ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1780話 味覚狩り

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 自宅への帰り道、ジュリエットとマリアを連れて、隣を歩くランの背中をモフモフしながら、今日の午後の予定を考えている。

 仕事が予定より早く終わってしまったため、空いてしまった午後の時間をどう使うか、悩んでいるのだ。なんとなく、ゲームや読書という気にはならないので、今まで体験したことない何かをしてみたいな。こういう時は、妻たちにも聞いてみよう。

「したことないことですか? そうですね……最近呼んだ本の中に、秋の味覚狩りみたいなセリフがありましたが、普段の収穫とは違うのですよね? それをしてみては、いかがですか? それならPDを使えば、ダンジョン内で再現できるのではないですか?」

 秋の味覚狩り……ディストピアに来てから、季節関係なく食材が採れるから忘れていたが、秋にはそういったことが行われていたよな。シュウは、何年も昔の記憶をほじくりだした。テレビとかではよく見るけど、実際にやった事なんてなかった気がする。

 秋の味覚狩りでイメージするのは……山かな? 海の幸はもう少し寒くなった時期だろう。じゃぁ、山菜か? 俺の好きなタラの芽は、確か春だったな。雪解けから、温かくなる時期だった気がする。

 あ~、栗やキノコは秋のイメージだな。子どもたちも参加できるなら、栗は危険だから……キノコ狩りとかなら、良さそうかもしれないな。うん、キノコ狩りをしてみよう!

 ジュリエットとマリアに伝えてみると、いいですね、と答えてくれたので、今日の午後はキノコ狩りにしよう。ブラウニーたちには、夕食にキノコ尽くしのメニューにしてもらえば、面白そうだな!

 家に帰ったら、娘たちが迎えてくれて、ちょっと遅れて逃げているシンラと、追っているプラムとシオンがやってきた。お前らは相変わらずだな。何が面白くて、毎日毎日追いかけっこをしているのやら。

「ウル、今日はもうすることってなにもないか?」

「ん?」

「あ~、今日は早く帰ってこれたら、午後に時間が空いてるんだ。午後すること無ければ、みんなで味覚狩りに行こうかなってね」

「「「みかくがり?」」」

 ミーシャたち3人がシンクロして、首を傾げている。

「味覚狩りって、収穫とかを体験することじゃなかったっけ?」

「ウルの指摘は間違いじゃないけど、今日は味覚狩りでも秋の味覚狩りだ! ここに住んでると、秋の味覚って言われてもわからないだろうけど、今回はキノコ狩りをしてみようと思う!」

「「「キノコ!」」」

 ミーシャたちのテンションが上がっているが、この子たちは嫌いなものが無く、何でも食べるので雰囲気にテンションが上がっているだけだ。

 ウルは、どんなキノコが採れるのか考えているようだ。ミーシャたちは勢いで喜ぶのだが、ウルはしっかり考えて喜ぶタイプなのだ。

 抱っこを求めてきたシンラを抱きかかえると、プラムとシオンが自分も抱っこしろと、足を攻撃してくるのでシンラの両側に来るように抱こうとすると、シンラから止めろ! と攻撃を受けるが無視である。

 この家はな、男より女の方が強いのだ。シンラ、よく覚えておくんだぞ。何せ男は、俺・シンラ・レイリーの3人しかいないんだからな。上手く立ち回らないと、大変なことになるぞ!

 俺の心の声を聞き取ったのか、シンラは笑顔が張り付いたような顔になってしまった。

 本当にすまん。だけど、今日は2人で風呂に入ろう。娘も母親たちも無しで、一対一だ。いや、もしかしたらレイリーおじいちゃんも来るかもしれないけど、それはいいよな?

 シンラはぐるりとこちらを向いて、親指を立てている。お前、どこで覚えたんだ? どうせなら、寝る時も一緒に寝るか。プラムたちには、ライを貸し出してやろう。ライ、今日はプラムたちと寝てくれるか?

 振り返ると、ライが固まっていた。おい、クロとギン! 羨ましいからって、ライをいじめるんじゃないぞ? いじめなければ、娘たちにたまには一緒に寝てあげてってお願いしてやるから。

 そうすると、ライに向かって威嚇していたクロとギンが大人しくなり、こちらを向いて早くミーシャたちに言え! と催促しているように見える。後で言ってやるから、少し待っていなさい。

「で、時間はどうなんだ?」

「お母さんたちが、午後は何かするって言ってた気がするけど、何だったかな? ちょっと聞いてくるね」

 ウルが母親たちの所へ向かおうをすると、シンラたちを抱いて羨ましかったのか、ミーシャたちが俺の足にしがみついていたが、ウルについて母親たちに話しを聞きに行くみたいだ。

 来るっと回れ右をした娘たちに、ちょっと寂しさを覚えるが……今はお前たちの方が優先だな。俺が少し寂しい気持ちになった瞬間に、プラムとシオンから顔を叩かれたので、意識を下の子たちに戻したのだ。

 普段はかまおうとすると逃げるのに、こういう時は察しがよくて本当に困る。なんか、猫みたいな感じだな。忙しかったりするときには、かまえって言うのに、こっちがかまいたい時はこっちにくんな! みたいな空気出すもんな。

 その点、上の子たちは……あ~、すまんすまん。

「そうだ、お前たちもキノコ狩り行くか?」

 キノコは分かっているが、キノコ狩りと言われてもピンとこないだろう。3人揃って首を傾げている。だけど、キノコは分かるので、キノコ食べる、みたいなことは言っている。

 食堂へ向かうと、まだ昼食の時間ではないので何も並んでいないが、良い匂いが漂っている。

 シルキーたちに声をかけると、アマレロが飛んできた。

「今日、午後の時間が空いたから、キノコ狩りに行きたいと思うんだけど、今日の夕食ってまだ変更可能か?」

「どういった物を考えていますか?」

「キノコは秋の味覚として考えているから、キノコ尽くしでもいいし、秋の味覚てんこ盛りでもいいかなって思っているんだけど、難しいか?」

「食事に関しては、問題ありません。確か……ありました。秋の味覚でしたら、サンマとかどうですか? ちょっと前に、湖の方で捕れたみたいで多めに仕入れています」

 サンマか……いいね!

「オーケー、メニューは任せるから、秋の味覚のフルコースでお願い。後、キノコ狩りをしたら、すぐに焼いて食べたいから、七輪と炭の準備もお願いしていいか?」

 かしこまりました~、と言って、アマレロはキッチンへ飛んで戻っていった。

 下の子たちは、分かっていないが、美味しいものが食べれるのだろう、とテンションをあげている。可愛いな。
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