束で叩くようなやり方だが、俺のお金を出すことに決めたのだ。

 未だに、勝手に溜まっていくお金が俺の……という気がしないが、使えるところで使っていこう。しっかりとした名目が無ければ、グリエルやガリアに却下されるから、何でもんかんでも札束ビンタができるわけではないけどね。

 後は色々調べていくうえで、ある程度早い時間や遅い時間であれば、学校に行くことができる子どもが増えることもわかったのだ。

 街で親にアンケートを取り自分の子どもを、学校に行かせやすい時間を答えてもらったところ、早朝や午後という意見が多く出て来たのだ。早朝と答えたのは食事処が多く、午後と答えたのは農家が多かったのが印象的だった。

 農家に関しては作付けや収穫時期以外は、兼業していることも多くその時期は、子どもが家に兄弟だけで残っている、ということもあるので、時期によって学校に通うことのできる時間を変えられるようにもした。

 学校関係のお金は、街からの少しの支援金以外は全部俺の懐から出ているので、働く教師さえ確保できるならいくらでも対応が可能なのがいい点だな。元々夜間学校もやっているので、柔軟に働いてくれる人が多いのもいい点だ。

 そして何より学校に通わせることによって、食事をタダで食べれるので子どもたちの栄養バランスが良くなるから、健康的に育ってくれるのだ。子どもは宝である!

 おいシンラ、今いいこと考えているんだから邪魔しないでくれ。

 ったく、分かったから顔を叩くな。ん? なんだ、遊んでほしいのか?

 今日は、朝からシンラが俺の部屋にやってきて、遊べと催促してきたのでいろんなことをして付き合っているのだが、独り遊びを始めたところで最近のことを考えていたら、遊べ! と訴えて来たのだ。

 娘たちも可愛いけど、生意気な息子もこの年頃なら可愛いだろうな。俺みたいな性格の息子だったら、中学生になったころにキレそうだと思うな。うちの親、良くキレなかったな。怒られることはあったけど、それは俺が悪かったわけだしな。

 あ~ごめんごめん、次は何して遊ぶんだ?
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...