ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,967 / 2,518

第1967話 気にし過ぎていた

しおりを挟む
 助けることは決まったが、どうやって助けるかは……助けてから決めると言った感じだ。

 どうせ一度は捕らえるので、バザールに魔法版フラッシュバンスタングレネードを、先制攻撃で使ってもらう。

 相手は何かすると思ったのだが、何をするか迄は分からず防御態勢をとることしかできていない。それでは、音と光の濁流は防げないぞ。俺たちの周りには、バザールが張ってくれた結界があるので、影響はない。こんなところで自爆するバカはいないよな。

 バザールだけなら、光も音も効かないのだが、俺たちは生身なので守ってもらっている。

 予想できた人間はいなかった。この場に残った8人+3人は、大音量と光の洪水で気絶するまではいかないが、まともに立っていることができない位には、三半規管や視力に影響が残っている。

 俺は実際にくらったことが無いので分からないが、ライガの話では、数分間は目が見えず耳も聞こえなくなり、頭の中がグラグラする感覚に陥るそうだ。魔法がすごいのか、それに耐えられるライガがすごいのか……明らかに後者だな。

 くらった理由は、護衛対象がいる時に不意に使われた場合の対処を考えるために、自ら志願して何度も魔法の的になったそうだ。肉体の構造はライガも普通の人も同じなので、体に直接ダメージを与える攻撃ではなく、光や音といった絡め技は同じように効果がある。

 効果があるのに、目が見えなくて音が聞こえなくて頭がグラグラするのに、ライガは動くことが可能らしい。肉体の性能が、俺とは違う意味で段違いなのかもしれない。平衡感覚を失っても、まっすぐに立てるという矛盾が成立しているからな……

 あ。目が見えなくても戦闘がある程度できるのは、俺や妻たちも一緒だからな。それでも、目をやられて耳も潰され、平衡感覚を失っている状態でも戦えるかと言えば……ノーである。ライガと同じ呪いのシュリならワンチャン動けるかもしれないが、俺が試させるわけがない!

 そんなことを考えている間に、命令を出していたリーダーを含む8人のグループの方は、バザールがきっちりと命を刈り取っている。あいつの骨は、アダマンコーティングを施してあるので、骨の手で突かれれば簡単に貫通する。

 3人の女性は、綾乃謹製の薬で眠らせておく。入り口に向かったのは、予想通り魔法の使える勇者だった。そこに時間操作系の神授のスキルを持っているやつも同行しているそうだ。今のような状況なら、一番の戦力の近くに補給の要を置いておくのは、戦略的に正しい判断だと思う。

 魔法の使える勇者の干渉が予想以上に強いらしく、もうすぐしたらエルダーリッチ3体分の魔法の壁を突破しそうだとの事……このまま失うのもバカらしいので、撤退させるように指示を出す。

 エルダーリッチが撤退してから30秒も経たないうちに、入り口を塞いでいた蓋は外されてしまった。

 対処が終わった一行は、洞窟の奥へと移動を開始した。中にいる仲間を呼びに行くのだろう。戻ってくる通路も塞いであるので、すぐにここへ来ることは出来ないだろうが、出迎える準備はできる。

 バザールは入り口近くに体を埋めて待機してもらう。呼吸が必要ないバザールならではの隠れ方だ。隠れているというか化石みたいに埋まっているので、索敵スキルでも見つけることが困難な位隠密性が高い。空洞もなく骨をすべて埋められるので、石の中に異物がなんかあるな……程度の事しか分からない。

 それも、石の種類が違えば同じような反応があるので、いることを前提に探さなければ、まず見つけられない隠形の技だ。

 自分たちのテリトリート考えてか、何も考えずに俺たちのいる部屋へ入ってきた。正直、この行動を見た俺たち3人は、バカの集団か? と悩むくらいにはバカな行動をとっているな……と頭をよぎる。下準備で色々したし考えてきたが、無駄だったのではないか? と考えてしまう自分がいる。

 俺たちの方向を見て何やら怒鳴り始めたが、全員で一緒に怒鳴る聴き難にくい怒鳴り声が更に聴き難くなった。

 そんな怒鳴り声をあげている後ろでバザールは、バレないように敵の入ってきた入り口を塞いでいる。

 完全に塞ぎ終わった後で、唐突に後ろから声をかけると、全員が振り返る。それを狙ったかの如く、魔法版フラッシュバンスタングレネードをお見舞いする。

 全員、あっけないほど簡単に引っかかり、その場にうずくまる。魔法の使える勇者がいるグループと戦闘になった場合は、後先考えずに殺すことになっていたので、間髪入れずにバザールが止めを刺す。

 今回バザールが止めを刺しているのは、外では俺たちの方が殺す可能性が高いので、殺せるタイミングがあれば殺すように指示しておいたからだ。

 バザールが一歩先に出るが、今日の探索が終わるころには、多少数が縮まっているだろうという考えだ。帰る前に調整すればいいだけだから、こだわる必要もないのだが、いざという時のためにバザールの数を冷やしている。

 全員を処理し終わったが、3人の女性をどうするか頭を悩ませる。

「某が、不完全ではござるが、記憶封印もしくは記憶消去の闇魔法を使うでござるよ」

 完璧に使いこなせるのはツィード君だけなのだが、闇に属するノーライフキングのバザールは、不完全だが記憶操作の魔法を使うことができるようになっているらしい。

 俺たちが知らなかったのは、近くにツィード君がいるので、教える意味もなかったため黙っていたのだとか。ウルに使うには成功率が怪しいので、黙っていたようだ。

 記憶封印なら9割ほど成功して、記憶消去の場合は7割ほどの成功率らしい。ウルに使うには、低すぎる。せめて小数点第4までは9が並ばないと使わせられないな。

 この女性たちは、本来なら助ける必要もないのだが、助けるからにはその時点での最高を目指すとなれば、記憶操作の魔法を使っても問題ない確率だろう。3人の内2人は助かる計算だからな。

 無責任にも思えるが、俺たちができることなんてこんなもんだろう。

 それに、こいつらがどこからきているかが重要だ。もし地球なら、そのまま殺せばいいだけなのだが、神の遊戯盤からきているなら、可能な限り送り返してやろう。そう言う形で話がまとまった。

 バザールが骨ボディーから生身に見えるように変身した。その際に何故か、漫画に出てきそうな有能な執事風の老人に姿を変えていた。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...