ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,899 / 2,518

第1899話 順調順調

しおりを挟む
 ウルが警戒するように指示を出し、目的のダンジョンへ進んでいく。途中で現れたゴーレムは、哀れだったな。ゴーレムは動きが早くない、連携も拙いので、ミーシャが注意を引きつけて、ウル・スミレ・ブルムの3人が弓とクロスボウでコアを撃ち抜き、倒していた。

 弓はウルだけで、ミーシャ・スミレ・ブルムの3人は、クロスボウのようだ。注意を引き付けていたミーシャも、槍に持ち替えており、一撃離脱でコアを貫いていたな。

 本当にこの子たちは優秀過ぎるな。

 ヴローツマインのダンジョンで出てくるゴールド以上のゴーレムは、コアを撃ち抜いてもそれだけでは死なないんだよね。コアなのに何で! って思うけど、弱点であって即死するにはダメージが足りないってことらしい。

 ここで出てきているゴーレムは、強くてもアイアンなのでコアを壊せば致命傷ということだ。

 それにしても、弓とクロスボウの威力が凶悪だ。アイアンゴーレムの身体すら、簡単に貫通して2体目に刺さってたしな……弓を使っているウルだが、風魔法でアシストして、矢の軌道を曲げたりしていた。そこまで魔法に秀でているのかと、若干戦慄してしまった。

 途中でゴブリンやオークも出てきたが、それらは暗殺スライム部隊が排除していた。暗殺って言ってるけど、雰囲気なので気にしてはいけない。

 ダンジョンでもゴブリンやオークが出てくると報告を受けているので、その時は娘たちが倒すことになるだろうが……大丈夫だろうか? 見た目の問題ね。

 1キロメートルほどを1時間で進むことができた。戦闘をこなし警戒しながらの1時間だ。森の中ということもあり、明らかに子どもの進むペースではないけどね……

「3人とも集合。ニコ、周りの警戒を任せていい?」

 ウルがニコに、警戒をお願いしている……お前、いつの間に移動したんだ?

「中の情報は何もないから、まず入り口周辺を偵察するよ。あ、その前に確認があった。ミリーお母さん、自分たちで攻略した場所は、マップ先生を使ってもいいの?」

「もちろん、いいよ。でも、今回は学習のためだから、ニコたちを先行させてダンジョン内を丸裸にするのは無しだよ。できる限り自分たちの力でやってほしいな。マップ先生が使えるだけでも、他の冒険者たちよりは優遇されていることを、忘れちゃいけないよ」

 ミリーが、ウルにそう説明する。その後に俺に近付き、ウルたちとは別に危険がないか、ウィスプを飛ばすようにお願いされた。もとよりそのつもりなので、問題はない。俺が許可しなければ、娘たちの所には俺が調べた情報は表示されないので、娘たちは自分たちで探索する必要がある。

「マップ先生が使えるなら、迷うことは無いね。罠や敵に注意して進むだけで済むから、3人は特に不意打ちに警戒してね。じゃぁ、明かりを準備してダンジョンへ入るよ」

 ウルの指示で、明かりになる物を準備して、ダンジョンの中へ進んでいく。

 このダンジョンは、比較的暗いと報告を受けているが、娘たちには一切情報を与えていないらしく、自分たちで考えるように、ミリーから言われているのだとか。

 ウルたちが準備していた光は、前衛の3人が魔導ライト……LEDのライトのように、強い光を出せてピンポイントに照らせる魔道具で、ウルは光魔法で前衛の頭上の天井付近に光を出していた。それだけだと、自分の足元がよく見えなくなるので、背負っているリュックの下部に足元を照らす魔導ライトがあった。

 ここら辺は、ミリーたちが教えたのかな? 俺たちは全部魔法で済ませていたけど、ウルたちはきちんと道具も使っているんだな。ゴーストタウンで市販されている魔道具だったはず。

 ウルが魔法でミーシャたちの頭上に光を出したのか、疑問に思っていたが、進んでいくうちに理解した。ウルの位置で後ろから光で照らされると、ミーシャたちを見にくくなるからなんだな。罠はしっかりと解除するようだ。

 解除ができない物は少し距離をとって、発動させて罠の評価をしている。

 特徴的なのは、部屋にいる魔物の倒し方だろうか? ダンジョンなのに、前衛のミーシャたちの武器がクロスボウなのだ。しかも大盾装備で、大盾にクロスボウをちょうど打てるように穴があけられているのだ。

 ウルが範囲魔法を部屋に向かって撃ち込み、通路で3人が大盾を構え壁を作り、集まってきた魔物をクロスボウで撃ち抜く……これでいいのか? って思えるような戦い方だ。

 クロスボウには、きちんとアタッチメントとして魔導ライトが取り付けられるようになっているし、何かねモヤモヤする感じの戦い方だった。

 でもこの戦い方は、ミリーが教えたのではなく、ウルたちが4人で考えた作戦なんだってさ。普通クロスボウって言うと、弦を引くのが大変なのだが、綾乃の作ったクロスボウは、魔核によって自動でボルトをセットできるのだ……大盾を構えたまま攻撃できるのは、そう言う理由だ。

 危なげなく1階の半分ほど進んだところで、また作戦会議が始まった。

「この戦法は後方に敵がいなければ、十分に使えるね。次の戦法を試すから、装備を変えよう」

 おや、他にも考えている戦い方があるようだな。ウルは変わらず杖のままだけど、前衛の3人は、バックラーを装備して、利き手に剣や斧、鈍器を装備している。ミーシャが剣、スミレが片手斧、ブルムがソードメイスかな……?

 魔導ライトはミーシャ以外しまい、スミレとブルムは索敵に力を入れ、ミーシャは罠に力を入れている感じだな。

 装備を変えてから、初戦闘。

 部屋の中には、ゴブリンが12匹と多めにいた。ウルは、散弾銃のように広がるロックバレットを放ち、近寄ってきているゴブリンを牽制する。ウルの魔法に合わせて、ミーシャたちが部屋に飛び込んでいく。

 守りを優先して立ち回っている印象だ。3人で密集してターゲットを引き付けながら、手の届く範囲を攻撃してダメージを稼いでいる。ウルは、魔法で的確に1匹ずつ仕留めているな。

 この程度の魔物なら、この作戦でも問題ないけど、ウルの魔法1発で死ななくなったら、ウルが攻撃にさらされるし、他から魔物が来たら孤立してしまうんじゃないか?

 問題なく倒せたが、

「全員が盾だと、上手くバランスが取れないね。ウー姉にばっか負担がかかっちゃうよ? 3人の中で一番力があるミーちゃんが、シュリお母さんみたいにタンクがやっぱりいいかな?」

「私もそう思う。ミーちゃんには前に出てもらわないといけないけど、その左右で私たちがサポートして、すぐ後ろからウー姉の魔法援護の方が良い気がする」

「大丈夫! 私がみんなを守る!」

 どうやら、さっきの戦法は1回で終了のようだ。俺の言った弱点に、気付いたのかは分からないが、戦い難かったようだ。

 陣形で言うと、ダイアモンドと呼ばれる四角形の隊列を採用するみたいだ。

 4人なら、一番バランスがいいかもしれないけど、それは敵の数によるんだよな。そこらへんは臨機応変にできるようになると、いいかもしれない。初めてのダンジョンアタックなのだから、色々試すのは良い事だろう。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...