ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,970 / 2,518

第1970話 意外な事実

しおりを挟む
 俺の声で止まれなかったライガは、攻撃を仕掛けないために、強引に拳の軌道を逸らして地面をたたく。

 爆発するようにはじけた地面に尻餅をつく2人。そして、痩せて少し小汚くなってはいるが、見覚えのある顔が2つ、そこにあった。

「もしかして、シンジとユウキか?」

「……死んだかと思った……」

 そう漏らしたのは、シンジだろうか? 2人ともがくがくと首を縦に振っている。

「俺たちの関係者であれば、こいつらが来てもおかしくはないか? 初めの時と、男神たちをネタにBL本を書かせたときにしかあってないんだけどな……」

「それが原因でござらんか? シュウ殿への恨みというよりは、こいつらの書いたその本の報復でここに送り込まれたのではござらんか?」

 なるほど! 言われてみたら、ネタにされた本人? 本神は、冷静でいられなかったってことか。一緒に送れば、個人的な話というよりは、俺への嫌がらせの一部と誤認させられる……みたいな感じかね。

 薄汚れていたシンジとユウキを拠点へ連れ帰り、始めに風呂へ突っ込んだ。

 2人が風呂に入っている間に、俺たち3人は考えをめぐらす。風呂に入る前に俺たちと同じくらいに来たのか、後発できたのか聞いておくべきだったな。前者と後者では大きく変わってくる。

 前者なら、今まで俺たちと遭遇しなかった理由が気になる。俺とライガ、バザールは、バトルフィールドになっているであろう、この森をかなり探索しているのに、今まで出会わなかったのが不思議なのだ。後者なら、俺たちがいなくなった後のディストピアやゴーストタウンの様子が聞ける。

 もうすぐに帰れるとはいえ、家が気になっていたのでどうなっているか知りたかったのだ。

 質問する順番や内容をまとめるだけの話し合いで終わった。

 ほどなくして、2人がお風呂から上がってきた。さっきまでは少し異臭がしていたが、綾乃が素材作成と錬金術で作ってくれたボディソープとシャンプーを使い、さっぱりした状態で良い匂いを漂わせて出てきた。

 さて、最初の質問だ。

「2人とも、いつこっちに来たんだ?」

「えっと、4日前だと思います」

 4日前……俺たちより大分遅く来たんだな。となれば、いなくなった後の話が聞けるな。

「っと、話を聞く前に何が食いたい? ライガが大体の物を生み出すことができるけど、何が食べたい?」

 そう聞くと、丼物が食べたいと声を揃えていったので、バザールが親子丼、牛丼、かつ丼、天丼を生み出した。シンジは牛丼に、ユウキはかつ丼に手を伸ばした。

 残った天丼は俺が食べようかと思ったが、続いてシンジが天丼に、ユウキが親子丼に手を伸ばした。

 相当腹が減ってたんだな。2食分食べるつもりのようだ。4日間まともに食べていないとなれば、結構限界に近いはずだよな。むしろ、これだけ動けていることの方がすごいかもな。

 水分は取れていたようなので、脱水症状は起こしていなかったが、4日間何も食べていなかったため、痩せたというより……やつれていた。

 一気に食いすぎると胃がビックリすることがあるけど大丈夫か?

 目の前で2食分の丼物が、2人の胃の中に吸い込まれていく。泣いている2人が若干怖いが、何で泣いているんだ? 4日ぶりの食事で泣く……こともあるか。

 だけど、こいつらが泣いていた理由は、懐かしいコンビニの丼物を食べたからだった。こいつらが地球にいたときに、よく食べていたみたいだ。空腹のときにその懐かしい味を食べて、涙が流れてしまったようだ。

 弁当じゃなくて、丼物をコンビニで買ってたんだな。コンビニでも丼物は売っているけど、個人的な意見を言えば丼物は、ファーストフードのチェーン店でテイクアウトするのが一般的だと思ってた。

「うし、落ち着いたところで、話を聞かせてくれ。俺たちはここにきて2週間くらいは経っているんだけど、俺たちがいなくなってから、ディストピアやゴーストタウンはどうなった?」

「「えっ!? 3人はここにきて、そんなに時間が経ってるんですか?」」

 2人がシンクロして、驚いた声をあげた。

「自分たちには情報はほとんど来てませんでしたが、大きな騒ぎにはなっていなかったですよ。自分たちがここに来る前にいなくなっていたことは聞きましたが、皆さん落ち着いていました。なので、てっきりもっと短い期間だと思っていました」

「あっ! 俺、いなくなったのが3日前だって言ってたの聞いた。3日でも、奥さんたちが大騒ぎすると思っていましたが、予想以上に落ち着いてたな。いなくなったと言っても、大事ではないと思ってたんですよ」

 妻たちが落ち着いている……理由として考えられるのは、俺たちの状況を理解しており戻ってこられると確信しているからだろうか?

 街の方は元々俺がいなくても何とかなるんだから、たかだか2週間……あれ? 俺たちが来てから2週間が経ってるのに、こいつらが来る前に3日前にいなくなったって話だっけ? こっちに来て4日目、合わせても1週間……

「時間の流れがおかしい……」

「そう言われれば、計算が合わないでござる」

 シンジとユウキは、良く分かっていないようだが、それは事情を知らされていなかったため、教えられた日数が違っていたとか考えているのかもしれない。

「お前たちがここに来る前に、俺の子どもたちにあったか?」

「えっと、奥様たちから男神たちのアレな本をまた書いてほしいと、お願いされたときに家に入らせてもらいましたが……そういえば、ミーシャちゃんたちの元気がありませんでしたね。下のお子様たちも、いつもの様に追いかけっこをせずに、大人しくしてましたね」

 そっか、シンラたちって、俺がいない所でも追いかけっこしてるんだな。ミーシャたちに元気がなかったのは、ウルがこっちに来て急に離れ離れになったからだろうな。最近は、勉強をするときに離れることはあるが、それでも一緒にいる時間の方が長いからな。急にいなくなれば、元気も無くなるか。

 それなのに母親の妻たちが落ち着いているってことは、やっぱり何か落ち着いていられる理由があるんだろう。何かは分からないが、落ち着いているのは助かるな。

 いくつか質問したが、ほとんど情報は得られなかった。俺たちと同じように問答無用で連れてこられたので、大した情報はもっていなかった。

 何度かこの世界でも人に遭遇して戦闘になったが、全部撃退したようだ。でも、殺してはいないようで、縛って放置したのだとか。それはそれで死にそうだけどね。

 ここに近付いて来たのは、バザールの魔力の匂いを見つけてここに来たらしい。魔力の匂い? ユウキの方の神授のスキルが、魔力感知(臭覚)みたいなスキルなのだとか。それで、俺たちの近くに来たということらしい。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...