ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1873話 考察

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「それにしても、見事に引っかかっているでござるな。このエリア自体が時間稼ぎトラップでござるのに……しかもヒントがそこかしこにあるでござるよ。ダンジョンマスターとは、アホの集まりでござるかね?」

「そういう意味で言うと、あんたもアホの1人になるんだけど、その辺どうなのよ?」

「綾乃殿! 何を言っているでござるか! 某が脳足りんなのは、この姿を見れば分かるでござろう! あっ、それ痛いんでやめてほしいでござる。痛い、痛いでござるよ!」

 バザールが骨の姿になり頭蓋骨をパカッと開け、綾乃に確認するように見せて、聖拳を纏った拳で殴られている。こいつ戦闘センスは皆無なのに、スキルや魔法の使い方は上手いんだよな。

「主殿、笑ってないで助けてほしいでござる。空気を和ませるために行った、ボーンジョークが綾乃殿には通じなかったでござる!」

「バザールの言いたいことも分からなくもないけど、ずっと意識共有や視覚共有しているわけじゃないから、すぐには発見できないだけだろ。ヒントもわかりにくい位置にあるしな。ヒントのおかげでダンジョンの作成DPの消費を抑えられているんだしな!」

「そんなことをしなくても、DPなんて有り余っているのに、消費を抑え大軍を止めるダンジョンを作るんだから、頭がおかしいわよね……ダンジョン作製に消費しなかった分、魔物の召喚と強化にお金をかけてるみたいだけどね」

「その通り! DPの消費を考えないなら、そもそも条件を満たさないと生存できないエリアを、いくつか配置するだけでいいからな。条件を難しくすればするほど、DPの消費が跳ね上がるのがダンジョンを作る能力だからな」

 いつ研究したのか忘れたが、ダンジョンを作るためにはいくつかのルールが存在する。

 知っての通り、絶対条件が人間に攻略が可能であること。ダンジョンは人間を体内に人を入れて、そこからDPというエネルギーを吸収し、それを消費して成長していくのである。その常識をぶっ壊したのが、俺なんだけどね。

 この人間が攻略可能というのは、魔物無しでの状態を指すのだ。今回のダンジョンもそのルールからは逸脱していない。むしろ、人間に合わせて通路を設計しているため、魔物にとっては攻めにくい造りとなっているだけなのだ。

 話を戻して、攻略可能というのは、システムが判断しているようで、生存しにくいエリアを作る時は、DPの消費が跳ね上がるのだ。

 例えば、今回で言うと4階の迂回路である、あのヴェノムトラップのエリアだが、呼吸だけでなく皮膚に触れたらアウトの毒だった場合、消費DPが何万倍にも跳ね上がる。全身を隙間なく被える装備を、作ることが難しいからだ。

 それを呼吸だけに絞って、ガスマスクを着用すると言う条件で通れるようにすれば、DPの消費は抑えられるのだ。

 他にも、トラップエリアは、基本的に攻略方法が無いと設置できなかったり、真空状態の部屋は作れなかったり、ダンジョンの一角だけは水没させられるが、全てか極一部だけどちらかに偏っている、という形にしかできないのだ。

 すべてを水没させても問題ないのは、この世界には魚人族がいるからだと思う。だけど、半々とかにできないのは、おそらく装備の変更の観点や、ダンジョンマスターに一方的に有利という点だと考えている。

 俺が今回作ったダンジョンは、トラップなんかにはDPをかけているが、通路や部屋の特性に関してはいじっていない。人間が通れるという条件を満たして、上下に大きく移動する階層を作っただけなのだ。階層を作るにあたってDPの消費制限をしていたので、これでもまだ手を抜いていると言っていいだろう。

 何でそんなことをしているかと言えば、縛りプレイで勝つ! とかってに決めたからだ。悪乗りした綾乃たちもそれに便乗して、トラップも即死トラップを大量に設置しているが、DPを抑える造りをしている。

 俺たち最強だからな! 的なノリで舐めプをしていたのだ。

 でもアイギスの盾を貰えるというのなら、話は変わってくる。多分勝てるだろうから絶対に勝つに、目的が変わったので6階に追加で戦力を送り込んでるし、元々メインに据えていたフェンリルの親子にも了承を得ている。

 ガロウとオウカのフェンリル夫婦だが、14匹の子を産み強く育てているのだとか。育てていく過程で4匹は死んでしまったが、弱肉強食なのでそれを受け入れ残りの10匹を育てているんだってさ。死んでしまった4匹も可愛かったが、生き残れないようではだめだと言うことらしい。

 綾乃が知っていたのは、1匹だけだったようだが、実際には4匹も亡くなっていたようだ。

 今回フェンリルの親子は、試練としてこのダンジョンのボスになりたいと、懇願してきたのだ。Lvがカンストしたガロウとオウカ……Sランクの魔物2匹と、800台を超える子オオカミ……もとい、子フェンリルたちが最終砦だったのだ。

 負けることはないと思うが、亜人系なら普通に毒を使ってくることもあるからな。何匹かは死ぬかもしれないと考えていた。全滅はありえないと考えていたが、絶対に勝たないといけなくなったので、追加戦力を入れることを許可してもらい、追加戦力にはサポートに回るように命令している。

「そもそも、5階を突破できるか、あやしくなってるんだけどな」

「何急に独り言言ってんのさ、気持ち悪いわよ」

 ……そのツッコミは無くね?

 綾乃に説明してやると、苦笑していた。バザールは顎をカタカタ振るわせて笑っていたな。

「シュウの言いたいこともわかるけどね。正直5階のトラップというか本命は、ボスのビックゴーレムなのにね。魔物で強化されたあいつらを殺すのは、至難の業でしょ。せめてビックゴーレムと同じくらいのサイズの魔物がいないと、正直厳しいと思うわよ」

「そうでござるな。攻めてきている魔物の中に、柔術とか関節技の得意な個体がいれば話は変わってくるでござるが、魔物がそんなスキル使う訳ないでござるよね。柔術や関節技って、弱い人が強い人から身を守るための護身術が始まりだって言われているでござる」

「あれ? そもそも、武術とかの始まりって、護身じゃなかったっけ? 護身から発展して、技術体系化されていったはずよね。強くなるための1つの道筋って奴よね。本当に強い人間は、技術が無くても本当に強いもんね。特にこの世界では……」

「それは、スキルもあるからな~」

「何言ってんのよ。あんたなんて、スキルを全部カットして力だけで戦っても、この世界でトップを争えるでしょうが!」

 ハリセンで叩かれた。

 この世界の人間には、種族差はほとんどないが、才能の差は歴として存在している。剣術スキルが覚えやすい奴、槍スキルが覚えやすい奴……鑑定などでは見えない隠しステータスのようなものが、存在していると俺は考えている。

 それに生まれながら、中には力が強かったり、器用だったり、賢かったり、魔力量の多い人間も存在する。所謂、個性が存在するのだ。シュリの英雄症候群は呪いなんだけどね。これも個性と言えば個性だろう。

 っと、話がそれたな。
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