ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,840 / 2,518

第1840話 一先ず……

しおりを挟む
「グリエル、ガリア、ゼニス! 防御態勢!」

 何が起きているか理解できていない3人だが、俺の指示によって防御態勢を取った。戦闘を生業としていないこの3人に、魔法の兆候を見極めろと言っても、無理というものだ。

 今日のお供である、聖獣4匹と猫トリオは俺が指示を出す前に、俺たちを守れる位置に移動していた。シエルは魔法の兆候を感じた瞬間に、魔法障壁と魔法結界で2重に魔法に対するガードをしている。

 何が起きているのかを確認してくる3人だが、今この瞬間にも魔力が高まり暴発しそうな雰囲気なのだ。詳しく説明をしている暇は無いので、魔法の発動兆候を感じた……とだけ伝えておく。

「ダマ、これって……普通の魔法発動の兆候と違うよな?」

『そうですね、なんて言っていいのか分からないですが、無理やり魔力を搾りだしている感じですね……暴走みたいな感じでしょうか?』

「なんだって!」

 ダマと普通の魔法と違う雰囲気がするということで話をしていたら、ゼニスが声を上げた。

「シュウ様、今、魔力が暴走しているような感じと言いましたよね? まさか、あの禁薬が使われているのでは……」

「ゼニス、どういうことか分からないが、どうしたらいいと思う?」

「もし、私の想像している物でしたら、魔法が発動した地点から500メートルほどは、更地になる可能性があります……」

 マジか!

「グリエル、緊急放送準備! 俺は、ゴーストタウン内をすべてをダンジョンのオブジェクト化する! 準備ができたら教えてくれ」

 俺はダンジョンマスターのスキルを使い、ゴーストタウンの街全体をダンジョンに作り替え、建物などをオブジェクト化する。ついでに、DPを注ぎ込みオブジェクトとしての強度も上げておく。

「シュウ様、準備できました!」

『領主のシュウより、緊急放送。緊急事態発生! 今、ゴーストタウン内で、魔力の高まりを検知。屋外にいると危険ですので、至急近くの建物に避難してください。大通りのお店などは、後で補填をしますので出来る限り、大通りの人間を建物の中へ避難させてください。繰り返します……』

「それにしても、この魔力の高まりは何なんだ? シングルの冒険者が全魔力を振り絞っても、ここまで魔力を搾りだせるものじゃないぞ……」

『主殿!』

 ダマの叫びと同時に、魔力が弾けた。俺は盾を取り出し、フォートレスを使用する。

 魔力の爆発が起きた後、俺たちは現場へと向かう。

 パッと見た感じ、一般市民に怪我はあるものの、死者が出た感じではない。だが、避難誘導に当たっていたと思われる兵士たちに、死者が出ていることが見て分かる。

 指揮系統が混乱しているな……

「グリエル、ガリア、お前たちは領主館へ行き、ディストピアからの応援を頼む。後情報の統括も頼む。ゼニスは、商会へ走りポーション類の在庫確認、少ないようだったらブラウニーに、制限なしで召喚してもらえ。グダグダしている時間は無いぞ! 走れ!」

 グリエルたち3人を走らせ、俺はダマに目配せをする。

 GURUOOOOOOOOOOO!!!

 ダマの咆哮で、辺りが静かになる。

「お前ら落ち着け! ゴーストタウンの守りを担う兵士が、取り乱してどうする! トリアージを行い、今すぐ対応が必要な人間には、制限なしでポーションの使用を許可! すぐに命の危険が無い人は、近くの広場へ運べ。シエル、お前はその広場で守りを任せる。猫トリオは、暴動が起こったら力で止めろ。

 そこの兵士、広場には5部隊は派遣するんだ! そこ! その騒いでいる人間は、死ぬ危険性は無い! 向こうの手足が千切れた人の様子を見ろ!」

 現場が混乱しているので、誰かが指示を出さないとこのまま混乱した状態で、何もできないまま終わってしまう。それだけは許されない。

『主殿、魔力を暴走させたと思われる人物を発見しました』

 ダマに呼ばれて移動すると……

「なんだこれ?」

『まだ生きています……鑑定結果を見ると、15歳の少女らしいです』

 俺の目の前にいたのは、どう見ても80過ぎのやせ細ったおばあさんの様な見た目の、女性だった……

「なんなんだよこれ!」

『主殿! まだ生きています! どうにかして治療を!』

 ダマに怒られて、俺はハッとする。手持ちのエリクサーで、一番高品質の物を取り出してやせ細った女性に飲ませる。

「どういうことだ……? 多少回復の傾向はあるが、すぐに状態が悪くなるぞ……」

『こういった事例を見たことがあります。確か、ディストピアで可愛がってくれたおばあさんが、寿命で亡くなる際にエリクサーを飲ませた時と同じような反応です』

「15歳の少女が、寿命で命が尽きかけているって言うのか? 禁薬……もしかして、そう言うことなのか! こんな腐った真似をした奴は、絶対に許さねえぞ! 待て待て落ち着け……怒る前に寿命が尽きかけているこの子をなんとかしないと……」

 そんなことを考えていると、俺の近くに一瞬だけ突風が吹いた。

「シュウ様、何があったのですか?」

 そこには、シュリがいた。

「シュリか! きちんとしたことは分かっていないが、暴走した魔力が弾けて周囲の惨状を引き起こした。その原因となった人物だが、目の前にいる少女のようだ」

「少女ですか? どう見ても、少女には見えないのですが……」

「混乱するのもわかるが、15歳の少女で間違いない。どういった経緯でこうなったかは、推測でしかないが……禁薬とよばれるもので、魔力と一緒に寿命も吸い尽くされたのだと思う。寿命がほとんどないせいか、エリクサーの効果が無い……」

 シュリが一瞬悲痛な顔をするが、

「シュウ様、歳を取らなくなる丸薬を70個程召喚してください」

 良く分からないが、妻たちの中には飲み始めた者がいる、歳をとらなくなる丸薬を70個要求された……お願いされているので、70個召喚してシュリへ渡す。

 シュリが少女の口に丸薬を運んでいると、辺りがまた騒がしくなってきた。

 他の妻たちが到着して、兵士たちに指示を出し始めたようだ。有無を言わせぬ迫力で指示を出しているため、混乱をしている兵士たちも指示に従いてきぱきと動いている。

 シュリは、10個ほど丸薬を飲ませた後に、エリクサーを口に注いでいた。そうすると、先ほどまでは80過ぎのやせ細った体をしていたが、多少肉がついた様子だ……

「シュリ、効果は出ているけど、そのこの栄養バランスを考えろよ。そんなやせ細った状態で、回復を続けていたら、栄養失調で死ぬ可能性がある」

 俺も忘れていたが、体を回復するのには、大量のエネルギーが必要なのだ。手足が千切れた状態で、その手足を利用して回復するのなら問題はあまりないが、無い所から作るとなると、大量のエネルギーと栄養が必要になるのだ。

 シュリは、俺の言いたいことを理解して、近くに来ていたピーチを呼び、近くにある街の施設へ運び込んだ。

 俺は魔力を練り、弾けさせることによって、大きな音を立てる。

「傾注! けが人の広場への搬送は終わったか? よし、なら次は……隣の広場に簡易の病院を建てる。兵士たちは手分けをして、建物を建てられる人間をかき集めろ。もし命令に逆らうようなら、奴隷の首輪を使うことを許可する。とにかく数を集めろ!

 キリエ、ネル、2人は広場へ向かい、治療の陣頭指揮をとれ。邪魔するものは、実力で排除しろ。治療院から援軍が来たら、割り振りを行いこれ以上の死者を出さないように努めろ。2人に付いて何人か派遣をするように、従魔たちも半分は向こうに付いていけ」

 指示を出して、現場の混乱を抑えることには成功した……
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...