ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,658 / 2,518

第1658話 まじか

しおりを挟む
 昨日、「今日は報告書も特に急ぎの物は無いので、明日はのんびりしてください」と帰る前にグリエルに言われていたので、今日はのんびりすることにしていた。

「それにしても、昨日は報告書の数が多かったな。珍しく70位、報告書あったもんな」

 と、朝食を食べながらつぶやいていた。

「とーたん、行儀悪いよ?」

 食べながら声を出していたら、スミレに怒られてしまった。いったん食べるのを止めて、

「今日は、みんないるんだな。何かあったっけ?」

 俺が食べる時間には普段は半分くらいしかいないのだが、今日は何故か全員いるのだ。入ったときから違和感しかなかったが、誰もツッコんでいないので今まで放置していた。

「特にないとおもうよ」

 今度答えたのは、俺を挟んでスミレの反対側に座っているブルムが答えてくれた。

 今日はたまたまなのかな? ほんまに? 今までこんなこと無かったと思うけどな。

 とはいえ、ブルムに何もないって言われたら、どうにもならないわな。

「みんなは、今日は何かする予定なのか?」

「今日はね、午前中はみんなで勉強して、午後はお母さんたちと一緒に格闘の特訓をするの! アチョーって! でもね、まだお母さんたちに攻撃もあてられないの。全部かわしちゃうんだよ!」

 ミーシャがフォークを縦に振って、ミリーたちがどれだけすごいのか熱弁してくるのだ。でもな、危ないからフォークは振り回してはいけません!

 しゃべる時は食べるのを止めて、和やかに話していると、

「ね~ね~、とーたん。とーたんはお母さんたちより強いの?」

「どうだろな。シュリには勝てないんじゃないかな? 他のお母さんたちには、勝てるんじゃないかな?」

「ミーちゃん、騙されたらダメですよ。シュウはこんなこと言ってるけど、本気でルール無しだったら私たち全員が束になっても勝てないわよ」

 カエデからそう聞くと、ミーシャ・スミレ・ブルムの3人が俺の顔をキラキラした目で見てくる。ルール無しだったら、多分みんなに勝てるんじゃないかと思うけど、殺し合いじゃないからさすがに勝てないと思うんだよね。

 だから、ミーシャたちよ。そんなキラキラした目で俺の方を見続けるのは止めてくれ。

「本気で戦うなら、確かにシュウ君は強いだろうけど、シュウ君は私たち家族に全力を出すことは無いわよ。だから制限のあるなかなら、シュリお母さんが一番強いと思うわよ」

 ミリーにそういわれると、今度は落胆したような顔で俺の方を見てくる。これはキツイ……

「こら! そんな顔で見ないの。シュウ君の強さは、その優しさがあるからよ」

「優しいのに強いの?」

「そうよ。でもね、優しいから強いんじゃないのよ」

 ミーシャたちは混乱して首を傾げている。

「でも、お母さんたちには勝てないんでしょ? じゃぁ弱いんじゃないの?」

「なんて説明したらいいのかな。シュウ君、ルールを決めた模擬試合なら、可能な限り本気を出してくれるよね」

「まぁ、ルールの範囲内なら本気を出すけど、ルールでみんなを怪我をさせる範囲があるなら、ちょっと無理かな」

「怪我の範囲は?」

「模擬試合なら打撲位までならいいけど、刃を潰してあっても骨折とかはあり得るだろ? そう考えると、攻撃しにくくなるな」

 俺の妻たちは、結構ガチで戦闘訓練をするのだ。骨折とか、結構当たり前にして戦うからな。後遺症も残らないように、しっかりとエリクサーを準備させてからだけどな。

「私たちは、骨折位なら問題ないと思うんだけどね」

「骨折位っていうけど、骨折だって死ぬ危険性はいくらだってあるんだぞ」

「そうならないための、エリクサーでしょ? それに、人ってすぐには死なないから、エリクサーがあれば問題なく助かるんだよね」

「理屈は分かるけど、やっぱり家族に大きな怪我をさせるのは嫌だな」

「とーたんは、痛いのが嫌いなの? 弱虫?」

 ミーシャの純粋な疑問に胸をえぐられる。

「ミーちゃん、シュウはね、敵にはめっぽう強いのよ。でも、敵じゃない家族にはその力をむけられないのよ。でもね、本気で戦えば間違いなくシュウが一番強いわ。弱虫とかそういう話じゃないのよ」

 よくわからないと、首を傾げるミーシャたちだった。

「確かにシュウ様は強いけど、奥さんには優し過ぎるからね」

「「「とーたんのカッコいい所みたい!」」」

 俺が強いのだということは分かったようだが、戦っている姿をまともに見せたことが無いので、その戦っている姿が見たいらしい。

「カエデ、ミリー、どうすればいいんだ?」

「一番は、シュウが本気で戦うのがいいんだけどね。そういう訳にはいかないのよね?」

「ポイントを決めて、そのポイント分のダメージを食らったらバリアが無くなる、みたいな感じだったらいけるかな?」

「バリアを2重3重にして、1枚目が壊れたら試合終了ってこと?」

「それなら、多少本気を出せるかな?」

『話は聞かせてもらったわ! そんなあなたに、とっておきの物を召喚できるようにしてあげましょう! その名も、神のコロッセオ! このコロッセオ内では、絶対に死者が出ないのよ! 致死に至るダメージを負ったら、待機エリアに強制的に飛ばされるというなんともご都合主義な闘技場よ!』

「なんか、都合がよすぎて腹が立つけど、いくら死なないと分かってても、一瞬でも傷が付くんだから俺には意味がないな」

「あ~神様、ミリーです。いつもシュウがお世話になっています。1つ聞きたいのですが、バリア発生装置みたいなのを身に着けて、バリアが消失するダメージを負ったら、待機エリアに飛ばされたりはできないですか?」

『あ~猫獣人の子ね。あなたはそこの誰かさんと違って、礼儀正しいから好きよ。誰かさんのお嫁さんたちからは、本当に良く感謝の念が届いてくるから私も助かってるわ。で答えだけど、専用の魔道具もしっかりとコロッセオに備わっているわ。設定してあげれば、あなたの言っているような仕様にできるわね』

「シュウ君。これなら問題ないんじゃない?」

「妻たちを攻撃するのか……気が引けるな」

『ここまでお膳立てしてあげたんだから戦いなさいよ、このチキン男!』

「そこまで言うなら……解った」

『これで娯楽が1つふ「もうお前にデータは送らん」ごめんなさい、私が間違ってたのでそれだけはお許しください』

「シュウ、さすがにそれは無いわ。せっかく私たちの希望を叶えてくれるために準備してくれたんだから。怪我はしないようにできるんだから、この子たちにカッコいい姿見せてあげなよ」

「カエデ、そういうけどさ、模擬試合だったとしても、父親と母親が戦ってる姿を見て、俺が勝ったらかっこよく見えるんか?」

「え? 強ければかっこよく見えるんじゃないの?」

 おっと、ここにきて認識が違うぞ! どんな形でも、暴力はアウトだろ! って思っていたが、みんなはそうじゃないらしい。訓練で武器を合わせることはあっても、ダメージにつながるようなことは可能な限り避けてるからな。

 結局、押し切られて、神のコロッセオで妻たちと戦うことになってしまった。

 どうしてこうなった!
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...