ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1976話 やっぱり無理なようだ

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 苦しくて目が覚めた。寝る前と同じで、両腕やお腹の上に娘たちの重さを感じるが、1つだけ寝る前と違う重さがあった。俺の視界と鼻と口を塞ぎ、子どもの独特なにおいを感じるこいつだ。

 普段なら手を使って引っぺがすのだが、両腕は娘たちにホールドされているため使えない。このままでも呼吸は出来る。こいつも今さっき俺の顔に張り付いたわけではないだろう。俺が目が覚めるまで、呼吸していたわけだから死ぬことは無いはずだ。

 問題なのは起きてしまったので、多少の苦しさは感じるようになってしまったということだ。となれば、シンラに自ら起きてもらうしかない。

 顔の表情筋をめいいっぱい動かし、唇を尖らせてみたり動かしてみたり、顔をさゆうに軽く振ってみたりすると、シンラからのリアクションが帰ってきた。

 笑ったりむずがゆがったりするかと思ったら、いきなりおならをしやがったのだ。顔に腹ばいになって張り付いているから、俺には影響ないはずだったのだが、パンツタイプのオムツのせいなのか分からないが、俺の顔とシンラのお腹の間に匂いが充満したのだ。

 さすがに不意を衝かれた上に臭かったため、嘔吐く形になってしまった。

 それで気付いてくれた近くで寝ていたクシュリナが、シンラを俺の顔から引き剥がしてくれた。手をかけられた瞬間に目を覚ましたシンラは、離れまいと必死に顔にしがみついたため、息を吸うことが出来なくてかなりヤバかった。

 こいつ、俺を亡き者にして、領主の座が欲しいのか? それなら、俺を殺さなくても譲ってやるぞ。

「バカなこと考えてないで、起きたらどうなの?」

 頭の上方向から聞こえるこの声は、カエデだな。そして、バカなことと言われたが、俺の考えていることが筒抜けのようだな。

「バカなことじゃないぞ、息子が俺の事を亡き者にして領主になりたがっているみたいだから、少し早いと思うが譲ってやろうかと思ってな。こいつなら、意味が分からなくても、適当に指示だしそうだろ?」

「シンちゃんなら、合っていても合っていなくても、何とかなりそうな雰囲気は確かにあるわね。だけどね、物事をしっかりと考えられない子どもに、引き継がせようとするとか……バカなの?」

「だってさ、俺がいなくてもディストピアは回るじゃん? 俺がいることでなんとかなっているみたいだけど、引き継いだのが俺の子どもだったら、みんなが協力してくれるだろ?」

「……それは、考えが甘いわね。そもそも、グリエルとガリアが許さないに決まってるわよ。シュウが引退するなら、自分たちも引退するとか言い出すと思うわよ。それか、無視していつも通りの業務をするように言われるでしょうね」

 ……カエデに言われたことを考えてみる。グリエルとガリアなら、問答無用で俺の意見を却下するな。俺がいなくてもいいじゃん、とか言ったときの形相とか、ヤバいからな……

「子どもたちが自分たちでやりたいって言わない限りは、強制しないって話でしょ。ウルちゃんは、あなたの役に立ったり、シンちゃんの補佐ができるようになりたいって、自分から勉強しているけど……スミレたちは、冒険者になる! とか言ってるから、望み薄ね」

 ミーシャ、スミレ、ブルムの3人は、一緒に冒険者になりたいようなので、3人でまとまって行動するようなのだが、外に行ってしまうと考えると……寂しいものがあるな。

「シンラは、きっと俺の後を継いでくれる!」

「その自信がどこから来るか分からないけど、未来の事なんて分からないんだから、さっさと起きるわよ。ほら、スミレ、起きなさい」

 俺の腹の上に張り付いているスミレを抱きかかえたカエデは、俺たちのやり取りを笑っていたキリエとシャルロットに、ミーシャとブルムを抱きかかえるようにお願いしていた。

 おや? 1日経ったからか、すんなりと俺から離れてくれたな。昨日一緒にいた甲斐があったというものだな。

 朝食の準備が終わっているとのことで、ブラウニーが呼びにきたので、みんなで向かうことになる。

 しっかりと目が覚めたミーシャたち3人は、食堂に着くと目がしっかりと覚めたのか、周りをキョロキョロして俺を見つけると、スタスタスタと音がするような歩き方で俺の近くの席を確保した。昨日みたいに抱き着いたままという訳ではなく、近くでも問題ないようだ。

 食事も終わりリビングのソファーでのんびりしていると、ミーシャたちがきて俺の左右と膝の上を占拠した。グリエルたちに報告に行こうと思っていたが、3人が離れてくれないので今日はどこにもいけなさそうだな。

 寝起きの様子を見ていけるかなって思っていたが、そうでもなかったな。

 よく離れている期間はあったが、突然いなくなるのとは違うんだな。3人の頭を撫でながら、どうしようか悩んでいると、

「3人とも寝ちゃったみたいだね。ウルちゃんが帰ってきて、少し落ち着いたかと思ったけど、やっぱりそうでもなかったんだね」

 子どもたちの気持ちは、大人の俺たちには分からないな。妻たちも危なかったと言えば危なかったからな。とも思ったが、いつもなら仕事に行く時間なのだが、今日は誰も仕事にいく気配がないな。子どもたちと同じで、離れたくないのかね?

 今日はどうするかね?

 みんなで楽しめることでもするか。シルキーを呼んで、耳打ちをする。昼食に向けて、ある準備を頼んだのだ。娘たちは起きる様子が無いので、のんびりしていると足に衝撃を受ける。

 シンラが俺の足を殴ったり蹴ったりしてきている。

 お前、いつからそんなことできるようになったんだ? 頭突きとかはされた記憶はあるけど、殴ったり蹴ったりは出来なかったと思うんだけどな。

 足でシンラを捕まえて倒してから、お腹や脇の下をくすぐってやると、じたばたし始めた。その声を聴いたプラムとシオンがどこからか現れ、俺の足をホールドして噛みつき始めた。やめれ!
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